#3
あらすじを先に読まないとわけがわからない仕様になっております。
ご了承ください。
拙い表現力のために何もかも伝わらない可能性があります。
ご了承ください。
そのうえでご意見・ご感想、ご評価などいただけたら幸いです。
「ていうか、奴らはなにがしたいんでしょうね」
しゃく、とポテチを頬張りながら遠江が言った。
「日本なんて、宗教とかあって無いようなもんじゃないですか。首相だってそこまで国民に嫌われてませんし。よその国じゃなにかしら理由があって暴動とかテロとか起きてるのに、日本人って特に理由無くないですか?」
「わたしはそれが理由だと考えているよ」
モニターの向こうからの間延びした遠江の声に、岸谷が答えた。
「『理由なんて無い』。きっと十人に訊けば十人とも、だいたいそう答えるだろうね」
「それってひどくないですか?あたしたちが毎日命懸けで戦ってるのに」
「岸谷さん身も蓋も無いこと若い人に教えないでください」
黒沢が書類から目も上げずに言った。
「わたしだってまだ若いじゃないか」
「ヘリクツ禁止って言いましたよね」
岸谷は小さくせきばらいして場を逃れた。
「いや、ほんとうに、間違ってはないと思うんだよ。大げさに言えば流行にのっただけとも言える。世界のテロという流行にね」
「インフルエンザみたいに?」
いかにも遠江らしい比喩に、岸谷はにこりと笑った。
「確かに。病気が流行っていると言った方が正しいかもしれないな。人を殺人鬼にさせるウイルス……昔のゲームにそんなものがあったよ」
「なんか気持ち悪いですね」
ああ、と岸谷は頷いた。
「まあ今のところ、病院みたいな公共施設は襲われてないからね。まだ深刻な状況にまでは至っていない、と考えるのが妥当だろう」
「今が深刻じゃないならなんなんですか?日本からヒトいなくなっちゃいますよ?」
「それを防ぎ阻止するために、我々がいるんじゃないか」
穏やかに言う岸谷。ふうん、と遠江はポテチを頬張った。
◇●◇
Oreilg本部の和やかなオフィスとはうって変わって、こちらは中里中学校。
1年3組18番の紫野崎は最近いらいらしていた。
原因は、今からちょうど一週間前になぜか転校してきた相模勝である。
なんの告知もされていなかった紫野崎はその朝、制服姿の相模と玄関で鉢合わせした。驚いたのは言うまでもない。しかし『ミッション以外で街で会っても知らぬ存ぜずな態度でいろ』と相模に言われた手前声をかけるわけにもいかず、結局あんぐりと口をあけた紫野崎を尻目に、相模は下駄箱で靴を履きかえ、漂々とした様子で職員室に入っていってしまった。
それだけでは終わらなかった。
紫野崎がクラスの給食当番の仕事で食器を運んでいる途中のこと。あろうことか男子生徒にすごい勢いでぶつかられて食器をぶちまけてしまった。
倒れた紫野崎と食器の割れるけたたましい音で静まりかえる中、一人の男子生徒に手を差しのべられた。大丈夫ですか、の声にあ、はいなどとしどろもどろに答えながら顔を上げた紫野崎は、そのままかたまってしまった。
「すいません僕の不注意で……食器片付けるの手伝います。怪我はないですか?」
とか言いながら文字通り天使の微笑みで紫野崎を見つめる男子生徒が。
なぜか相模勝、だったからである。
それからというもの、「紫野崎さんに迷惑をかけてしまった。本当に申し訳ない」などと、紫野崎からすれば戯言としか思えないようなセリフを野次馬の前でさんざんほざかれ、あげくに廊下で会うたびに挨拶までされるようになった。しかも紫野崎が一日に相模と遭遇する確率がまたとんでもないくらいの確率で、一体どう待ち伏せたらこうも顔を合わせられるのかと紫野崎が不審に思うほどである。
付け加えると、倒れた紫野崎を助け起こした相模の立ち振るまいがなかなか優雅だったらしく、その場にいた女子の口からウワサが広がり全校の女子の間で人気急上昇中だ。
そんなこともあり、紫野崎はなぜこの学校にやってきたのかと相模にまだ訊けずにいた。
「おはよう紫野崎さん」
いい加減にもう会いたくなかったので二日ほど前から教室に引きこもる戦法に変えたのだが、当の本人がまわりの視線などどこ吹く風でやって来るのでクラス中のいいさらし者だった。上級生が1年教室にいるという状況は稀で(相模は3年生らしい)最初は好奇の目でさんざん見られていたが、今日までになると皆さほど興味を示さなくなった。慣れたと言った方が正しいのかもしれない。
「……おはようございます」
「今日も血圧低そうだねー」
なんて言いながら勝手に紫野崎の正面の席の椅子に座る相模。うんざりして、紫野崎はため息を飲みこむのに必死になった。
「あの……そこまで顔見せに来てもらわなくていいです」
「いやあ、そんなわけにもいかないよ」
にこやかな相模にぐったりして紫野崎は机に突っ伏した。この人に正論は通じるんだろうか、とかわけのわからないことを考える自分にさらにぐったりとなった。
「……こないでください」
「いやあ、そんなわけにはいかないよ」
「……」
わけがわからない。そもそもどうして声をかけてきたのか。
「さが……先、輩は、なんで転校してきたんですか?」
「ちょっと理由があってね」
「……」
こんなやりとりを何回繰り返しただろうか。相模はよくも飽きないものだ。……そこまで考えて、紫野崎は違和感を覚えた。
相模が飽きない事象などこの世にあるのだろうか?と。
まさか、と思う。
相模は。なにか目的があってこのくだらない行為を続けているというのか。
相模が相模の思惑で動いているのなら、相模から口を割るまでは訊くべきではないのかもしれない。紫野崎にとってそれは不本意なことではあったが、この男、なんの目論見も下心もなく動くとは思えない。
「……じゃあ、待ちます」
おもむろに口をひらき、ゆっくりと言った紫野崎の言葉に、相模の顔は真顔に戻った。
「先輩が話してもいいって思ったときに、話してください。それまでは訊きません。……話してくれるまで、待ってますから」
いろいろと場面が飛んで理解しにくい箇所がありますが、力量の程と思ってください。
少しずつですが頑張って載せていくのでよろしくお願いいたします。
ご意見などよろしくお願いいたします。