決闘とデュエル2
ふぅ……(;´・ω・)
更新しました。
いよいよ、決着です。
「どうした、ウィニーさんよぉ……信じられないって顔してるぜ」
正直、俺でもこれをやられた時には、あいつと同じ顔をするだろうな。
ダメージを受けてもすぐに捨て札を置き札として置ける上に、例えダメージだろうが、ただめくって捨てさせる効果だろうが、めくるという効果に関して発動させることができるこの食い繋ぎは、ダメージという概念を全て否定することができる。
俺はウィニーに向かって叫んだ。
「もうお前に勝ち目はない! 降参することだ!」
「……ふ、ふふ………あははは……あはははははは!!」
なんだ、急に笑い出して。
「降参? まだ勝負はついてはいないじゃないですか!」
「馬鹿だなぁ……もうどんなダメージを喰らってもこっちに勝ち目はないって言っただろ!」
「そうですかねぇ……?」
俺はウィニーの見る方へ振り向いた。
そこにはウィズがいる。さっき喰らった銃弾と剣の一撃で、ひどく負傷している。
なんか、おかしい。
俺たちは、全部封じた。こいつの戦略全てを、否定したはずなんだ。
なのに、ウィニーはこうもケロッとしていて、ウィズが息を荒げながら今にも倒れそうだ。
「私のターンは終了です……」
「なっ……」
「……っ!」
「ふふ……ふはははは……あーはははははは!!」
俺たちの作戦は、確かに完璧だった。
だが、一つ大きな誤算があった。
こんな勝つことだけに目がくらんだやつが、潔く負けを認めるわけがない。
こいつ、さっき自分で遅延とか言っておきながら、自分が追い込まれたら関係ないのか。
どこまでも腐ってやがる。
「私の……ターン……」
「お、おい! ウィズ、もう無理するな! 俺たちは勝ったんだ、もう攻撃する必要なんてない!」
「勝った? どこがですか? ねぇ、観客席の皆さん?」
誰も、何も言わない。
まずい。このままじゃウィズが、死んでしまう。
俺の立てた戦略のせいで、殺される。
「私は……0枚、の……ドローを宣言します」
「そうです、それでいいんですよ……小さき炎の魔術師ウィズ、私の置き札は残り33枚……さぁ、削り切って見せてくださいよぉ!」
「ふざけんな! お前はもう負けだって言ってるだろ!」
「黙れ! これは私とそこのクソガキとの戦いなんですよ! その両者が合意なんですから……もう文句はないでしょう?」
やめろ……。もうここから先はデュエルじゃない。
ウィニーも理解できないが、ウィズだってそうだ。
俺はお前に、もっと遊ぶ方で楽しくデュエルをしてほしくて。
涙があふれて止まらない。
また俺は、些細な事で殺すのか。まだ友達にもなっていないのに。
「淳介……」
「……!」
「――っ」
俺は、そのウィズの言葉でハッとなった。
音をかき消すほどの豪炎。コロシアムの舞台に影ができるほどの大きな火球。
これはウィズの戦略札だ。
コスト3、『炎の魔術 グランメテオ』。
この札は相手にコストと同等の3のダメージがある隕石をぶつける物。
しかし、マスターカードが小さき炎の魔術師ウィズである場合、そのダメージは2倍になる。
ウィズのみに許された専用除去札にして、一番優秀な札だ。
ウィズは自分の弱みも、強みも、全部知っている。
俺も、ポシェットからカードをバラまいたときにびっくりした。
どうせ同じようにアグロをメインとしたデッキなのだろうと思ったからだ。
だが、蓋を開けてみれば、そのデッキはコントロール。
こいつは、環境に手を染めずに敢えてコントロールタイプのデッキを握っていた。
「ぎゃぁあああああああああああああ……」
ウィニーが豪炎に包まれていく。これで残り27枚。
恐らく、あいつは一度も攻撃を喰らったことがないのだろう。
「少しはウィズの痛みが分かったか、馬鹿野郎!」
「ターン……終……了……」
なんとか持ちこたえているが、あれだけ大量の血が出ているとなると、あと何分持つだろうか。
轟々と燃えるウィニー側の炎。煙が晴れてくると、まだそこには火傷だらけのウィニーの姿があった。
呆然と、している。さすがに大きなダメージを喰らって、まともに動けない状態だろうか。
「よくもぉ……」
いや、動く。あれだけデカイものを喰らってあいつは動いている。
