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プロローグ
「お願いだ、死にたくない!!」
悲痛な叫び声が夜の屋上に響き渡る。安全のために設置されているフェンスの奥で少女が泣き喚いている。少女は今にも落ちてしまいそうな体勢だった。まるで、自分から落ちて行こうとするような体勢でもあった。
フェンスの手前では黒い影がニヤリと冷たく、不気味に笑っている。そして一つ小さく呟いた。
「4get」
呟き終わるとほぼ同時に少女の身体は屋上からなくなっていた。地面の方から鈍い音でもしたのだろうが、屋上にその音が届くことはなかった。
黒い影はそれを確認しようとはせずに屋上を後にする。
やがて屋上から誰もいなくなると同時に、喚くような叫び声や悲痛な叫び声の数々が地面の方から聞こえた。その叫び声にサイレンの音も混じりこの夜に静寂が訪れることはなかった―…。