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宇宙猫は今日も宇宙(そら)に向かってアンテナを伸ばす  作者: 深川我無@書籍発売中
脳味噌chuchu〝INVASION〟

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98/102

File98 セピアと放送室②

「あれって……不審者だよね……?」

 

 一人が囁いた言葉で放送室内の空気が凍り付いた。

 

「こっち見てたよね……? なんか言ってたし……」

 

 迷う間にも時間は過ぎ、とうとう曲は最後のワンフレーズに差し掛かった。

 

 奈津子はマイクを睨み唇を引き締めると、放送席の椅子に座る。

 

「なっちゃん……⁉ やばいよ逃げようよ……⁉」

 

「うちらは放送部でここは放送室……ヤバい人が来たってみんなに知らせないと……二人は先生のところに……」

 

 そう言って奈津子はマイクを握りしめた。

 

 曲が終わりマイクがONになるや、奈津子は手元の鉄琴(ディナーチャイム)を鳴らし、出来るだけ冷静な声を出す。

 

 ピンポンパンポーン……

 

『連絡します。西玄関口より田中様から大きな荷物が届いています。大きな荷物が届いています。男性教員は速やかに荷物の受け取りをお願いします。繰り返します。西玄関口より田中様から大きな荷物が届いています。男性教員は速やかに荷物の受け取りをお願いします』

 

 

 話には聞いたことがあっても、まさか自分がすることになるとは思わなかった〝不審者来校〟を知らせるアナウンス。

 

 奈津子は早く行けと無言で合図を送ったが、二人は首を横に振ると窓の外を眺めて様子を窺った。

 

「なっちゃんダメ……誰も本気にしてない……ていうか、放送なんて聞いてないのかも……」

 

「私たちも早く逃げようよ……不審者、他の人は無視してここに向かってるかもしんないじゃん⁉」

 

 二人の言い分も最もだった。

 

 奈津子は大きく息を吸い込むと覚悟を決めてマイクを再びONにし、叫んだ。

 

「みんな逃げて……! ナイフ持った不審者が校舎に入ってきたあああああああ!」

 

 奈津子の怒声が学校中に響き渡った。

 

 キィィィィン……というハウリングノイズが後に残り、校舎や校庭が静まり返るのを感じる。

 

 次の瞬間、あちらこちらで悲鳴やざわめきが起こった。

 

 自分の判断は本当に正しかったのだろうか……?

 

 そんなことが頭を過ったが、奈津子は二人の方に振り向き声をかけた。

 

「行こう……!」

 

 鞄を掴みドアに手をかけようと手を伸ばすと、奈津子の手がかかる前にドアの取っ手がガラガラと横に滑った。

 

「え……?」

 

 奈津子は間の抜けた声を出す。

 

 同時に体から力が抜けていくのがわかった。

 

 ヘナヘナと床に座り込んだ奈津子の前には、身なりの汚らしい不審者が立っていた。

 

「きゃぁあああああ……!」

 

 一人が叫び声をあげて後ずさる。

 

 もう一人は身じろぎ一つ出来ずに立ち竦んでいた。

 

 じぃわ……じぃわ……と耳鳴りがする。

 

 奈津子は足に触れた生暖かい感触に気が付いた。

 

 まさか恐怖で失禁したのだろうか……?

 

 恐る恐る視線を落とすと、そこには赤い血だまりが広がっていた。

 

 腹のあたりには出刃包丁が深々と突き刺さっている。

 

「嫌ぁあああああ……!」

 

 絶叫と同時に激しい痛みが腹部を襲った。

 

 地面を蹴ってずるずると男から距離を取ろうと試みるも足に力が入らない。

 

 男はニッ……と笑い、黄ばんだ歯を見せつけると、奈津子の前にかがんで髪を掴みこう言った。

 

 

 

「可愛いですね」

 

 

 *

 

 

「どう? マジでヤバいでしょ? それでそのあと、先生たちが駆け付けて犯人は取り押さえられたらしいんだけど、奈津子ちゃんは男に何度も何度も包丁で刺されて死んじゃったんだって。で、ここからが怪談なんだけど、その時に三人がかけた曲を放送室で流すと、録音装置から奈津子ちゃんの断末魔が聞こえるんだって……!」

 

 僕らは言葉を失った。

 

 怪談も想像以上に恐ろしいものだったけれど、それ以上にあの言葉が僕らの心臓を掴んで離さなかった。

 

 

『かわいいですね』

 

 

 まるで頭の中で、直にそう囁かれたような気がした。

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