絶望
何もいらない。
誰もいらない。
なんで皆いなくなるの?卑怯だよ!
だったら私を産まないで生きさせないで。
殺してよ、私に価値なんてない。ただのゴミなの。
そんな事、何度思っただろう。
鼻に纏わりつく線香の香りに嫌悪感を露わにしながら、私は遺影を睨みつける。
外からは降りしきる雨と遠雷の音がした。
たった1人、私を大切に育ててくれた祖母。
私だけの理解者だった祖母が、死んだ。
末期のガンだった。
最近知った。最後の最後まで祖母は私にだけ死期が近いことを知らせなかった。
「ついに、母さんも亡くなってしまったか・・・」
「これからどうするのよ。」
「どうするって・・・」
「馬鹿ね、あの子の事よ。」
私は否が応でもその話し声に反応し、耳をすました。
背後でコソコソと囁く声は不思議と周りの音を消し去り、まるでその人達しか話していないような空間にする。
本当は聞きたくはない。この場所からいなくなりたい。けれど、体は地面に縫い付けられたように動かなくなる。
「本当、お母様も厄介者を置いて逝ったわね。はぁ、あんな子を受け取るなんて私は絶対嫌よ、愛想悪いし気持ち悪いわ」
「お、おい・・やめないか」
「そう思うならちゃんとしっかりしてよ、貴方が頼りなんだからね」
フンと鼻を鳴らした音をきっかけに、ピタリとその話し声が止んだ。
呪縛から解放されるように、私の体はフラフラとなりながら立ち上がり力のない足で歩き始めたのだった。