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エキストラコスト

書いてたら、ここまでで区切りが良かったので、とりあえず投稿です。


だいぶ更新ストップが長いこと続いてしまったこと、申し訳ありません(-_-;)


今回はちょっと長めです。

 

「私のターンっ!」


 よし、まずこのターンなんとか初動は確保出来た。

 ウィズは俺を見て頷く。


「私は、このターンドローをしないことを条件に、コスト1で『魔術見習いペンタン』を召喚します!」


 召喚の声に現れたのは、とんがり帽子を被ったペンギン。

 攻撃力1、耐久力1の

 ウィズのデッキの中に入っている数少ない召喚札。

 その効果は、滑り止めのような効果だ。


「ペンタンが場に出た時、コスト1以下の札を1枚置き札から手札に加えます」


 これで安定して2ターン目に『魔力の胎動』をコスト1で使うことができる。

 ……とは言うが、こちらは最速を決めることが出来なかった。


「私はこれでターン終了です……」


 だが、俺はこうも思う。

 カレナリエンのデッキは、一度マスティマとの一戦でどういう動きをするか全て見ている。

 式狛が相手ターンで戦闘をする時、手札と場の式狛を条件が合えば入れ替えることができるというギミック。

 確かに強力でかつ、排除したい式狛を確実に攻撃力の高い式狛で葬ることができる。

 しかし、ウィズのようなデッキタイプとは相性が悪い。


「あたしのターンッ!」


 なぜなら、こっちはひたすらデッキと手札を回し続け、その後にリコードタグワンモアテイクで、場にいる式狛破壊とプレイヤーダメージを一気に稼ぐ。

 つまり、序盤はほとんど攻撃しないのだ。

 横に並んでも、それが軽コストの式狛なら、何も怖くはない。


「……ふふ」


「ん?」


 カレナリエンが、俺を見て不敵に笑った。


「淳介、ウィズ、あんた達今、あたしのデュエルスタイルなら負ける要素はない……そう思ったでしょ?」


「な、なにっ!?」


「えっ?」


「だってそうよねぇ? あんた達はあたしのデュエルを一回見ているんだから」


 ……ハッタリか?

 でも、そうでなきゃおかしい。

 あの構築なら、ウィズのマスターカード効果で、セイブネスを発動する前に攻撃した時の効果が発動するため、破壊することができる。

 最速とはいかないが、確実にリコードタグワンモアテイクで押し切ることは可能だ。

 しかし、


「やはり……」


 振り返るとマスティマは、拳を握り締めていた。


「貴様、あのデュエルは本気ではなかったのだな……」


「そうよ? あんたもわかってたでしょ、一度デュエルではなくて、マジもんの殺し合いであたしの実力を見たんだからね?」


 カレナリエンは、手札を一枚取り出す。


「さぁ、見せてあげるわ、あたしは手札から『犠牲の魂(サクリファイスソウル)』をコスト1で発動!」


「サクリファイスソウル?」


 聞いたことがない札だ。


「あたしはこの効果によって、手札を2枚捨てて、置き札から1枚をエキストラコストとして追加するわ」


「……?」


 そう言ってカレナリエンは別のホルダーに置き札から札を1枚セットした。

 どうやら俺たちの使っている連詠唱と同じように、墓地でも場でもない場所という位置づけのようだ。

 って、ことは……。


「……淳介、どう思いますか?」


「……」


 眉間にしわを寄せる俺は、エキストラコストという言葉で連想できることを考える。

 恐らくだが、コストという言葉を使うってことは、カレナリエンが()()()()()()()()()()()と言っていたが、動きを見るにあれは、エキストラコストを溜める、という表現が正しいだろう。

 結論を先に言うなら、今彼女がやった行為は、次に使えるコストの引き延ばし。

 しかもそれは、連詠唱のような条件付きのコストではない。

 仮の考えに過ぎないが、きっとあのエキストラコストはどんな札のコストの代わりにも出来るということだろう。

 でなければ、追加コストで手札を2枚も切らされる意味を疑うことになる。


「ウィズ……今出来た答えだ、このデュエル、急いだ方がいい……」


「えっ……?」


「これも予想に過ぎないが、多分あのエキストラコストっていうのは、相当リスクが高い分、早期に制圧できる札を使うことができる行為だ」


 そう、だとすると、だ。

 余計にこのデュエル、長引かせるわけにはいかないんだ。

 次いで言うなら、先攻1ターン目で『魔力の胎動』を使えなかったのはデカい。


「あたしはこれでターンエンド……ふふ、どうしたのかしら? そんなにエキストラコストが怖いの?」


 いちいちこっちの内心を言い当てやがる。

 だがいう通りだ。

 想像だけは出来るがゆえに、その言葉の存在は大きくなる。

 明らかに強い。

 汎用性から考えても、1コストでその動きができることも。


 しかし、俺はそんなことより、ある違和感を抱いていた。


 カレナリエンは、500年以上、この場所にいた。

 当然のことだが、その待っている間もずっと一人でいるってことになる。

 考えてもみるが、そんな奴が何のためにデッキを作るんだ。

 デュエルっていうのは、二人いてやっと出来る行為。

 そのデュエルの中で、どんな動きが強いかを見極めていく。

 そうしていくにつれて、互いに手札の切り方も、札を出すタイミングも洗練されていくのだ。

 コストを引き延ばすという行為も、その強い動きの一つ。

 大量のコストを早期に揃えて、相手より先に大きい式狛を出すことは、どのカードゲームでも強い。


 二度目の生を受けている神の候補者。

 それに当てはまるということは、俺と同じ死んだ後転生という歩みを進めているってことで間違いない……よな?


