我は同じ、だがお前とは違う3
ごめんなさい(;´・ω・)
風邪で寝込んでいました。
かなり短めになってしまったのですが……どうぞ
「それじゃあ、私の番ダね! んー……どうしヨっかなぁ……まずは2枚ドローしよっト」
セリーヌは腰のホルダーから札を二枚引く。
「ちょウどコストは3持ってるかラ、全部使ってこれ出しちゃオうかな?」
そう言って生えるように出てきたのは、とても大きなゴーレム。
ファニードールというだけにぬいぐるみなのか、とてもやわらかそうな見た目をしている。
「この子はね、負けず嫌いだけどとっても臆病なんダよ? でも、みんながイると負けナイぞーって、強くなるの! パワーも耐久力もプラス2、だよ!」
つまり、パワー3耐久力3の式狛が場にファニードールがいるだけでパワー5の耐久力5になったのか。
なるほど厄介だ。一気に強い式狛を出されてしまったものだな。
「さぁ、『乾いた人形ファニーゴーレム』ちゃん! お姉さんに向かって攻撃だよ!」
「くっ……」
ゆっくりと腕を振り上げ、その拳が一気に我の前に降ろされる。
その迫力は本物のゴーレムの拳と引けを取らない。
だが、直撃の瞬間。
「……?」
ポヨン、と。
全身にぶつかって我は少々体勢を崩すが、痛くもかゆくもない。
「やったやったぁー!」
攻撃のヒットに大喜びするセリーヌを見て、我は一気に気が抜けた。
「……お前、我を追い詰めたいのではないのか?」
「追い詰める? そんなことしないよ? だってこれから友達になるのに、傷つけちゃかわいそうだもん」
あくまでも我を人形の仲間入りさせようとしているだけなのか。
なんとも幼すぎる考えだ。
勝敗に傷は付き物だというのに、人が傷つくことを心配して、まるでウィズや淳介みたいだ。
「ふん……まぁいい、我のターンだな?」
さっき受けたダメージ分の五枚を引き、我は二枚ドロー宣言。そして余分な札五枚分を墓地に置く。
「我はコスト3使い、戦略札『永久の墓穴』を発動する」
追加コストとして置き札を半分にし、置き札から好きな札を三枚選んで好きな場所に並べ替えることができる戦略札。
これで我の置き札は残り13枚だ。
「あれあれー? そんな一気に置き札を減らしていいの?」
「ふん……そう思うなら攻撃するといい、どうなるかは自分の目で確かめろ」
【 ☆ 】
ある日のことだ。
我は淳介の頼みで、デッキを見せていた。
「うーん……」
「何をそんな考え込んでいる?」
「いや、今後のことを考えて早めに対策をしようと思ってな、お前のデッキを」
「対策? 見たところそのデッキはあまり弱点がないように思えるのだが?」
その発言に対して、淳介はため息をつく。
「あのなぁ……それはシャドウがパワー1の式狛ばかりを採用してたからであって、もしデッキに置き札を直接墓地に置く札なんかが採用されてたら、最後の二枚でそれ使えば容易に勝てるんだぞ? それにこのデッキはあまりにもフィニッシャーである『天使と悪魔の報復』頼りすぎる、ダメージの処理が終わってからでしか発動できないこいつはお前の思ってるほど万能じゃないんだ」
「な、なるほど……」
欠点ばかりここまで言われるとさすがに腹が立つ。
しかし、その感情より先に我は、他人のデッキを見ながら頭を抱える淳介を不思議に思った。
「淳介……お前はなぜ……」
「そうだ! こうしよう!」
突然我の声を遮るように淳介が叫んだ。
「な、なんだ急に大声だして……」
「いいか、マスティマ……世の中には『天使と悪魔の報復』よりも理不尽な効果ってのがある」
「一度引っかかったら負けになる効果よりも、もっと理不尽ということか?」
「まぁそれもあるが……もっと地味でもっと嫌らしい理不尽だな」
そこからのセリフはいつも通りだった。
全く、淳介はデュエルで考えることがどこか一つ先に行っている。
「で、その効果とは……なんなのだ?」
「それはな……」
【 ☆ 】
結局、なぜ我のために頭を抱えてくれるのかは分からず仕舞いだったな。
自分で考えろということか。
だがなぜだろう。
今、そこから先は、自分で考えてみたいと思える。
ふと気づくと、我は自然と頬が吊り上がっていた。
「さぁ、貴様のターンだ」
「本当にイイの? 今ならやり直しシてもいいよ?」
心配そうにこちらを見るセリーヌに対して、我は首を横に振る。
「負ケちゃうよ?」
「しつこいぞ、なぜそこまで心配する? 勝たなければお前の目的は達成できないはずだぞ?」
「えーっと……そノぅ……私、からかっタだけナンだよ?」
「……」
表情を我は絶対に変えない。
それはセリーヌとデュエルを始めてからずっと心に決めていたことだ。
なにがからかっただけだ。
では、このデュエルもただの遊び半分だとでも? そう言いたいというのか?
片腹痛い。笑わせてくれる。
最初に目を合わせた時は、そんな同情の心一つない目線で居た癖に。
「お姉さン……本当に素材になっちゃウよ?」
三度目の心配。丸い瞳がうるうるとこちらを見つめる。
「全く……虫唾が走るな、貴様のような奴は」
「……?」
「我は知っているぞ? お前と我は一度会っている」
「っ!?」
「そして、我とお前は同じ道を辿った者同士だ」
「……」
「だがな、もうお前とは違う……その意味を理解することは絶対に貴様にはできない」
広がる。赤黒い闇が部屋を一面染め上げる。
また『暗がりの魔女人形』か。
だが、さっきと違うところは、さっきのようなふざけ半分ではないだろうとも思えるほどの殺気があることだ。
殺気に満ちた赤黒い闇はこう言う。怒りの赤と憎しみの黒で我を塗りつぶすかのように。
「ソノテイドデワタシヲシッタナンテイワナイヨネ? オネェ……サン?」
今度からは体調管理気を付けないといけませんね(;´・ω・)
それではまた(^_^)/~




