生命が恐怖するもの
どうもー二日遅れの更新です(日が過ぎてるけど)
さぁ盛り上げていきましょう!
どうぞー
「我のターンッ!」
マスティマが札を1枚引く。
「おいばか」
「ん? なんだ、何かしたか?」
ジャッジのあの男がこっちを見る。
そりゃそうだ。
「ドロー枚数の宣言をしとけっ……」
俺は聞こえないようにフォローを入れた。
相手から何枚引いたかが見えない状況にある。
1枚引くか2枚引くか引かないかを選べるドローフェイズでの宣言はとても重要だ。
「す、すまない……1枚ドローを宣言する」
さっきまでの歓声とは裏腹に、辺りが静まり返る。
みんな違和感に気づきだしたか。
「ではいくぞ! コスト1で召喚札を使う!」
今度はしっかりと手札を見て札を行使した。
出したのは式狛の『血みどろの殺人鬼サニー』。
コスト1のパワー2で耐久力2の悪魔族。片手にナイフを持った血だらけの小悪魔だ。
見た感じだと序盤にしては攻撃力が高いが、こいつには欠点がある。
「よし、攻撃し……」
「アホッ!」
俺はマスティマの耳元で怒鳴り上げる。
やっぱりか。見てられない。
「式狛はこのターンに攻撃できねーんだよ!」
ここら辺は初心者でも公平に見たら誰でも気付くはずだ。
こいつはどこか都合のいいことを悪魔っぽい考えしやがる。
その痛恨すぎるミスに観客がどよめき始めた。
ヤバイ。これは想像以上に俺が指示しなくちゃならないな。
「お……あ、あぁそうだったな……すまない、ターン終了だ」
そのぐだぐだとした言い回しからシャドウも首を傾げる。
恐らく、勝利を確信したのだろうか。
余裕のあるスマイルを浮かべる。
「おやおやぁ? 貴方様はもしや、デュエル初心者なのですかぁ?」
「な、なにを言う! 少し口が勢いのまま突っ走っただけだ!」
口が突っ走ることに俺はつい自分の戦略を滑らせてしまうんではないかという不安が過ぎる。
ずれたスタートダッシュから次は相手側だ。
「私のターン、ドローは2枚を宣言!」
札を2枚引いて、1枚に手をかける。
コスト1の札があったか。
「ゲシシシ……こちらも召喚札、いでよ『ムーンシャドウ』!」
地面からゆらりと黒色が上る。
それがだんだんと片刃剣を持った異様な戦士に変わった。
パワー1の耐久力1。
なんの変哲もないアタッカーだが、あれはローレルの札屋で展示されていた召喚札。
その効果をよく覚えている。
「さぁいけ、ムーンシャドウ! サニーを攻撃!」
「なっ」
マスティマがその無意味さに驚いたのだろう、声を上げる。
だが、俺の思った通りの動きだ。
基本的にライフである置き札を減らすのが勝利条件のこのルールで、召喚札同士の衝突では置き札は減らない。
パワーはこっちが勝っているから、このバトルでサニーが破壊されることはない。
サニーとムーンシャドウはお互いのナイフと影の片刃剣で一振り、切り合う。
ムーンシャドウが形を保てずに崩れ去った。
そして。
「ゲシシシ……」
「なななぁ!?」
召喚札、ムーンシャドウはシャドウの手の中に戻っていく。
そりゃマスティマも驚くよな。
俺もコスト1であれはぶっ壊れだと思ったからな。
あの召喚札は破壊されると“手札に戻る”。
軽コストの癖に何回でも使いまわせるわけだ。
つまり実質手札は減らない。
1ターン目からこれを見れるってなると、やはり動きはアグロ。
だが、ウィニーの時みたいに使い捨てじゃない。
リペアの効くアグロ、とでも言うべきか。
「おい……淳介」
「なんだよ」
「あいつ、召喚したばかりなのに攻撃してきたぞ?」
「は?」
まさかマスティマが驚いてたのは。
そう思うより先にマスティマの方が叫んだ。
「あれは反則ではないのか!?」
