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アテリースマギサ  作者: かいり
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3話―③『召喚獣』

 今日の授業内容は、所謂治癒魔法だった。

「『エイサ・コ・アポドシー』!」

 黒ノ瀬がそう唱えると、折れたボールペンは元に戻った。それを見て、蘭李達も各々練習に取りかかる。

 既に習得済みだった俺は、呪文書の別ページを開いた。そこには、多くの魔方陣と呪文があった。召喚獣のページだ。

「フェニックス、ヒュドラ、エキドナ………このラインナップの意味は何なんだ?」

 有名どころが多いが、中には聞いたことのないような魔獣もいる。当てずっぽうで召喚してみたら、この魔獣達になったってことなのか?

 いや………そもそも、魔導石の呪文は一体どう決まったものなんだ? 誰かが決めたのか? それとも、既に決まっていたものを、誰かが発見したのか?

 やはり謎が多い……調査しようにも、学園の関係者が口を割るとは考えにくいしな……。

「へえー! 召喚獣かあー! いいね!」

 桜井の言葉に反応した。視線を向けると、藍崎や蘭李と楽しそうに喋っていた。どうやら、藍崎の話を聞いたらしい。

「いいなあ……あたしもほしい! おっきいやつ!」

「蘭李ちゃんなら召喚出来るよ! 雷属性だから!」

「ほんと……? あたしでもできるかな……」

「出来るに決まってるよー! ねっ? 和泉クン?」

「ああ!」

 根拠も無いことをペラペラと……あいつはせいぜい小さな下級魔獣が限界だろ。ペットサイズの小さいやつ。

 授業そっちのけで楽しそうに話す蘭李達に、黒ノ瀬が申し訳なさそうに割り込んできた。

「あの……皆さん、呪文の練習を……」

「もー。ゴマセンセーは心配症だなあ」

 ヘラヘラと笑う桜井。と思ったら、「ふふふふ……」と不気味に笑い出した。こいつ大丈夫か?

「今日の魔法はとっくに習得済みだよ!」

「えっ⁈」

 得意気にピースサインする桜井を、驚いたように見る蘭李と藍崎。俺の隣にいた朱兎は、小走りに蘭李のもとへと向かった。蘭李はというと、すごいすごいと騒ぎ始める。

「さすが桃子ちゃん!」

「すごいねー!」

「えへへー! でしょー?」

「そっか! お前もともと治癒魔法使えるんだっけ!」

「そーそー! こんなの朝飯前だよ!」

 周囲に褒められたからか、桜井は嬉しそうに胸を張った。単純か。

 こいつは俺を除いて、唯一の治癒魔法経験者だ。大会までに使い物になるようにしなければ、悲惨な結果になりかねない。回復は戦闘の要だからな。

 わいわい騒ぐ蘭李達とは離れて、うざったそうな顔でスナック菓子を食べる夕飛と、爆睡する茶々目と、無表情で眺める白石がいた。

 実力はそれなりにあるらしい夕飛と、真面目に取り組んでいる白石はともかく、茶々目は早めに何とかしないと、それこそ取り返しがつかないぞ。まずあいつが起きてるところを見たことがない。桜井に騒いでもらうか。

「あっ、それで召喚獣の話に戻るんだけどさー、たしか百合ちゃんは持ってるって言ってたよ!」

「えっ⁈」

 皆の視線が一気に白石に集中する。突然話題に持ち上げられた白石は、ビックリして固まってしまっていた。桜井はそんなことも気にせず、白石へと近寄っていく。

「そうだよね?」

「えっ……そ、そうだけど……」

「えっえっ⁈ 見せてくれよ!」

「あたしもみたい!」

「オレもオレもー!」

 わらわらと白石のもとに集まる蘭李達。困り果てた白石は、チラリと黒ノ瀬を見た。

「あの……魔法は使っても……?」

「あ、えっと……こういうことなら大丈夫ですよ」

「ありがとうございます」

 へえ。ちゃんと確認は取るんだな。やっぱり真面目なのか。

 白石は蘭李達と少し距離を取り、床に手のひらをつけた。直後、そこから煙が上がる。

「えっ………⁈」

「すっご……!」

 煙が晴れたそこにいたのは、教室の天井まで届く程の巨大な白い狐だった。しかも尾は、九本生えている。狐は赤く細い目で俺達を見下ろした。

「九尾狐のキューさんです」

 ―――は? え……キューさん?

「へぇー! よろしくねー! キューさん!」

「キューさん大きいなあ!」

「さわってもいいかな……」

「どうぞ」

「やったー!」

 蘭李達は何の疑問も持たず、『キューさん』に近寄っていく。ふわふわの毛を触り、きゃっきゃと喜んだ。

 おいちょっと待て。お前ら順応すぎるだろ。何すんなり受け入れてるんだよ。

「おい………キューさんってなんだよ」

「キューさんはキューさんですが……」

「蒼祁もさわりなよー! もふもふだよぉー!」

「アニキー! おいでよー!」

 キューさんに抱き着きながら、蘭李と朱兎が手招きしてくる。キューさんは頭を下げ、桜井に顔を近付けた。

「わーかわいー!」

「キューさんは心優しい人にはよくなつくの」

「えー! キューさん! おれは⁈」

 藍崎にも顔を近付けるキューさん。藍崎は満足そうに笑った。

「あはは! やったー! おれ優しい人!」

「いいなあ! いいなあ! あたしもキューさんのあたまなでたい!」

「キューさーん! オレ達にも撫でさせてよー!」

「こ、子供は元気で良いですね……」

 真っ青な顔をした黒ノ瀬が、逃げるように俺の方へ来た。笑ってはいるが、引きつっている。

「怖いのか?」

「えっ⁈ そっそんなことはないですよっ⁈」

「声裏返ってるし」

「うっ………」

 本当こいつなんで教師なんかやってるんだろうな。

「はあ………馬鹿みたい。たかだか召喚獣で……」

 バリン、と何かを噛み砕く音が響いた。視線を向けると、夕飛が煎餅をバリバリと食していた。どうやらスナック菓子は食べ終わったらしい。

 その背後で、茶々目が呆然と顔を上げた。半開きの目でキューさんを眺める。

「……夢か………」

 そう呟いて、再び眠りについてしまった。

「そりゃ夢だと思うよな……」

「え? 何ですか? 神空くん」

「何でもない。それより月末の大会では、魔導石で呼んだ召喚獣なら使っていいんだろ?」

「えっ………そうですが……」

 それだけ分かれば結構。俺は蘭李達のところへ向かう。蘭李と朱兎はキューさんに認められたらしく、キューさんの頭を撫でていた。

「あっ! 蒼祁クンも来たんだねー!」

「お前は触らせてもらえなさそうだなー!」

「別にいいし」

「拗ねてるー! かわいー!」

 桜井は無視。それより藍崎だ。

「おい藍崎。いい方法が思い付いたぞ」

「え?」

「お前が召喚獣を手に入れる、いい方法がな」

 俺はニヤリと笑ってみせた。


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