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Oreilg  作者: 篠崎
1/18

#1

あらすじを先に読まないとわけがわからない仕様になっております。

ご了承ください。

拙い文章のせいでまったく何もかも伝わらない可能性があります。

ご了承ください。

そのうえでご意見・ご感想、ご評価などいただけたら幸いです。

「おっ。手袋貰えたの?」

 無機質で飾り気のない廊下で。背後から聞こえた声にどきりとした。

 ゆっくりと振り返ると、私より長身な彼―――相模勝さがみまさるが、にいっと笑って私を見ていた。

「今日から晴れて隊員?Oreilgへようこそ、紫野崎さん」

「……どうも」

 軽く頭を下げる私に、ちっちっちっと相模が指を振った。

「だめだなあ紫野崎さん。そんなに元気ないんじゃ、あっという間に殺されちゃうよ?」

 縁起でもないことをと思ったが、口には出さないでおいた。相模の態度は、一見してどこまで真面目にとればいいのか分からなくなる時がある。けれども、と紫野崎は言った。

「……今のは半分本気、ですよね」

 一瞬、相模がきょとんとした顔になる。それでも一般人間とは比べものにならないくらいに素早い立ち直りを見せた。

「なかなかやるじゃん、紫野崎さん」

 なにが、と訊いてもおそらく答えてはくれないだろう。相模はそういう人間なのだ。程なくして相模と紫野崎は並んで廊下を歩き出した。

 黙っていないのが相模という人間である。

「俺なんで紫野崎さんがあのじーさんに選ばれたのか謎だったんだよね」

 前にも聞きました、と言おうとした紫野崎は口を閉じた。隣を歩く相模を見上げる。今のは過去形ではなかったか。

 相模の顔は楽しそうだ。

「でもちょっと分かった気がする。だから頑張りな。死なない程度にさ」

「心配……してもらえるんですか」

 相模の笑顔はもう微動だにしなかった。

「そりゃ皆心配するよ。なんたって組織創立以来の最年少隊員なんだからさ。期待もするし、とにかく気にはなるって。当たり前だろ?」

「そういうもの、なんですか」

「そういうものだよ」

 はあ、と相槌をうつ紫野崎に、やれやれと相模が困った顔をした。

「おいおい……プレッシャーかける気ないけど、人並みには頑張ってくれよ?あんたの様子見てるとこっちが不安になってくる」

「……嘘。嘘、つかないでください」

 ふいにきっぱりと紫野崎が言った。紫野崎は立ち止まり、しかし前を向いたままで言い放った。

「あたしが心配な不安じゃないんじゃないんですか」

 同じく立ち止まった相模の顔を見上げる。相模の顔から笑みは消えていた。

「自分より5歳も年下なのに、プレッシャーなんて感じてないみたいに見えることが不安なんじゃないんですか。あたしが、小学生と変わらないくらいの女子だから、なおさら」

 相模にしてはめずらしく長い、一般人間にしてはかなり短い沈黙が流れる。

 やがて相模は、紫野崎が見たこともないような笑みを浮かべた。

「やっぱり面白い人だね、紫野崎さん」

 これは紛れもなく本心だろうなと紫野崎は思った。

「……褒めことばにしてはもったいないくらいに褒めてませんか?それ」

 どちらかともなく歩き出して紫野崎が言うと、相模は人並みでも滅多に出さないほどの大きなため息をついた。

「なんでそこまで俺の本性ばればれてるわけ?」

 あんた一体なんなんだよ、と天井を仰ぐ相模。どうやら観念した、ということらしい。相模の「キャラが変わる」状態に多少驚きながら、紫野崎は軽く俯いた。

「あたしは普通だと思いますけど。相模さんが分かり易いだけなんじゃないですか?」

「んなわけあるか。あ、ちょっと馬鹿にしただろ」

「してません」

「嘘つけ」

「嘘つきは」

 どっちですか、と言えなかった。たった今紫野崎の頭の中に浮上した可能性、これは果たしてどうなのか。突然言葉を切った紫野崎に、相模はいぶかしげな視線を投げた。

「なんだよ」

「……ひょっとして、ばれてるふりしてるとかじゃないですよね」

「はあ?」

 相模はあからさま顔をしかめてみせた。

「あんた人のウラ読みすぎ。他人にどんだけ疑ってかかってんだよ」

 何気なく放った相模の言葉は、僅かに紫野崎の表情を硬くさせた。めずらしく紫野崎に動揺を与えたらしい。

「……そんなこと、ないです」

 それに気付いた相模はさすが相模である。

「……まあ、今からは、無いよりかはマシかもしれないけどな」

 やはりモギュアールに選ばれただけあるのか、ガキというほどに幼いという事実を相模は時折忘れてしまう。ある意味でそれは恐ろしかった。ましてや些細なことで傷つくことがあるなど相模は考えもしなかった。

 ただ、と相模は隣の紫野崎をのぞき見る。ひどく落ち着いて見えることが不思議でならなかった。これからはほとんど独りの戦いであるというのに。

「そういうあからさまな慰め方されると気持ち悪いです……」

「うるせーよ有り難くもらっとけ」

 紫野崎からすればどれだけこちらの本心を隠してもあからさまだと言われるのかもしれない、と相模は思った。

今後のためにも、お気づきの点があればどうかご意見をよろしくお願いいたします。

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