ミスの代償
おまたせしました。
それでは、続きをお楽しみください!
ルズさんは、高らかに叫んだ。
「死神シザー、攻撃!」
今の法皇に守りとなれる壁はフェーダの攻撃が行われているため、ガラ空きだ。
つまりこの攻撃は、直接通る。
「ひっ、ひぃいぃぃぃいいぃいいい!!」
情けない悲鳴とともに、死神シザーは鎌を振り下ろす。
「ぎゃあぁぁああああああああぁぁぁぁ!!」
膨らんだ傷一つない腹に、大きく赤が色づいた。
どうやら、当たる瞬間少しあとざすりをしたのだろう、思ったよりも傷は浅いようだ。
「痛い、痛いでおじゃるっ! 死ぬでおじゃるぅ!」
しかし、それほど苦痛は変わらなかったようだ。
流石、三体の式狛の合計攻撃力6に元からある攻撃力1を足して7ダメージの威力。
下手な当たり方をすれば、簡単に命を奪えてしまうかもしれない。
「ん?」
何やら、法皇はワインとは違う瓶を取り出した。
透明で、明らかに酒ではない。
「まさか……法皇っ!」
「ど、どうしたんだよ、マスティマ」
歯をむき出しにして、怒りを露わにするマスティマ。
答えは、すぐに訪れた。
法皇がそれに口をつける飲み始めると、受けた傷がみるみるうちに治っていく。
あれは、回復薬の類か。
「ふぅ……本当に死んでしまうところだったでおじゃる」
「貴様ぁ、真剣勝負にポーションをっ!」
「そんなの知るかでおじゃる! 痛みを取るためにポーションを使って何が悪いでおじゃる!」
「ぐっ……屁理屈をっ! ならばこちらも!」
「おっと、それはならんでおじゃる!」
「なんだと!?」
治った腹をボリボリと掻きながら、法皇は続けた。
「自らこの街の鉄則をデュエルで勝ったら、このワスが解消してやると言っているんでおじゃるぞ? ワスの機嫌を損ねる行動をしたなら、即刻この件は全て水に流し、デュエルもこれ以上しないでおじゃる!」
めちゃくちゃだ。
だが、正論ではある。
元々の法がおかしいというのもあるが、その制度まで否定する気はない。
腐ってもこの街の主導者はあいつだから。
「くっ……」
マスティマは歯を食いしばったまま静止する。
至って冷静で助かった。
このまま暴れても、何も変わらないからな。
それに、ルズさん自身もその結果は望んじゃいない。
「ボクのターンは……これで終了です……」
「ほほう……では、ワスのターンでおじゃるな」
法皇は、悠々とダメージの処理を終えると、置き札からドローはしないことを宣言した。
その判断は当然だ。
リエルとフェーダの違いは、手札が7枚保持していなければ効果を発動できない点。
常に手札を最大枚数所持していなければ、その常在効果を発動し続けることができないのだ。
だからこそ、最終的に手札を捨てるようなプレイスタイルは全て判断ミスである。
しかし、このお互い攻撃力7の式狛が睨みを利かせているこの状況。
法皇としては、なんとしてでも死神シザーを破壊、もしくは止める手段を行使してくるに違いない。
だとすると、俺なら――――。
「風の守護者フー、召喚でおじゃる!」
まさしくドンピシャ。
場に出た時に札を1枚引けて、攻撃力がないために壁としてしか使えない。
様子見するなら俺でもそうする。
そして、そのまま何も考えないなら、
「フェーダ、もう一度攻撃でおじゃる!」
そう、そうするだろう。
なぜなら、今ルズさんの場は、シザーが攻撃をしたせいで、ガラ空きだから。
フェーダはもう一度羽ばたき、大きく強風を巻き起こす。
「ふぉーっふぉっふぉっふぉっふぉ、見るがいい、お前たちが希望を託す者が死ぬ姿を!」
俺は思う。
知らないって罪だ。
だが、知らないからこそ、あの表情ができる。
あのムカつく笑い声ができるんだ。
まるで誰かが死ぬ顔を嘲笑えることがな。
「ふぉーっふぉっふぉっふぉっふぉ……ふぉ?」
「だから俺は……」
「な、なにっ!」
「悪いことが好きだ――――」
そこに立っているのは、さっきの強風がありながら、何事もなかったようにたたずむルズさんの姿だ。
「ど、どういうことだ?」
「さっきの攻撃は通ったはずだよな?」
「なのに、攻撃を喰らったような形跡は……」
周囲がざわめくなか、法皇は叫ぶ。
「わかったでおじゃる、そこの縛られている連中でおじゃるな? お前たちがさっきの攻撃を相殺するために何かしたのでおじゃろう?」
「いいや? 俺たちは何もしてないぜ?」
本当に知らないってなると、少しだけだが、可愛くも見えてくる。
しかたがない。
だが、こういうのを上手いこと抽象的に言うのは苦手だ。
「ウィズ、ヒントを出してやれよ」
「ふふふ、わかりました!」
マスティマもそれにはニヤリと笑う。
「ヒントは継承、ですかね?」
「継承……はっ!」
どうやら気づいたようだ。
先ほど、ルズさんが軽視と言っていたが、まさにその通り。
これが継承進化の面白いところでもある。
「まさか……」
「気づかないだろうなぁ……だってフェーダの記載には」
「そんな……バカなっ」
「この式狛に継承進化は適用されないって書いてあるからな?」
継承進化っていうのは、そもそも何体かの式狛の上に置いて強力な効果を発動できるためのギミックじゃない。
元々、継承進化とは、上に置いた継承進化式狛に効果と攻撃力、耐久力の数値を上乗せするというものだ。
つまり、さっきの攻撃は祝福を受けし神父レイドの効果、『デッキが20枚以下の時、相手のターンの攻撃を一度だけ無力化する』を使い、難を逃れたということだ。
「し、しかしでおじゃる、フェーダの効果で、場にいる相手の式狛は全て効果が使えないはず……」
「死神シザーが、式狛限定で効果を受けない式狛って言ったら?」
「ぐっ……ぐぐぐぐぐぐぐぐ」
「納得、してくれるよなぁ?」
もう法皇のバトルフェイズは終了した。
あとはターン終了を宣言するしかない。
「ワスのターンは……終了でおじゃる」
よし、いける、いけるぞ。
さっきのフーを出した辺りからして、手札に除去できる手段はないと見てもいい。
しかも、法皇にとってドローはライフを減らす行為でしかない。
ドローをしようにも、ライフは減り、場に出そうとも、ただフェーダの効果が使えなくなるだけ。
八方塞がりもいいところだ。
ルズさんは、あとシザーでひたすら一方的に殴る。
どうせ気にせずとも、あの法皇はさっきのようにポーションで傷を治し続けるだけだろう。
勝ちだ。俺たちの戦略の勝ち。
俺は思わずウィズと目を合わせる。
そして、頷き合った。
継承進化は、ベースに効果を引き継がせるという合成のようなギミックになっております
その代わりに、場に並べるのが大変ですし、リスクを背負わないと中々強い式狛を場に着地は難しいですけどね
でも、ロマンがあるっていいですよね?
昔にありましたよー?
コスト10で15000の奴がいましてね?
やったー!だせたー!って思った瞬間にコスト6のあれですよ(笑)
今では笑い話ですけど、小学生だったんで、相当ショックでしたね
ロマンは大事!
だけど実用性も時には重要!
ですよね、本当に!