「だから後攻は式狛の攻撃が可能なんだっつ……あぁくそぅ!」
もうだめだ。完全に初心者ってことがバレた。
どよめきが一気に罵声に変わっていく。
「おい、あいつ大丈夫か?」
「いや頭おかしいだろさすがに」
「だよな、まるでルールを知らないみたいだし」
「おい、悪魔の女ぁ! こっちはお前に賭けてるのに、金が吹っ飛ぶだろうがぁ!」
「そうだそうだ! ルールもわからねーできてんじゃねぇぞアマぁ!」
あぁ物が。食い物のカスらしきものがこっちに飛び交う。
というか、やっぱりここは賭博会場の場になっているのか。
さすがにこの状況、マスティマはショックだろうな。
と、俺はマスティマの顔を見る。
「……!」
ギロリと観客側を睨むその面構え。
その顔は殺意が丸出し。
俺は拳を固める様子を確認するなり、いよいよどう止めるべきか迷い、焦った。
とりあえずでこの言葉が出る。
「落ち着け……マスティマ」
聞いたのか、握り固める左手を緩めた。
「ゲシシ……私はこれでターン終了です、さぁ初心者悪魔さんあなたのターンですよぉ?」
「マスティマ、あんなデュエルに参加もしない奴らなんてほっとけ……お前は」
「我の……ターンッ!」
そう、それでいい。じきにマスティマの時は来る。
俺はにやりと頬を釣り上げながら、シャドウの様子を見た。
あっけらかんと自分の影を伸ばしたり縮ませたり、持て余している。
その面がどう消えるか、見物にしておかないとな。
「我はドローをしない」
いやしておくべきだ。まだ手札にあれがない。
だが、マスティマに聞く耳はないようだ。
続けざまにメインフェイズも飛ばして場に指示を下す。
「いけぇ、サニー! あいつの首跳ね飛ばしてやれ!」
命を受けて、殺人鬼サニーはシャドウに向かって走り出した。
「きゃははははーは」と高い奇声を上げて嬉しそうに首をはねる。
別れた黒がボトッと質量のある音を立てて落ちた。
「ふん……無様だなぁその初心者とやらに攻撃されてライフ差なら我が勝っているぞ?」
これで相手の置き札が削られる。さっきのドローも合わせて残り36枚。
そして攻撃終了時。
「はっ! ……ぐっ」
戻り際にマスティマの腹へ一撃。その攻撃はサニーのものだ。
サニーは使役したマスターカードにパワー分のダメージ与え、墓地に送られる。
これがサニーの追加コストということだ。数値が高いのはそのせい。
傷口からドクドクと血が流れるが、マスティマは平然としている。
タフさだけは一級品ってことか。さすがは戦闘派だ。
「こっちのターンは終了だ……さぁ貴様のターンだぞ、いい加減死んだふりをするのはやめてくれないか?」
「気づいていましたかぁ……」
転がり落ちた首がぴょんと跳ねる。
頭のなくなった影とくっついて、頭が再生した。
なるほど、これは厄介だ。
あいつはダメージを受けても何一つ怖くない。
そんな再構築型の身体をしていやがる。
対してこっちは受ければ傷が癒えることは一切ない、マスティマのスタミナ任せだ。
できれば早期に決着をつけたいところだが、今マスティマの手札にはあの札がない。
次のドローでくればいいが……。
「では、頭もくっついたところで、私のターンですねぇ……」
「さっさとしろ……いちいち丁寧すぎるのだよ貴様は」
「そう急かさないでくださいよ……さてさて、どうしましょうねぇ……ゲシシシシ」
ドローするか迷っている。
札を置き札から引くっていうのは同時にライフを削ることでもある。
だから手段がある場合は、引かないのも手だ。
ということは、手札に既に何らかの手段があるということなのか。
とりあえず今回はここで区切ります
さぁシャドウはまだまだ手をかくしていそう……
マスティマに勝機はあるのでしょうか
では、また(^_^)/~




