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決闘とデュエル

どうもー(;´・ω・)

更新遅くなりましたね

かなり展開に悩みました


【        ☆        】


「あいつか……」


 コロシアムの観戦席で、一人の男が佇む。

 彼の名は、控えておこう。

 敢えて称すならこの世界を知る者。

 それが彼にとって、ふさわしい名だ。


「突然封入してきたのを見ると、やはり……」


「どうします? 消しますか……」


「いいや、まだわからない……それをするのは解き放ってからだ」


 男はそう言って、座席に座る。


「ふふ……見飽きたデュエルだけど、楽しめると良いなぁ……」


【       ☆        】


 ずいぶんと人が集まるものだ。

 俺は、コロシアムの観戦席を見上げながら大勢の観客に驚いていた。

 ここまで集まっているのに、歓声一つない。


(あっ……)


 よく見ると、あの街の住人が集団でいる。

 しかもこっちを睨みつけながら、だ。


「ようこそ、神聖なるコロシアムへ」


 周りを見ている間に、いつの間にか一人の男が立っていた。

 ウィズが初めて相手を睨みつける。

 俺にもすぐに察することができた。

 こいつが対戦相手か。


「はじめまして……でもありませんね、小さき炎の魔術師ウィズさん」


「近衛兵のウィニー……気安くフルネームで呼ばないでいただけますか?」


 あの記事の勝利者だ。

 なるほど、貿易権を賭けて戦う相手は鼻っからいつも一緒ってことか。

 ということはもちろん、開催しているのもあっち側。

 街があの状態だからな。そうに違いない。

 だったら、なぜあそこの住人をここに呼ぶ必要があるんだ。


「さて、始めましょうか……」


「ちょっと待ってくれ」


 俺は地べたに飛び降りると、こう言った。


「俺はまぁ、このウィズの付き添い猫なんだが、なんで観客にこっちの住人まで呼んでいるんだ? 見たところ、向こうの街の人は、ここを主催してるとは思えないが……」


「あぁ……なぜロックフォードの住人を招待しているか、ですか……それはですね」


 ウィニーと名乗る鎧の男は、腰の札をシャッフルする。

 そして十分札がきれたところで、答えた。


「ここは誰の物でもないのですよ、ですが、維持費がかかるので資金を出さなくてはなりません……ですので」


 腰のホルダーらしきものに札を戻す。


「賭けてもらっているんですよ……強制的に資金をね」


 そう言ってニヤニヤと笑うウィニー。

 その様子を見て、ウィズが拳を握りしめる。


「どういうことだよ、ウィズ」


「……街の人は、このコロシアムの観戦がある程度の人数まで強制参加なんです、そしてロックフォードの人が賭けるのは、同じロックフォードの住人、つまり私です」


 ウィズはポシェットから出したたった10枚の札をシャッフルし始める。


「ま、積極的にデュエルを持ち掛けてくるのはあなたの方ですからぁ……維持費と同時に多少こちらの街が裕福になるようになっていますよぉ? 小さき炎の魔術師ウィズ、あなたは相当嫌われているでしょうねぇ……」


