『風の頁』
とりあえず読んでみてください。
Ⅰ
夢みてゐた
いつからか
呼ばれることを
聲を持ちながらも
それを使ふこともなく──
Ⅱ
沈黙のなかに 身を沈めてゐた
聲を出せば
何かが壊れてしまふやうな
そんな──
気がして
Ⅲ
靴音が 通り過ぎる
だれも 知らぬはずの
わたしの記憶に ふれながら
それは 忘れられた頁の
角をなぞる 風の指先のやうだった
Ⅳ
わたしは
世界の片隅に 置かれた手紙
風が その頁を
そつと めくるたびに
わたしは まだ
讀まれることを 夢みてゐた
Ⅴ
──遠くで 笑ひ聲がした
その聲は──
わたしではない わたし
風のなかへ 消えてゆく
かすかな 呼び聲──
読んでくださった方々、ありがとうございました。




