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新情報が深刻過ぎます。

 夕食を終え私に与えられた部屋に集まった一同は、エミュさんに印をつけて貰った地図を囲んでいた。


「えっと、一応目的地はここなんだけどね、細かい場所までは分からないの」


「ふむ。また随分と古い地図じゃなぁ」


 赤いインクでつけられた印を指しながら言った私に、暫く地図を眺めていたサーシャリアが不思議そうに首を傾げた。


「そなた等の探している者達は何者かに謀られたのか?」


「え? それってどういうこと?」


「ここは、三方を山に囲まれた山間となっておる。戦においては土地勘のない敵を追い込んで一掃するのに適した場所というわけじゃな」


「待て、俺の知る限りではここは山地ではなかったか?」


「いつの時代の事を言っておる、元魔王よ。情報が古いのぅ。確かにここは山地だったんじゃが、五十年程前に起きた天変地異で殆どの山が崩れ去ったのじゃ。今は山々が崩れ去り更地となった場所を囲む様に三つの山が残っているだけじゃ」


 サーシャリアが印がつけられた付近に幾つもあった山のマークに次々にバ(バツ)印をつけていく。残ったのは三つの山のみ。


「……霊峰シーヴィルも崩れたのか?」


 ジッと残された山のマークを見ていたアーフが難しい顔をしてそう訊ねた。

 そんなアーフの問いに頷いたサーシャリアが✕印をつけた山の一つを丸で囲む。


「そうじゃな。崩れた……というよりは、霊峰シーヴィルが最初に崩れ、それが発端となって変異が起きたのじゃ」


「シーヴィルが最初……」


 それっきり何やら考え込んでしまったアーフは放置する事にしたらしいサーシャリアが話を元に戻した。


「さっきも言ったが、探し人達は謀られた可能性が高い」


「……そんな。だけど、レイ様の"遠視"の能力で敵の位置とか安全性を視ながら進んでたって……」


「ならば直のこと、何者かに謀られたのじゃろうよ」


「え?」


「敵は、そなた等の探し人達をこの場所に誘導する為に動いたのじゃろう。そして、そう動く事が可能であったと言うことは、探し人達の動向を敵に知らせる密告者がおったという事じゃ。そもそも何故、人間が魔族の地に進んで入って行ったのじゃ?」


「魔王を討つ為だよ」


「魔王? 魔王の座は今は空席じゃぞ?」


「は?」


「前魔王が何処かへ姿を消してから、約数十年は空席のままじゃ。本来"魔王"は世襲性ではなく、前魔王が指名して次の魔王を決めるものじゃからな。それが行われずに現魔王が姿を消したせいで、有力候補の二人を筆頭に国内は今、二つの勢力で別れておるのじゃ」


「二つの勢力?」


「一人目は、代々優秀な軍人を輩出している家の長子で、今の軍部総司令を任されているフーロン・アモウ。もう一人は、アモウ家とは対照的に、魔王の執務の補佐や財務、法を取り仕切ったりする文官を多く輩出している家門の出で、今の宰相を任されているジークウェン・ハインドール。フーロンの方は軍からの支持が強く、ジークウェンは貴族達が推しているんだ」


 何の躊躇もなく魔族側の内情を語るサーシャリアとシルビアンに顔がひきつる。


「え……それ、私達に話していいことなの?」


「まぁ、他の魔族ならば同族に不利に働く様な情報は絶対に口外しないじゃろうが、妾達吸血族は誓約を結んだ相手を絶対とする性質がある。魔王か誓約相手かと問われれば迷うことなく誓約相手をとるな」


「そう……」


 何やらどんどんと後戻りの出来ない状況に陥ってしまっている気がする、と私は内心で思いっきり嘆いた。

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