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精霊視えました。

 私に、一応きちんと謝ってくれた白いローブの人は名前を"レイファラス・カーハンナー"と言うそうだ。

 そんな彼はこの国の"上位魔法師"だそうだ。

 "上位魔法師"だ、そうだ。

 大切な事だから2回言わせて貰った。


 魔法師の人が着ている白いローブに施された刺繍の色が金色なのが"上位魔法師"。

 この国の魔法師の中でも2人しか居ない魔法の才能が天才的な人達で、魔法についてのみなら国王にすら意見出来る程の地位なのだと。

 つまり、レイファラス様はお偉いさんと言う事である。

 上位魔法師の次が刺繍の色が銀色の中位魔法師。

 そして魔法師の中で一番地位の低い、刺繍の色が黒色の下位魔法師。

 地位が低いとは言ったが、王宮遣えの"魔法師"になれるだけでこの国の人達にとっては憧れの的だそうだ。


 さて、今私が居るのは玉座があった建物から少し離れた別館。

 魔法師の人達の仕事場である"魔法離宮"と呼ばれる所の一室、レイファラス様の執務室である。

 ここで少し待っていろと言われて早一時間。


 暇で暇で仕方ないので、この世界に来た時からずっと気になっていたモノ達に声をかけてみる事にした。


「ねぇ、アナタ達は妖精か何か?」


 別に、そこに人が居る訳ではない。

 てか、人に向かって"妖精"かなどとは問わない。

 私が話しかけたのは、この世界に来てからずっと視界に嫌でも入り込む、人の形をしてその背に羽を生やす小さなモノ達。

 赤・青・黄・緑・紫・黒・白の七色それぞれの服と髪色をしたそれらがずっと視界に入ってきていたのだ。

 他の人が気にする様子もないので特に今まで聞きもしなかったが、やっぱり気になる。


 目の前で戯れてた2匹?2人?に声をかければ、驚いた様子で一瞬動きを止め、次いで瞬きしてる間に本棚の影に隠れてしまった。


 あらま。


「おーい、あのぉ、何もしないから出てきてくれる?」


 本棚の後ろからひょっこりと顔を出したのは赤い服と髪を持つ2人。


「どうも。私は秋月李緒……と、こっちの世界だと"リオ・アキヅキ"かな? よろしく」


 自己紹介した私に2人は顔を見合わせてからパタパタと寄って来てくれた。


「君達は一体何なの? ……って、ちょ、なに?」


 私の質問には答えず、2人は興味深そうにペタペタと体を触ってくる。


 暫くそのまま好きにさせていれば、いつの間にかその人数が増えていた。

 赤色の2人の他に緑色が3人。

 更に黄色と青色が1人ずつ。


 ペタペタペタペタペタペタペタペタ…………


「あぁ、もう!! 何さ!?」


「自分達の事が視える人間が珍しいんだ」


 いい加減煩わしくなってきて叫んだ所でレイファラス様が部屋に帰って来た。


 てか、


「視える人間が珍しいって……?」


「視えてるんだろ? コイツ等が」


 自分に寄って来た青色をツン、とつついて聞いてきたので頷けば、やっぱりなと頷かれる。


「え、てか彼等は皆視えてるモノじゃないんですか? だから特に触れなかったんじゃないんですか?」


「視えてないから触れようもないんだよ。私が知る限りで、コイツ等が視えるのはお前が2人目だ。1人目は私だがな」


「……あ、あの、レイファラス様、彼等は一体何なのですか?」


「………」


 一番の疑問を聞いてみたのに、何故かレイファラス様は眉間に皺を寄せて黙り込んでしまった。


「あの?」


「……何故敬語を使ってる? さっきの話し方が自然のモノだろう」


「え? いや、だってレイファラス様はお偉いさんなんですよね?」


「だから何だ?」


「いや、何だって……」


「王に対して暴言を吐こうとした姿を見ているんだ。今更改まって敬語なんか使われるとかえって気持ち悪い」


「気持ち悪いって……」


 随分な言われようだ。

 けれどまぁ、普通の話し方でいいと言うならその方が楽なのでそうしよう。


「えっと、じゃあお言葉に甘えて普通に話すけど、彼等は何なの?」


「"精霊"だ」


「"精霊"?」


「あぁ。……"魔法"とは、人がその内に持ちうる"魔力"を体外へ"事象"として発現させる事であり、それを行うには使用者の魔力及び想像力が必要不可欠となる。それ故に魔法を想像しやすくする為に"詠唱"が使われる事が多くあり、それを行う事でより具体的な魔法を想像出来る為、魔法を発現させるまでにかかる魔力の消費を押さえられる。というのがこの世界の"魔法"に対する見解だ」


「……はぁ」


「だが、実際は違う。私達が使う"魔法"とは、自身の内にある"魔力"を"精霊"に対価として支払う事で彼等の力を借りて自身の望んだ"事象"を発現させるモノだ」


「ん? ん? ん? えっと……つまり……?」


「つまり、私が今此処で掌に火球があると想像しよう。だが、私がいくら想像して掌に魔力を集めたとしても、(おごそ)かに詠唱を唱えたとしても、火球は決して現れない。そこでだ、火属性の精霊に私の魔力を渡して、同じように火球を想像する。すると、」


 レイファラス様の周りに赤色の精霊2人が寄って行き、その小さな手を彼の掌に向ける。

 すると、ボッ!と音を立ててレイファラス様の掌に火球が現れた。

 その一連の流れの間、赤色の精霊2人はほんのりと輝いていた。

 それがレイファラス様の言う"魔力"だろうか?


「分かったか? まぁ、精霊は普通の人間が自分達の姿が見えないという事を知っているからな、どんな魔法を想像しているかは分かる様だから、後は適当に魔力を貰ってその代わりに魔法を発現させているみたいだ」


「成る程。つまり、この世界の魔法は精霊無くして成り立たないって事? だけどその事実を知っている人は殆ど居ないと……」


「殆どというよりは、私とお前だけしか知らないな」


「皆にこの事を話したりは?」


「したさ。上位魔法師になって真っ先にな。けれど誰も信じなかった。変わりに私には"変わり者"のレッテルが貼られて今に至る」


「信じなかったって、何で?」


「目に視えない"精霊"などというモノよりも、自分達の力で全てを行っているという方が信じるに足るそうだ」


「成る程。で? 以前そうやって全面的に否定された事を何で私には話したの?」


「お前はコイツ等が視えているだろ?」


「それだけ?」


 聞いた私にレイファラス様はニッコリと笑った。

 悪い……というよりは、心底楽しそうな悪巧みを考えついた笑みだ。


「私とお前で、私達を否定した者達に一泡吹かせてみないか?」


 その容姿に似合わず、レイファラス様は意外と悪どい様だ。


「"精霊"がどうこう以前に、元より"変わり者"なんだねレイファラス様」


「"レイ"でいい」


「なら私の事も"リオ"で。よろしく、レイ様」


「様も要らないのだがな。まぁいい。よろしく頼む、リオ。お前がこの城に滞在できる期間は20日間。その間でみっちりこの世界の事と魔法について教えてやる」


「滞在期間20日って……てか、一泡吹かせるって具体的には?」


「ふむ、考えてはいないな。だが、そうだな、取り敢えず君に力をつけるのが先だ。君を"平均的"だと笑った者達を驚愕させるくらいには強くなって貰おう」


「りょーかい!」


 こうして私は心強い同士を手に入れたのだった。

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