「よくもぉぉぉぉぉおぉぉおぉぉぉぉぉおぉぉぉ……私のタァーン!」
1枚の戦略札を掲げる。
あれはコスト3。
「増援っ!」
一体の攻撃回数を3回に増やす札。
だが、マスターカードもしくは場に種族が兵士のモンスターがいれば、その攻撃回数は4回まで行ってもよいものとする。
まずい。一撃だけでも致命傷なのにそれを4回も喰らったら。
「ぎゃぁははははははははは!」
笑いながら切りかかるウィニー。
「1つ!」
「ぐぁ……」
上段から一気に振り下ろす。
さらに横に2回。そして剣を、ウィズの先ほど撃ち抜いた脇腹に向けて構えた。
「これで、倒れろォ!」
俺はもう、見ていられなかった。
【 ☆ 】
もうだめだと、そう思いました。
このまま私は気絶するんだと、そして、淳介の立てた戦略も、全て水の泡になるんだと。
謝っても許されない。
ロックフォードのみんな。ネルばあちゃん。
でも私、頑張りましたよね。
もう……崩れちゃっても、いいですよね。
目の前に、ウィニーさんの剣が迫ります。
私はゆっくり目を閉じました。
ドスッと、音がしました。
先ほどから脇腹を打っている苦痛より痛みを感じませんでした。
(痛みも……苦しみ、も?)
その無痛は、幻ではありませんでした。
淳介が飛び込み、その勢いで狙いが逸れたのです。
「じゅ、淳介!」
「うあっ……」
「邪魔を……するなぁ!」
ウィニーさんがソードを横に振りぬく。
軽々と飛んでいく淳介は、舞台の壁に叩きつけられました。
「淳介……淳介ッ!」
私はその無残な姿に駆け寄ります。
「そんな……どうして」
「馬鹿野郎……お前のっ……そんな姿見て、助けないやつの方が……おかしいだろ」
今にも死んでしまいそうな擦れた声でした。
淳介は、苦痛に耐えている様子でこう述べていきます。
「いいか、ウィズ……この世界は環境に収まるほど狭くはない、デュエルは世界中のどこでもやっている……だけどよぉ……そんなどこでもやっている事だが、なくちゃいけないものがあるんだ……」
「も、もう喋らんでけれ! 死んじまうよぉ!」
後ろからウィニーが迫る。あと一回、攻撃が残っている。
それでも、淳介は息を小刻みにしながら続けていきました。
「それはな、『相手』だ……相手がいなくちゃ、デュエルは成り立たないんだ……しかもそれは、友達がふさわしいんだ……むしろ、友達じゃなきゃ喧嘩になることもある……今起こっている、こんな風にな…………だから……だから、よ……」
その顔は、泣いていました。
初めて見る、私に対しての涙でした。
「さようならなんて……言うな……俺たちは勝つんだ……その後に、たくさんこんな決闘じゃないほうのデュエルをしよう……だから、さようならなんて言わないでくれ……俺たちはもう……」
そこから先を、彼は言えませんでした。
そして、ふらりと後ろから剣が頭上に光ります。
「ぎゃぁぁっはぁ!」
私は背中にソードを一振り、受けました。
意識が朦朧としていきます。
あぁ、ついに死ぬんだ。そう思いました。
正直言って、私は銃弾を喰らったときから、諦めていました。
あの人は負けを認めない。それは自分の名誉のためなのです。
だから、例え淳介の作戦通りにいっても、絶対に降参なんてしないと、知っていました。
なんで高望みしちゃったんだろう。
それでも降参するんじゃないかって。
「あぁ……そっかぁ……」
私、決闘していると思ったら、いつの間にかデュエルをしてたんだ。
楽しいなぁ。淳介の見つけたこのコンボは、とっても好き。
今まではずっと置き札が少なかったから負けていたのに、あの2枚だけで、まだ私はデュエル上では死んでいない。
でもどうしよう。もう身体が動かない。
淳介、ごめんね。あっちへ行ったら、いっぱいいっぱいデュエルしよう。
その前に……私、どんな顔で会えばいいかな。
許してくれるかな、こんな私を。
――許してくれるさ、きっとね。
そうですよね、アフロディーテさま……きっと…………きっ……と……。
いかがだったでしょうか。
実を言うと、書いていてかなりつらかったです(´;ω;`)
一応、ここで一旦切りたいと思います。
次の更新までの期間は長めになると思いますのでご了承ください。