とある日の放課後
そういえば私が書いた物語って全部、女の子視点じゃん。……というわけで、男の子視点です。
「木田くーん」
……面倒くさいやつがまた来た。
ここ最近、俺はこいつに絡まれている。朝の登校中も、教室移動の時も、休み時間の時も。
そのうちあきるだろうと思って、てきとうにあしらっていたのだが、奴は今日という今日も、あきもせず、絡みに来る。
「木田くん、一緒にかーえーろ!」
「嫌だ」
「えー、なんでよ。いいじゃん。方向一緒なんだし」
「そういう問題じゃない」
「とかいって、一緒に帰る友達もいないくせにー」
それはない。俺にだって、登下校を共にする友達の一人や二人………………いや、いないか。うん。だからこそ、こいつに絡まれてるんだしな。
黙りこんだ俺を見て、ニヤー、という笑顔を向けてくる。
「……なんだよ」
「ほら。やっぱり、いないんでしょー。だから、私と一緒に帰ってるんだもんね」
フフッ。
実に嬉しそうに笑いやがる。
……だから、少しいじわるをしてみたくなった。
「……あー、実はさ。来週から、従兄弟がこっちに越してくることになったんだ」
「へぇー。今、いくつ?」
「えっと、俺の六つ下だから、九歳だな。小2だ」
「かわいいじゃん」
「そうでもねぇよ。……それはいいとして、その、それなりにまだ小さい従兄弟を、道を覚えるまでは、ちゃんと学校まで送り届けるように親から言われてんだよ」
「へ、へぇー」
ちなみに、俺が通ってる学校は、小、中、高まで同じ学校の敷地のなかに入ってるから、兄弟で仲良く登校なんていうのは、珍しくない。まぁ、あくまで、仲の良い兄弟に限っての話だが。
「…………じゃあ、来週からは、登下校は別にするね」
おや。急におとなしくなった。
「俺はそれでいいんだけどさ……おまえはそれでいいのか」
「え?……どういう意味?」
「……別に従兄弟は人見知りなわけでもないし、男二人で登校よりも、お姉ちゃんが一人くらいはいた方がいいと……思うんだが」
言い終わった途端、奴の顔が輝きだす。
「なにー?木田くん、私にそっけなかったくせに、一緒にいさせてくれるんだー。へぇー。じゃあ、これからも遠慮なく絡みにいくから、よろしくねー」
あ、絡んでるという自覚はあったのか。
では、ここらでネタばらしといきますか。
「盛り上がってるところ、悪いのですが、今の従兄弟の話は、すべて嘘です。なので、おとなしく諦めて、今後、俺に絡むのはやめてください」
一瞬の間。
「はぁ?え?なにそれ……どこから……」
「最初から。俺に年上の従兄弟はいても、年下の従兄弟はいない」
「……私の感動は?」
「知るか、んなもん」
「えーーーーーー!」
ああ、今日もうるさいやつだ。
でも、まぁ、こんな、にぎやかなのも嫌いじゃない。
「『君はそれでいいのかい?』って言う短いお話」というお題で、台詞は少しいじって書きました。
今まで、縦書きのワープロ→携帯で推敲もかねて打つ→投稿、だったのを、前回からは、縦書きのワープロ→横書きのワープロ→携帯で打つ、にしました。
これで少しでも見やすくなれば嬉しいです。