 改めて俺は自分に問いかける。


――――デュエルに興味すらなさそうな初心者が、たった一人でこの強さに気づくのか。


 暇潰しになんとなく組んでみた、なんてやわなデッキじゃない。

 その証拠に、あのデッキでは、セイブネスとエキストラコスト、2つの戦略どちらかを選んでデュエルすることができる。

 恐らく、あんな簡単に手札を2枚も切れるのも、どちらか取捨選択ができるからなのだろう。


「そっちのターンよ! 早くしなさい!」


「あ、は、はい! 私のターンです!」


 ウィズはドローしないことを宣言。

 そうすることによって、


「私は、コスト1『魔力の胎動』を使います!」


 発動、効果によって置き札を2枚見て、1枚を手札、もう1枚を裏向きで墓地に。

 それ以外にコストを支払って使える札が今はない。

 残すは攻撃だけとなった。


「ウィズ、わかってるよな?」


「はい!」


 とりあえず攻撃力1だが、場にいる式狛で少しでも置き札を削る。


「魔術見習いペンタンで、カレナリエンさんに攻撃!」


 ペタペタと足音立てながら、駆け寄り、ペンタンは持っていた杖を大きく真上に振りかぶりながら飛び掛かる。


 ペェェエエン。


 なんとも愛らしい鳴き声と同時に、コンッ、というなんともダメージになっているのかわからない音が響く。


「ふんっ!」


 それをわざと受けて、胴体を掴み、カレナリエンは俺たちに向かって投げ返した。


「あぁっ、ペンタン!」


 思わず攻撃が終了したペンタンを抱き掴むウィズ。

 それを見てカレナリエンがため息をついた。


「呆れるわ……あんた達、現神を倒すなんてほざいてるけど、そんな雑魚ばっかデッキに入れているのかしら?」


「……なんだと?」


 俺は静かにカレナリエンを睨む。


「だってそうじゃない、コストを少し増やせば、コスト1どころかコスト関係なくサーチできて攻撃力の高い式狛なんていくらでもいるわ」


「てめぇ、言いやがったなぁ!」


「何怒ってるのよ、事実そうじゃない? そんな雑魚がいたって、プレイヤーは傷一つつかないわよ?」


「このやろう……このペンタンにはなぁ」


「淳介、やめてください!」


 抱きかかえられたペンタンは、キューと、か細く鳴く。

 首を横に振るウィズが、ペンタンを降ろすと、カレナリエンの方へ目をやった。


「何よその目……言いたいことがあるなら、目で訴えるんじゃなくて、口で言いなさいよ」


 その上から目線は、ウィズも気づいているようで、怒りが拳に表れている。

 そりゃそうだろう。

 こっちの戦略を否定されそうになったんだから。

 しかし、ウィズは積もった怒りを抑え込んで、言った。


「確かに、ペンタンはカレナリエンさんにとって弱く見えるかもしれませんね……」


「何言ってるのよ、実際そうじゃない……そんなざっ……」


「でも――――」


 念を押すように、会話に割り込んだウィズの次の言葉は、こうだった。


「そんな弱い式狛でも、輝ける場所はいくらでもあるんですよ?」


「っ……は、はぁ? 馬鹿馬鹿しい、あんた達知らないのかしら、弱肉強食って言葉、強い者に弱い者は食われて死ぬのが宿命、だからみんな強者を目指すの、一番強い者こそが正義なんだから!」


 へっ、とメイが笑う。


「わかってるじゃねぇか……伊達に神の候補者名乗っていたわけでもなさそうで、俺様は少しホッとしたぜ……」


「ひっひっひ……ですねぇ……」


 そして、メイはため息をつきながら続ける。


「それ比べてよぉ……強者側だった奴がなんでまた、弱い者のそばにいるんだか……」


 確かに、物事に強い弱いは関わってくる。

 それはデュエルも同じだ。


「ふん……貴様ら、何もわかっていないな?」


 ニヤリと笑いながら、マスティマはウィズと同列に立つ。

 そう、まさにそうなんだ。


「そんなお前らにとってゴミのように見える物ですら、勝ち筋のパーツになりえるんだ……それがわからないお前たちに……いや、そんな考えばかりの奴に、ウィズは倒せない!」


 言うようになったじゃないか、マスティマ。


「さぁカレナリエン、お前のターンだ!」


「っ……言われなくともわかってるわよ、あたしのターン!」


 ……少しだけ、あいつの顔に動揺が見えはじめた。

 伝わったのだろうか、俺たちの言葉がいくつか。

 だが、完全に洗脳を解くには、恐らく勝たないといけない。

 そのためにも、なんとか手札が回っている最中にあの召喚札を引かなくてはならない。

 頼むぞ、スペルシードラス。


 

エキストラコスト……うーん(*'ω'*)

まだ説明してない部分もあるので、次回も期待ですよ?


そして、次の次の話くらいでは……ふふふ。


すごく楽しみです


さぁ、頑張るぞぉ!

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