57話
従業員にインフルが二人出たので更新が停滞しております……。
レイの容赦無い配分のお陰で、予定通り三時間で目的地に辿り着いた魔王並びに召喚者組一行。
呼吸も一苦労な召喚者組は、レイの容赦のよの字すらない慈悲の欠片もない敢行に当然文句の声が上がった。
「おま、レイ、マジで鬼だな……っ」
「お前に優しさってもんはないのか‼」
「……文句言いつつも登りきったよね、皆」
「「「お陰様でなっ‼」」」
補足だが、文句を言っているのは男子だけである。女子は疲労を感じる前にレイとリティスが交互に無言で片っ端から微量の回復魔法と疲労軽減魔法を掛けていたので、疲れ知らずであった。熟練の術者である二人が行使していたこともあって、女子たちは始終後押しされていたことに気が付いていない。つくづく男女で優しさを区分している教師役である。
そして、スパルタは更に続く。
「梨香たちが俺たちに遅れずに、文句一つ言わずに着いてきてるのに、恥ずかしくないの」
「「「うぐぅ……っ」」」
じとーーー。
そんな表現が似合う眼差しでの静かな叱責に男子たちは口篭った。
一方、女子たちは休憩前とは違い、然程疲れていない自分に驚き、漸くレイの魔法行使があったことに漸く気が付く。ひそひそと内緒話をしだした。
「ねえ、これって……」
「う、うん……多分、回復魔法とか、そういうのだと、思うけど……」
「やっぱ、レイくんってフェミニストだよねー」
「「「言えてるー」」」
極端過ぎるにも程があるが。
その感想は恐ろしく空気の読め、後のことを考えられる女子たちの胸中に留められた。無駄な争いは避けるに限る。尤も、言い争いにせよ暴力にせよ、レイの圧勝で終わりそうだが。
* * *
白い花が一面に咲き誇る光景は、絶景や圧巻、壮観の一言に尽きた。
「わぁ……きれい」
思わず、といった体で溢れた一言は、おそらく初見となる面々全員が抱いた感想だっただろう。
花弁に、茎と葉までもが汚れの無い青白くさえ見える白一色。おしべと雌しべは白銀色に淡く輝いていて、それが聞いていた発光している正体のようである。
雪月花が生み出す銀世界に、感嘆の溜め息が漏れた。
しかし仕事に来た大人組、基アイヴィスとディア、騎士団、そして勿論レイもすぐに問題点がないか検分に移る。
「……特に、何も無い……?」
あるのは真白の花のみ。原因となっているものが見当たらなかった。
「ただの異常開花……?」
リティスの呟きに、違うよ、とレイの声が返す。
「何て言うか、促進とかだと思うけど、微かに魔法が使われた形跡と魔力残滓があるよ」
ここ、と指差された場所には殆ど消されてはいたが、確かに鉱物を媒介にした魔方陣が手書きで描かれていて、誰かが魔法を使った証拠として残されていた。何者かがここで、雪月花の開花を早めたのだ。
「誰がこんなことを……」
目的の分からない犯人の行動に頭を悩ませていると、風に乗って何かが聞こえてくる。
~~♪
「……歌…………?」
か細い、しかししっかりと音程を刻むそれに、全員が視線を向けた。
そこに佇んでいたのは、金の髪の美しい女。
その顔に、レイは目を見開いて茫然と呟いた。
「アイヴィスと……似てる?」
彼女は、性別と髪色以外、レイの大切な義兄に、瓜二つだった。
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