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39話

五大精霊……火、水、風、地、木を司る上位精霊を差し、その力は精霊王に及ばずとも災禍級に匹敵する。

精霊王の守護を役目とし、世界神樹から離れられない王の代わりに他の精霊たちを統括する役目を担うーーの、はずなのだが。


「……………………」

「ウフフ、ウフフ、ウフフフ」

「やっばい、めっさ怖い」

「うーん、どう止めるか」


方や真顔で睨み付け、方や輝かんばかりの笑顔で微笑む二人。

アルカナは精霊王の役目を放棄する姉を連れ戻すことが目的のようで、客観的にみると、非があるのはリティスのように思える。

しかし、だ。


「森が焼かれたとき、五大精霊たちは何してたのさ」

「うっ⁉」


ボソッとレイが怒気も露に呟いた。

それにアルカナはびくりと反応する。


「中位、下位精霊の避難誘導をしてたって五人? 五体?全員でやることじゃないだろうし、そもそも精霊王の守護が役目なら誰かしら残っておくべきだろう。……先に職務怠慢をしたのはそっちじゃん」

「レイ……」

「うぅ……」



レイが自分のために怒ってくれていることに感極まったリティスがぎゅっと彼を抱き締め、アルカナは図星を指され口重くなる。


「で、でも」

「それに、リズ姉の性格上、役目を放棄するとは考えにくいよね。アイヴィス」

「うん? ああ……、そうだな。リティス……リリカナは記憶が戻って直ぐ、騎士団の上位者との契約を推奨、彼らが持つ飾り石への憑依を実行させたな。これは、神体に何かあっても借宿である飾り石が無事なら後に別の器に移し変えられるようにとの事前対策だな」

「次、ディア」

「ふむ。定期的にこれ以外の五大精霊が集まって近況説明会議を開いておるの。中位、下位精霊たちも困ったら頼ってくるように窓口も出来ておる。神樹がない以上、新しい命が生まれることはないが、精霊の導き手としての役割は果たしておるのではないかの」

「ん。……だそうだけど?」

「ううう……っ」


アイヴィスとディアによってリティスがどれだけ尽力しているのか説明を求めたレイによって窮地に立たされるアルカナ。

レイは更に追い討ちをかける。


「それにさ、見た感じあんたは自由に動けるんだろう? 何で他の上位精霊みたいに会いに行かないのさ。それこそ怠慢だと思うんだけど? それとも神樹を失った精霊王にはその価値がないとでも言う気?」

「う」

「にしては、職務放棄とか抜かしてるし。単なるやっかみか、これ?」

「あう」

「取り敢えずさ」


レイは口を挟む隙すら与えずにっこりと微笑み。


「自分の勝手な都合と見解でリズ姉貶めるの止めてくれる。不愉快」


アルカナはついに膝をついた。レイの圧倒的勝利である。

リティスはレイの頭を撫でて礼を言った。


「レイ、ありがとうございます。私のために言ってくれて」

「ん。俺が嫌だっただけだから。本当はアイヴィスに任せるべきだったんだろうけど」


ちらりと視線を向けたが、アイヴィスは苦笑混じりに首を振るだけだった。


「いや、言ってくれて助かったよ。俺では火に油だったろうしな」

「そう? ならよかった」

「うむ。見事な毒舌っぷりじゃったの」

「「「誉め言葉じゃない……」」」

「む。そうか?」


やっぱり突然漫才を始める疑似親子たちにちょっと和んだ一同と、放置されたアルカナ。不憫さが際立った。


「うぅ……、に、人族の癖に、生意気ですわ‼ これでも食らいなさい‼ 魔水連刃‼」


和やかに話す面々にアルカナの怒りが爆発し、水の刃を放つ。

だが、相手が悪かった。


「あ」

「馬鹿ですね」


レイのちゃんとした実力を知らないクラスメイトたちは兎も角、アイヴィスたちはアルカナの愚行に合掌した。


「『反鏡結界』」


水魔法で作った強固克つ、柔軟性のある結界が受けた攻撃を自動で跳ね返す、魔力の浪費を押さえるために作ったレイのオリジナル魔法である。

反鏡結界は期待を裏切らず、アルカナの放った魔法を跳ね返した。ーー威力を倍にして。


「ギャーー⁉」

「あ、やり過ぎた」


轟いた悲鳴と、レイの間の抜けた反省の言葉に、淳が一言。


「ホント、シリアスブレイカーな」

「「「それな」」」


クラスメイト、騎士団一同の意見が一致した。

ブクマ、評価、ありがとうございます‼

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