謝りたい ~不幸なんかじゃなかったんだ~
俺は不幸だった
学校で暢気に笑っている奴が恨めしくて
楽しそうにしている奴を見ると、どうしようもなく腹が立った
俺だけが不幸で
周りの奴らは幸せで
ずっと悔しかった
俺の家族はお偉い人ばかりで
将来は決まってて
俺にはなんの選択肢も無かった
他人の奴らはいつも鬱陶しく言ってきた
「お前は将来困らなくていいよな」
「学校来なくてもいいんじゃねーの?」
許せなかった
あいつらは俺の苦しみを知らない
それでいてしゃあしゃあと俺に文句を言ってくる奴らが
どうしようもなく嫌いだった
そんな時にあいつに出会った
あいつはいつも笑ってて
友達もいて、笑顔ばっかで
それが羨ましくて、それと同時に幸せに暮らしてるあいつが嫌いで
でも、あいつは幸せなだけじゃなかった
あいつは世界が見えなかったんだ
目の前には闇しかなくて
でもあいつは笑っていた
俺はあいつより
全然楽な毎日を送ってた
だけど、俺は卑屈になって
あいつを傷つけてた
あいつは目が見えなかったけど
必死に笑ってた
俺は謝りたい
あの日あいつに言った言葉を取り消したい
「お前に何が分かるんだよ。俺は誰よりも不幸なんだよ」
俺の言葉を聞いて、あいつは悲しそうに
「君は“見る”ことができるじゃないか」
そう言っていた