合流しました。
「そもそも魔族というのは長寿なのじゃ。個々によりその寿命は違ってくるが、長い者だと1000年生きる物も居る程じゃ。そこの元魔王も、姿こそ若いが700年は生きているジジィだぞ」
「アーフさんがジジィ……」
サーシャリアの言葉にウィルサスがチラリとアーフを伺い見る。
「まぁ、そうだな。魔族は魔力の量でだいたいの寿命が決まる。そして、寿命に合わせて外見の変化も緩やかになるんだ。俺の場合はここ500年程は外見の変化はないな」
「へぇ。魔物についてもそうだけれど、君たち魔族についても僕達は知らない事だらけだね」
「知らないのならば今から知ればいいだけの話しじゃろう?」
呟く様にして吐き出されたウィルサスの言葉にサーシャリアが首を傾げる。そんな少女の姿にウィルサスは小さく笑って頷いた。
そうして会話を続けていたウィルサス様達の元に結界を張り終えた私が戻って来たのはそれから少しだけ後の事だった。
「すみません、お待たせしました」
「いや、それほど待ってはいないよ。それより、結界はちゃんと張れたかい?」
「はい」
「そう、分かった。それじゃあ行こうか」
ウィルサス様の言葉に頷いてサーシャリアとシルビアンを牢から出して灯りを持ったウィルサス様の後に続いた。
そして地下から出たその直後、とても重量感のある衝撃が私を襲った。
「うわぁ!? って、ラピス! ルビーにジェット、アメジストとベリル、ニギも! 皆早かったね」
わらわらと私に群がるフォレストウルフ五匹と頭が二つある大きな烏。その光景にアーフを除く三人は驚きに目を見開いている。
「あの子達がリオさんに従属している魔物達かい?」
「ああ、そうだ」
「人間が魔物を従属させておるのか? しかし、あの魔物……」
「一匹、気配が変なの居るね」
シルビアンがスッと目を細めて警戒の色を滲ませた。
その視線の先に居るのはラピスの背に止まっているニギだ。
「ああ、あの烏だろう? アイツは俺にも種族が分からない。妙な気配はするが、リオに危害を加える感じでもなかったからな、放っておいた。俺は光属性の魔法はあまり得意ではないからな」
「解呪の魔法じゃな。妾達ならば出来るぞ。やってみるか?」
「リオが許可したらやってみればいい。アイツが何であれ、今はリオに従属しているただの魔物だからな」
「そうじゃな。先ずは契約について話すとするか。そちらの方が妾達にとっても楽でいい」
「色々と気になる事柄が増えていくね。まぁいいや、取り敢えず腰を落ち着けよう」
ラピス達が満足するまで一通り戯れてから、向かったのは最初に私達がウィルサス様と対面を果たした部屋だった。
「さて、先ずは血の契約について詳しく教えて貰えるかな?」
真ん中に私が座り、その左右にアーフとウィルサス様。対面にサーシャリアとシルビアンが座った応接用のソファーで、話を切り出したのはウィルサス様だった。
「あぁ。妾達吸血族は生涯に一人とだけ、血の契約を交わす事ができるのじゃ。契約を交わせば、その者以外の血は受け付けなくなる。だが、その代わりに契約者の血であれば少量であっても充分な栄養となるのじゃ」
「少しの量で栄養補給も出来るし、魔力の回復も出来る。受ける影響が大きいから、摂取する間隔を数日空けても大丈夫」
「その代わり、契約者が死ねば妾達も死ぬ。契約を交わした瞬間から運命共同体となるのじゃ。まぁ、契約者は妾達が死んでも死なぬがな」
ふーん、と頷いたウィルサス様が用意された紅茶を一口飲み、それで?と首を傾げる。
「契約者の方には何か利点はあるのかな?」
「契約者は吸血された後数時間だけじゃが身体能力が向上する。後は自己治癒能力が高くなるな。切り傷程度なら一瞬で治る様になるのじゃ」
「あとは、契約者を死なせない為に契約を交わした吸血族の者があらゆるものから全力で守るから、だいたいの契約者はとても長生きだね」
その説明に頷いたウィルサス様にがスッと目を細めて二人を見た。
「なるほど、だいたい分かったよ。それで、サーシャリアさんはリオさんと血の契約を交わしたい、と」
「妾だけではない。妾と双子のシルビアンは双子故に契約者も同一である必要があるのじゃ。リオには妾達二人と契約を交わして貰う事になる」
「二人とって事は、単純にリオさんの負担が二倍になるだけじゃないのかい? それとも、身体能力や治癒能力も二倍に?」
「身体能力の向上時間は伸びるじゃろうな。だが、それ以上は分からぬ。なにぶん、双子の吸血族など妾達以外に会った事がないのでな」
当事者抜きで進められる話しに私はのんびりと紅茶の飲んで、足元に座るラピスを撫でる。
自分に与えられる利点と、相手に与える利点は分かった。聞く限りだと自分の不利益になりそうな事はないだろう事も分かった。
話の進行をウィルサス様が買って出てくれたお陰で、ゆっくり考える事もできた。
今の私に必要なのは、力と味方だ。その両方が手に入るなら、二人の吸血族に定期的に血をあげるなど些細な事だった。
 




