エゴイスティック
少しだけ短いです(-_-;)
あとから文章を追加していくかもしれません。
それだけご了承ください。
夜。
気温が下がり、肌寒い空気のレイシスアレイズにある大鐘。
その教会、風の神シルフィーヌを信じる教徒の数は、これだけの大きさながら、わずかに20人。
しかし、街の中心であり、交易や商業は全てこの場所が管理している。
一種のこれは独占状態。
ここにいる20人が意見一致すれば、都市中にガルをばらまこうが、物価を高騰させようが、自由だ。
そんな他の教徒が泣こうと黙らさせられるこの場所で、踊る者が二人。
「と、いうわけで……この街で動物を飼っている人がいたよ」
「て、いうわけで……この街の禁則事項を破る奴がいたよ」
それを見つめ、むしゃむしゃと大玉の丸パンを一口で飲み込む。
修道服を着ているようだが、暴飲暴食が祟り、服に腹の肉が収まり切っていない。
そんな大食漢は、膨れた腹肉をボリボリと掻きながら言った。
「なるほど……そいつは見て見ぬふりはできないでおじゃるなぁ……」
「早く捕まえてこの街から追放しちゃってよ、法皇」
「早く捕縛して、いたぶっちゃってよ、法皇」
踊っていた二人は、その法皇と呼ばれた男の顔を立ち止まって見つめる。
暫くすると、葡萄酒が入った緑色の瓶を取り、グラスに注がず口をつけてグビグビと飲み干して見せた。
大きく曖気を出し、ゆっくりと葡萄酒瓶を置くと、言った。
「わかったでおじゃる、でも捕縛に向かうのは明日にするでおじゃるよ」
「「えぇー、なんでぇ?」」
「ワスは眠いでおじゃる、寝てからでも遅くはないでおじゃろう?」
「でも、鉄は熱いうちに打てっていう言葉があるよ?」
「でも、好機逸すべからずっていう言葉があるよ?」
「どれもこの場で言う言葉ではないでおじゃる、ワスはワスのベストなタイミング、果報は寝て待てという言葉があるんでおじゃる」
二人は、冷酷な表情で法皇を見る。
相変わらずのめんどくさがり、プライドもなければ、覚悟もない。
「じゃあ、明日は必ず捕まえてね? これ、現神様の命令だよ?」
「じゃあ、明日は確実にここに連行してね? これ、現神様のお願いだよ?」
「あーはいはい、わかったでおじゃる……ただし、条件は飲んでもらうでおじゃるよ?」
本当に、汚い生物。
本当に、下品な生物。
それぞれ二人は考える。
法皇は、彼らがロストとわかるや否や、禁則事項を破った者と同時に、その教会に泊っている二人を捕縛してくれという話を出した次に、こう提案してきた。
自分をロストに加えろ、と。
恐らく目的は現神様から与えられるロストモンスターだろうと、意思疎通ができる二人は考える。
法皇のデッキはかなり限定的な構築ではあるが、制圧力は圧倒的だ。
それにロストモンスターという汎用性の高い式狛が揃えば、現神様の地位も脅かしかねない。
本当に、とても聖職者とは思えない利己主義者だ。
自分が信じる神、シルフィーヌすら、力を手に入れる手段なら切って捨てると彼は言っている。
そんな奴がここまでブクブク太って誰にも暗殺されなかったのは、彼を守る残り19人が脅威を殺めてきたからだろうか。
でも、彼らに言われている最優先事項は、『ウィズと淳介を捕縛しろ』の一点だけ。
今はそれさえ完遂できればどうでもいいと思っていた。
そう、完遂できれば……。
完遂できてしまえば、もうこんな下種野郎に用はないのだから。
「相変わらず頭まで猿みたいな人だったね、ケル」
「相変わらず欲に忠実な猿だったね、ロズ」
「それでも強いんだからすごいよね、ケル」
「猿でも勝てるデッキ持ってるんだからすごいよね、ロズ」
「でも、失敗したらどうする? ケル」
「でも、失敗したらどうする? ロズ」
夜の大鐘の上、くるくるとまた回り踊る二人は、目を合わせるとニヤリと笑った。
「「そんなの、決まってるよね、あはははははは、あははははは、あははははは」」
今夜は満月だ。
空に雲一つない綺麗な黄土色の満月。
乾燥した風が吹く中、遠吠えが一つ。
重なり合い、輪唱するそれは、空気を震わせ、鐘の音なんて目じゃないくらい、街中に響き渡る。
一方、寝静まり、誰も聞いていないように思えたこの鳴き声を聞く者がいた。
寝静まった三人のベッドがある部屋で、窓から月に映るシルエットをじっと眺める者が、そう、一人だけ。
同じように彼女も声を上げようとしていたが、とても上げられるような状態ではなかった。
残念そうに思いながらも、彼女はただただその気高き影絵を見つめる。
そして、一粒の涙を流していた。
明らかによくある王様って感じのキャラクターですね。
でも、どんなデッキを使うんでしょう……。
それはまた次回に続きます。