 そういうこと、か。俺は、ウィズとネル婆さん以外の人間が腐って見えた。 

 と同時に、小さな笑いがこぼれる。

 ウィニーは気づいている様子もなく、大きく叫んだ。


「なぜなら、あなたはもうこの私、『近衛兵のウィニー』に、20戦は負けているのですからねぇ!?」


「今日こそ私が、勝ってみせます……」


 デュエル、開始だ。


「そちらが先行でいいですよ……勝利は私にあるんですから」


 ウィズとウィニーは腰の置き札より、五枚初期手札を取り出す。

 結果は……。


「よし……」


 俺はニヤリと笑った。

 ここさえ押さえればオーケー。

 そしてドロー。この時に引く枚数は0から2枚までのドローが許される。

 ウィズは高らかにこう言った。


「0枚のドローを宣言します!」


「ん?」


 鎧の男が首を傾げる。

 そうだ、その反応だ。

 今までにないだろ、そんな顔したことは。

 次に詠唱。この場面では、戦略札の使用が可能だ。

 この時に使える戦略札に限りはない。

 だが、戦略札にはコストが設定されている。

 今はこちら側の1ターン目。コストは1個分使用できる。

 だが、ウィズの手札にはコスト1の戦略札はない。


「こちらのターンは終了です」


「何もしないんですか?」


 ウィズはコクリと頷いた。

 何もできないことを見て、ウィニーは長い髪をかきあげる。

 呆れているんだろうな。察すのが苦手な俺でもわかる。

 俺だってそうだ。こんな何もできない状況、まったくもってつまらない。

 だが、今はそれでいい。

 ウィニーが腰の置き札に手をかける。


「私は、2枚ドローを宣言する!」


 そうして置き札より2枚引く。


「戦略札を使わせてもらいますよぉ……ふふふ」


 コスト1を消費し、ウィニーの戦略札が発動する。


「弾丸装填!」


 モンスターの持つパラメータを1/0、上昇させる。

 前の1が攻撃力、0が耐久力だ。

 しかし、今ウィニーの場にはモンスターがいない。

 だから必然的に、マスターカードの攻撃力が上がる。


「それでは……行きますよ!」


 ウィニーが何もない場所から短銃を取り出した。

 そして――。


 ドンッと、ウィズに向かって撃った。


「ぐっ……あぁ……」


 撃たれた衝撃で、ウィズはその場に蹲った。


「ウィズッ!」


 マスターカードは、ここではプレイヤーを指す。

 ただ、その役であるからといって戦闘をしないわけではない。

 それぞれのマスターカードに能力、コスト、攻撃力、耐久力が割り振られている。

 主な特徴として、場にいる限り破壊されない、耐久力が0になっても場に残る、持っているコスト(消費した分は数えないものとする)がマスターカードのコストと同じ数、もしくはそれ以上を持っていれば、攻撃ができる。 

