表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

最弱の俺、最愛の彼女を守るためだけに最強スキルを手に入れた件

作者: RISE

いつも通りの春の日。

 大学のベンチで、俺と美咲は桜を眺めながら他愛もない話をしていた。

「ねえ、蓮」

「ん?」

「……将来も、ちゃんと一緒にいられるよね?」

 少し不安げな顔。

 俺は即答した。

「当たり前だろ。俺は美咲と一生一緒にいる」

 その瞬間。

 ――世界が崩れた。

 轟音。光。

 気づけば石造りの大広間に立っていた。周囲は甲冑姿の兵士や魔法使い、玉座には王。

 そして、美咲の胸元に……光る紋章。

「勇者召喚は成功した。だが……なぜ一般人が混じっている?」

 貴族たちがざわめく。

 そう、俺はただの凡人。運動もダメ、勉強も中途半端。

 勇者なんて肩書きとは無縁だ。

 でも、美咲に勇者の紋章が刻まれてしまった。

「ですが陛下! この娘は虚弱です! 戦場に立てるわけがない!」

「……ならばその力だけ頂き、娘は祭儀に供する」

 ――は?

「ふざけんなッ!」

 気づけば俺は美咲を庇って叫んでいた。

 兵士たちが動き、剣が振り下ろされる。

 その瞬間、俺の中に声が響いた。

《スキル【最愛の守護】が発動しました》

《効果:あなたが“最愛の人”を守るためにのみ、無限の力を行使できる》

 ……なんだそれ。

 でも迷う必要なんてない。

 俺は剣を奪い取り、兵士をまとめて薙ぎ払った。

「な、なんだあの力は! ただの凡人ではないのか!?」

 ざわめく王侯貴族。だが俺は叫ぶ。

「俺は勇者なんかじゃない! でも、美咲を傷つける奴は絶対に許さないッ!」

 そのとき――。

 天井を突き破って、漆黒の巨影が現れた。

 魔王。

「クク……勇者ではなく、ただの人間が立ち向かうか。面白い」

 兵士たちが絶望で膝をつく中、俺は一歩も引かない。

 背後で、美咲が必死に叫んでいたから。

「蓮っ……死なないで!」

 その声だけで十分だった。

「美咲を守るためなら……俺は何度でも立ち上がる!」

 力が溢れる。

 全身が焼けるように熱い。骨が軋む。

 それでも――止まらない。

 俺は魔王の爪を素手で受け止め、その巨体に渾身の拳を叩き込んだ。

 轟音。

 魔王の甲殻が砕け、血が飛び散る。

「バカな……この力……!」

「バカなのはお前だッ! 俺はただ、美咲を守るためだけに強くなったんだ!」

 ――そして、最後の一撃。

 全身全霊の拳が、魔王の胸を貫いた。

 巨体が崩れ落ち、静寂が訪れる。

 誰もが呆然とする中、俺は振り返って美咲を抱きしめた。

「大丈夫だ。もう誰にも、お前を傷つけさせない」

 その瞬間、世界は再び光に包まれる。

 ……気づけば、俺たちは大学のベンチに座っていた。

 桜が舞っている。

「……夢?」

 美咲が戸惑う。

 だが俺の手には、勇者の紋章が刻まれていた。

 そして、あの声が響く。

《物語はここで終わる。だが――愛は続いていく》

 俺は笑った。

 彼女を守るためなら、何度でも戦う。

 それが俺の、唯一にして最強の力だから。

――完――

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