29話
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母親が一時はまったことで手伝わされた経験から教師に抜擢された、淳による醤油と味噌作り教室は問題なく終了した。……戻した大豆を見て、レイがぼそりと「豆腐……」と呟いたことから作る作らないの白熱した物議を引き起こしたが、過ぎた話である。そもそも苦汁がないので。
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場所は変わって会議室。
村襲撃の被害状況が纏まったため、その報告とレイたちが加わることでの今後の動き。戦力の育成などが議題である。ーーが。
上座は当然、城主である魔王 アイヴィス。その斜め後ろに待機するのは護衛のリティス。アイヴィスの左隣にディアが座り、その前の一列を文官、武官の重鎮が並んでいる。その向かいを、今回召喚された面々が居心地悪そうに座っているのだが、一名だけ、そこに座ることなく別の場所に誘導された。
ーーアイヴィスの右隣に。
レイは憮然とした表情を隠さずに一言。
「解せぬ」
「「「解せよ」」」
レイはクラスメイトたちから一斉に一刀両断され、拗ねてぷぅっと頬を膨らませ、椅子の上に三角座りになる。その時ちゃんと靴を脱いだのは、オカンポジ、淳の教育の賜物である。
「さて、不満があるものが約一名いるが、会議を始めよう」
笑いを堪えきれずに口元を手で隠しながらアイヴィスが進行を促した。
リティスがそれに応える。
「今回襲われたのは、人族の領地に隣接するナーレの村です。村人百三名内、死者が五十一名、負傷者は三十六名ーー此方は全員、レイの魔法によって治療済みですので、現在は完治しております。行方不明者は確認しておりません。
襲撃者は黒幕が一名、実行犯である死人が六名。いずれも何らかの事情で死亡した魔族であると判明しました。
今回は襲撃者が全員捕縛、または機能停止となりましたので金品の被害こそありませんでしたが、此方については今までの村襲撃と同じであると判断し、やはり金品が目的ではないと断言していいかと思われます」
「わかった。引き続き、調査を進めろ」
「御意」
「レイ、補足はあるか?」
隣でゆったり茶器に手を伸ばしていたレイに尋ねる。
レイはことりと首を傾げて、うん、と一つ頷いた。
「今回の聖魔合成魔法ーー勝手に名前つけちゃったけど。あれは説明した通り呪詛を聖属性魔法で、覆う形で使用する魔法。六体の死人を同時に、別の動きをさせることは並大抵の術者ではないから、国の中でもそれなりの地位についているんだと思う。例えば聖騎士団とか、国王お抱えの魔法師集団『夜烏』とか」
「夜烏とは聞いたことがないの」
「云わば暗殺集団だから。国内でも知っているのは極一握りだよ」
レイにその存在を教えてくれたのは聖騎士団長だ。
ぽんぽん機密情報を教えてよかったのだろうかと、今更ながらも心配になる。尤も、迂闊にぼろを出すようなら騎士団長なんて役職にはつけていないのだろうから、余計な世話なのだろうが。
「暗殺集団を日中堂々と出すとは思わんが」
「そうさな。では騎士団か」
文官たちがひそひそと小声で交わしていた会話を拾ったレイは、違うと思う、と否定した。
「レイ? 違うとは?」
レイの空になったカップに紅茶を注ぎ足していたリティスが手を止める。
問われ、うん、と頷いたレイはスプーンを持ってひらりと空中で円を描いた。
「あの術者は、刀ーーえーっと、剣を向けた俺に対して魔法で応対した。そもそも帯刀すらしていなかった。騎士団の人間なら帯刀ぐらいはするだろうし、魔法だけで戦うってことはしないと思う」
紅茶にミルクを入れ、くるりと一混ぜする。
「それにあいつ、俺の顔を知らなかった。俺は騎士団員に混ざって稽古をしていたから、知らないやつは騎士団じゃないと断定していいと思う。……この一年で入団したなら、話は別だけど」
「ふむ。あの年齢と力量ならば、一年とは思えんの」
つまり、その答えはーー。
「暗殺集団 夜烏の構成員で、尚且つ捨て駒にされるような地位を持たない者」
「国王が直接、この襲撃の命を出している」
顔を強張らせる魔族たち。
一方淳たちはというと。
『レイが、真面目に会議に参加している、だと⁉』
……という具合に、戦慄していた。
会議編、長くなるので分けます。