 つまり、マスターカード『近衛兵ウィニー』そのコストは、1だ。


「ウィズッ……ウィズッ!」


「だい……じょうぶです」


 なんとか立ち上がり、ドクドクと出る脇腹の血を抑える。

 その姿をみて、ウィニーはやれやれ、と言った表情だ。


「全く……静かに街で過ごしていればいいものを……」


 ウィニーは観客席側を指さした。


「ごらんなさい……あなたを応援する者など一人もいないんですよ、なぜそうまでして戦うのですか? 黒猫くん、あなたもそうです、なぜ止めないのですか?」


「ふざけるな! 与えられた裕福な環境で生きてきたお前に、こいつの辛さがわかってたまるか!」


「おぉ……それは失礼しました、私にはどうやら理解できないもののようですねぇ……これで私のターンは終了です」


「ウィズ、無理するな……なんなら、俺が代わりに……」


 首を振るウィズ。

 はぁはぁと息を荒げるウィズだが、その目は死んではいない。

 心配する必要もなかったようだな。

 ウィズの受けたダメージは2。さて、この数字がどこから引かれるか、というとだ。

 5枚しかない置き札から2枚を手札に加え、そのうちの1枚を任意で捨てる。

 そう、置き札の枚数そのものがライフなのだ。

 これが0枚なる、もしくはそれ以上のダメージを喰らった場合。

 負け、となる。


「さぁ……あなたのターンですよ、小さき炎の魔術師ウィズ……」


 ドローの宣言をする。


「引く枚数は……0枚、です……」


「またですか……遅延もいいとこですよ」


 いよいよか。

 我ながら、こうも早く決着がつくデュエルを見るのは、久しぶりだ。

 ウィズは手札の札を確認してるみたいだが、当然出せるカードはない。


「ターン……終了です」


「はぁ……あなたは一体、ここへ何をしにきたのですか?」


 そうだな。本当に、何をしに来てるんだろうな俺。

 ここにきてまだ2日。ロクなデュエルもしてないのに、こんなとこで一人の少女に命を懸けさせてる。

 ださいこと極まりない。学校に行っていた時と一緒だ。


「お遊びでここにきているんですか?」


 遊びか。そうだな。学校に行っていた時の俺は、ただカードゲームができればいいと思っていた。

 だから構築も環境寄りで、絶対勝てるようにいつも作っていたんだ。

 だけど、世の中はすげぇ。

 ここにいるじゃないか。たった10枚で40枚のデッキを相手にしている奴がよ。


「では、私のターン……この戦略札を使わせていただきますよ!」


 この状況で、俺が応援したくなるのはどっちだよ。


「兵糧略奪!!」


 例の記事で決め手となった戦略札。

 相手の置き札を5枚めくり、自分のものにする札だ。


「さぁ、あなたの置き札は3枚……これでゲームオーバーです」


「……」


 ウィズは黙って残りの置き札を全部引くと、血に濡れた手でウィニーの前まで持っていく。

 終わった――。


「んふふふ……よこしなさい」


 ウィニーは置き札を奪うようにして手に取る。


「ふーん……まぁまぁのカードですねぇ……でも」


 徐に残りの置き札の両端に手をかける。

 そして――。


 ビリッと。


「ふふふふ……あははははは……あははははは!!」


 勝ち誇った顔。満足げな表情。

 その様子を見て、観客は誰一人笑わない。

 見慣れた光景って感じだろうか。


「怒らないでくださいねぇ? あなたが弱いのが悪いんですから」


 得意げにウィニーはそう言った。

 初めてだ。弱いカードを使うから負けるんだってことに関して、俺はずっとその通りだと思ってきたのに、今はどうだ。腹が立ってしかたない。

 だから、ウィズ――。


「すみません……」


「ん? なんです? もうゲームは終わり、退場しなさい」


 俺はニヤリと笑う。

 脇腹に血を流して立っている少女はにっこりとした。


「私、とろいので、このカードの能力を使い忘れていました」


 そうして見せたのは、先ほど破かれるはずだった3枚の内の1枚。


「そ、その札は……」


――伏札、『食い繋ぎ』。


 伏札っていうのは、置き札をダメージでめくるときに、めくったカードが伏札だった場合。

 その効果を保持しているコスト関係なく使えるカード。

 俺の見る限りじゃ、どの伏札も膨大なアドバンテージを取れるものは少ない。

 ゆえにこの食い繋ぎも、ただ捨てたカードを置き札として元に戻すって効果だ。


「使っていいですよね、これ」


「ふ、ふん……何かと思えばさっき捨てた1枚を置き札に戻しただけじゃないですか、そんなものマスターカードである私が攻撃すれば……」


 マスターカード、近衛兵のウィニーの持っているパワーは1/1。

 そう、確かに喰らえばまた0枚になる。

 だがもう、攻撃するだけじゃこっちの手は止められない。


「死ねぇぇ!」


 ウィニーは腰に下げていたソードを勢いよくウィズに振り下ろした。

 ダメージは1。これで置き札は0枚。


「だが……」


 おっと、面白くて口に出してしまった。

 ウィズは置き札を1枚めくり、ウィニーに見せる。


「伏札……食い繋ぎです……」


「な……な、なな……」


 この世界でのデュエルは、確かにアグロがこれでもかというぐらい強い。

 なぜなら、伏札の薄いカウンターでは突破は不可能。さらにダメージ自体がライブラリアウトという相手のトップも手札もそれだけで引っ掻き回せる。

 ましてや置き札の枚数が固定されていないことによって、置き札が多いほど有利っていうのが今の環境だ。

 だが、置き札が少ないことが必ずしも不利ってわけじゃない。

 そして俺の出した回答。

 ループだ。

 こいつは少ない置き札だからこそ確率も準備に要するターンも少なくて済む。


 勝ちだ。あとはウィズの攻撃できるコスト3が溜まり、あいつの置き札を全部削るだけ。




 





いかがだったでしょうか。

ここら辺は何回も修正いれるかもしれませんね(笑)

それでは、いよいよ次は決着です

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