14 小話 鈴木君と瀬戸さん
鈴木君視点による瀬戸さんとの小話。
*Profil(注*中等科新3年生4月記録)
名前:瀬戸 唯子 歳:14
誕生日:9月10日(乙女座) B型
身長:154cm 体型:細身
属性:無 能力:召喚魔法
体力:★★★★☆☆☆☆☆☆
速さ:★★★★★☆☆☆☆☆
賢さ:★★★★★★★★☆☆
魔力:★★★★★★★★★☆
総合評価:A
注意事項*非常に珍しい召喚魔法の使い手。暴発の危険性大につき要注意。
中等科の卒業式を迎えた。
こんな日は過去を振り返りたく……え、今回はいい?
僕一応、中等科三年間またしても花森さんとずっと同じクラスだったんだけど。
まあ、今回はチームや個人で活動する授業が多くて花森さんと同行する機会がなかったし、特に回想する場面もなかったかな。七瀬君が変態だったとか、僕は脚フェチじゃないとか、錬成してできた武器が壺だったとか、できた武器を発表する席で僕だけ飛ばされたとか、密かにティッシュを設置していたのは僕だったとか、そういうのもどうでもいいか。
今回もうろ覚えの蛍の光を口パクで歌って、卒業式を終えた。
「うおぉぉーーみんな俺の事忘れないでくれよっ!」
「千葉ぁっ、またお前はそうやって俺らを泣かせる!」
涙の男円陣。
――――――だからお前ら、高等科に上がっても同じメンツだって…………。
「うっとうしい奴らね」
男臭い円陣に女子が苦言を吐いた。
栗色のウェイブがかかった髪の可愛らしい子だった。確か瀬戸 唯子。
一年の時に同じクラスだった。七瀬君ハーレムの一人でなおかつ中心的人物だったはずだ。魔法使いとしてのランクもAで非常に珍しい召喚魔法の使い手。
その容姿からとてもモテるが僕はあまり彼女が好きじゃない。我がままで高飛車で、甘ったれなお嬢様。それが僕の抱く瀬戸 唯子像だ。
七瀬君に美脚だということで絡まれた花森さんを嫌っていたと記憶している。
けれど一度だけ僕は彼女について見直したことがあった。
あれは一年の秋頃。花森さんが魔物討伐実習で怪我をして入院していた時のことだ。放課後、僕が教室に一人で残っていると瀬戸さんがやって来た。辺りをキョロキョロ見回して、周囲を確認してから花森さんの机に近づく。
えっと、僕いるんだけどもしかして気づいてないのかな……。
彼女は素早い動きで自分の鞄から何かを取り出し花森さんの机の中に突っ込んだ。そしてそのまま走り去る。
僕は気になったので、悪いけど花森さんの机を確認させてもらった。
……ノートだった。綺麗な字で要点を丁寧にまとめた授業のノート。花森さんが入院している間の授業内容を花森さん用にこまめにとっておいたようだ。
彼女は見た目に寄らず几帳面な所もあるし、普段の言動からはあまり感じられないが頭も良い。僕も欲しいくらいのノートだった。
本人に堂々と渡せばいいのにコソコソするなんて瀬戸さんらしいな。
後にノートを受け取った花森さんは、先生がくれたものだと勘違いしていたようだ。
うわー、言っちゃいたいなぁ。それ、瀬戸さんが書いたんだよーってすごく言いたかった。絶対瀬戸さん顔を真っ赤にして怒るだろう。
そんなことを思い返していたら、瀬戸さんが何かを落とした。気づかずに行ってしまいそうだったので僕は慌てて拾って(何かの鍵だった)追いかけた。
「瀬戸さん、落し物!」
「え?」
追いついて声をかければ瀬戸さんは訝しげな顔をする。
一回同じクラスになっただけじゃ、覚えないか。五年一緒の腐れ縁みたいになってるはずの花森さんも僕のこと一向に覚えないしな。
僕が鍵を差し出すと、瀬戸さんは慌てて自分のポケットを確認した。ないと気づいて僕から鍵を受け取る。
「ありがとう、机の鍵が開かなくなるところだったわ……えっと、どこかで会ったかしら、私生徒の顔と名前覚えるの得意なはずなのに」
「一応、中等科一年の時、同じクラスだったよ。鈴木 太郎」
「あ、そうそう確かそんな地味な名前」
地味って言うな。
彼女は颯爽とスカートを翻して体育館を後にした。僕も気を取り直して寮への帰路へ着く。
――――――僕と瀬戸さんのちょっとした小話でした。




