一匹狼と家庭科
【シズク視点】
────家庭科の授業にて
「はいはーい、ちゅうもーく!!今日の家庭科は…………ドキドキ☆調理実習でーす!」
は………?いきなり家庭科の教師がハイテンションで入って来たかと思えば、いきなりそんなことを言いやがった。
「でも、実習するのは女子だけでーす!男子は教室でノートまとめて待っててね☆」
家庭科教師のその発言で教室内がざわついた。
なるほど…だからドキドキってワケか…。
そこで俺は左隣、ユウの席に目を向けた。
ユウはいかにも、ダルい。という顔をしながら家庭科教師を見ていた。
「ふっ……、頑張れよ」
俺は少し笑いながらユウに言った。
「これはやっぱり、作ったものを男子にあげる的なアレなのか…」
苦々しい顔でユウはそう呟いた。
それからユウは、しぶしぶ、という言葉を体現したかのように実習室へ向かった。
─────教室(男子オンリー)
当然、男だけでノートまとめなどするわけもなく、早々に騒ぎだした。
とは言っても、話の内容は女子についてだ。
………興味ないな…。そう思った俺は机に突っ伏し、寝ようとした。
が、直後に聞こえてきた言葉で、それは叶わなかった。
「ユウちゃんから貰えないかなぁー…」
そう言ったのは、クラスでも結構女子に人気のある奴だった。
「ユウちゃんってさ、可愛くない?クールだけど、二人きりの時に見せるギャップとか良いと思うんだよな!ギャップ萌えってやつ?」
奴は、女子に爽やかだの格好いいだのと騒がれているその笑顔で、そんなことを言った。
それを皮切りに、奴の周りの奴等も、ユウのことを話だした。
「それ超分かる!二人きりの時ってどんな顔するんだろーな!!」
「手繋いだら、顔真っ赤だったりして!やば、普通に可愛いじゃん」
「俺、告ってみよっかな」
黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって…
だが、次に聞こえてきた言葉で、そんな考えも全部消え去った。
───「ああいうヤツは、意外と簡単にヤらせてくれるかもよ」
髪を茶髪に染めた、ヤンキーもどきのような奴がそんなことをぬかしやがった。
ガタンッッ!!!
勢いよく立ち上がったため、イスが倒れ、派手な音を立てた。
シズクは茶髪の彼に向かい、ゆらり、と歩き出した。
茶髪の彼は、いきなりのシズクの行動と、いつもとは明らかに違う雰囲気に少し気圧されていた。
「ど、どうしたんだよシズク!!」
ソイツは焦ったようにシズクに問いかける。
……………だが、そんなことを聞いてやれるほど、今のシズクには余裕がなかった。
「ユウはな、テメェみてぇに簡単にヤったりするようなヤツじゃねぇンだよ!!!………んなこと冗談でも言うんじゃねぇ。」
俺はそう吐き捨て、奴の机を蹴り倒し、教室から出ていった。
─────屋上
胸糞わりぃ……
俺はコンクリートの床に寝転び、流れる雲を、ただひたすらに見つめていた。
……ガチャッ
──突然、屋上の扉が開いた。
機嫌が悪く、でもここに来たのが誰か分かっていたので、俺は顔だけを扉に向けた。
「教室にいないから、ここにいると思った」
ユウはそう言いながら、俺が寝ている横に座った。
「教室にいた奴になんか言われたりしたか?」
「いや、なにも。……何かあったのか?」
ユウは不思議そうに首をかしげている。
そんなユウを見たら、自然とさっきまでの怒りが消えていった。
「ほら、これ。」
ユウは、透明な包装紙に包まれたクッキーを俺の腹の上あたりにおいた。
「さっき実習室で作った。嫌なら返してくれていい。」
ユウは俺が寝ている方とは反対の方を向いて、早口にそう言った。
「嫌なワケねぇだろ。……ありがとな。」
自分でも驚くくらいに、穏やかな声で礼を言った。
「!!」
言った直後、ユウは真っ赤になった。
といっても反対を向いているから顔は見えねぇが、耳まで赤くなっていたので俺にも分かった。
さっき教室で話してた奴等の気持ち、分からなくもねぇ…かも、
今、……どうしょうもないくらい、コイツが愛しく感じるんだから。
相棒見ながら書いたら意味分かんなくなった_(:3」∠)_
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