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アテリースマギサ  作者: かいり
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3話―①『掟』

 やっぱり後悔した。

「俺と戦え! 神空蒼祁!」

 これで果たして何人目か。暇なのかお前ら。もう少し静かに食事出来ないのか。それとも嫌がらせなのか? 力で敵わないから、じわりじわりと精神的に追い詰めていこうという作戦なのか? それならまとめてぶっ飛ばしてくれようか。

 昨日の一件のせいで、今朝は戦いを申し込んでくる馬鹿ばかりだった。

 まだ朝だぞ? それにこっちは飯を食ってるってのに、常識が無い奴等ばかりなのか? せめて食い終わってから来いよ。それも嫌だけど。

「アニキ人気者だね!」

 果てしなく朱兎が勘違いしていたので、しくしくと泣くふりをしながら訴えた。

「違う。嫌がらせだ。いじめられてるんだよ」

「えっ⁈ そうなの⁈ アニキいじめられてるの⁈ 許せない!」

「だろ? どうにかしてくれよ我が弟よ」

「任せてー!」

 朱兎は勢いよく立ち上がると、俺にまとわりついていた馬鹿を思いっきり殴ってくれた。見事なる右ストレート。一発KO。馬鹿は気絶して倒れた。

「やったぜ。さすが我が弟」

「これでどお⁈ アニキ!」

「いいぞ。もっとやってくれ」

「分かったー!」

「ストップストップーッ! ダメだよーッ!」

 馬鹿をさらに殴ろうと構えた朱兎の前に、蘭李がすかさず滑り込んできた。両手を広げて馬鹿を守ろうとしている。

「何だよ。邪魔すんなよ」

「もう一回なぐったからいいじゃん! これ以上やるとしんじゃうよ!」

「大丈夫だ。その前に俺が止める」

「でもダメだって!」

 頑なに動こうとしない蘭李。心配性だな。大丈夫だ。半殺しで終わらせてやるから。

 無理矢理蘭李を退かそうとすると、背後から首筋に気配を感じた。

「心配してやってるのに無下にするつもり?」

 あからさまに不機嫌な少年声。と同時に、鋭利な痛みがじわりと首に広がった。思わず溜め息がこぼれる。やる気満々だった朱兎を席につかせ、背後を指差して蘭李を睨んだ。

「蘭李、もうやらねぇからこいつを大人しくさせてくれ」

「………コノハ、もういいよ」

「チッ」

 首筋に突きつけられていた異物の感覚が無くなった。コノハがスタスタと通り過ぎ、蘭李の隣に立つ。いつも通り緑色の目で、俺を鋭く睨んできた。相も変わらずこいつは敵意剥き出しだな。

「心配しすぎなんだよ。本当に殺すわけねぇだろ」

「でももし、万が一にもころしちゃったら……」

「魔力者なんだから捕まりはしねぇよ」

「え……?」

 少し首を傾げる蘭李。そういえば、こいつには話してなかったな。

「魔力者が魔力者を殺しても、罪にはならねぇんだよ」

「え……? そ、そうなの……?」

「ああ。よくあることだしな」

 魔力者は、いくら魔力者を殺したところで、倫理的な問題はさておき、罪に問われる心配はない。言った通り、よくあること(・・・・・・)だからだ。

 ただし、魔力者が普通の人間……つまり、魔力を持たない人間を殺したら、話は別だ。その場合、『魔警察』という組織に捕まり、良くて終身刑。生死問わず二度と出てこれないらしい。それほどまでに、一般人に対しては厳格なルールが設けられている。

「そうなんだ……」

「というか、もしそれで罪になってたら、俺は今頃ここにいないし」

「………そっか」

 そうだよ。少し考えれば分かるだろ。足りない頭を回せ。

 そう言うと、蘭李は妙に大人しくなった。逆に大人しくなりすぎて、それはそれで不気味だ。

 まさか、何か変なことでも考えてないだろうな?

「おい、何考えて―――」

「よぉーっす! 神空!」

 突然、思いっきり後頭部を叩かれた。一瞬にして辺りに沈黙が流れる。頭を押さえながら振り向くと、ニカッと笑う藍崎がいた。

「お前人気だなー! すげーぞ! 皆噂してる!」

 バシバシと肩を叩かれ続ける。腹が立ったので、その腕を力強く掴んだ。そして、鋭く睨み上げる。

「てめぇ……手加減ってものを知らねぇのか……?」

「手加減? お前に手加減なんているか?」

「いるだろ。逆に何でいらないと思ったんだよ」

「自称最強だから!」

 再び、周囲の視線が集まった。いい気分ではない。せめてこいつ、もう少し声量抑えられないのか。迷惑を被っているのは俺なんだぞ?

 仕方無く、藍崎から逃れる為に席を立った。足早に食堂から出ていく。蘭李や朱兎に呼び止められたが置いていった。

 授業までは少し時間があるな。部屋に戻るのも嫌だし、図書室にでも行くか。

「なあなあ、ちょっと待てって!」

 背後から腕を掴まれた。振り払おうとすると、爪まで立てられ、小さな痛みが生まれる。振り向くと、藍崎がニコニコ笑っていた。

「授業まで暇だろ?」

「暇じゃねぇ。離せ」

「暇だろ! ちょっと付き合ってくれよ!」

「何にだよ」

 そう訊き返すと、藍崎は藍色の目を細めて言い放った。

「儀式にだよ」


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