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宇宙猫は今日も宇宙(そら)に向かってアンテナを伸ばす  作者: 深川我無@書籍発売中
脳味噌chuchu〝INVASION〟

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97/100

File97 セピアと放送室①

 その日は雲一つない晴天だったという。

 

 不気味なほどに青い空は、青を通り越して黒ずんでいたらしい。

 

 ただそれで学校が休みになるわけもなく、生徒も教師も、誰も彼もが何となく嫌な予感を抱えながら日常を消化していたという。

 

 *

 

 昼休み、放送部の仲良し三人組はいつものように足早に最上階にある放送室に向かっていた。

 

 お昼の放送に流す曲は決まっている。

 

 三人で集まってはとっておきの曲を持ち寄り意見をぶつけ合うのが部活の主な活動内容と言っても過言ではなかった。

 

 今週のヘビーローテーションは珍しく意見が一致していた。

 

 ネットの海に浮かんでいたその曲は、まるで誰かの投げたボトルメールみたいに海洋プラスチックの真ん中で自分たちを呼んでいるように思えた。

 

 或いは遠い惑星から送られる謎の電波通信みたいに。

 

 部長の奈津子は咳払いをしてからマイクのスイッチをONにして呼びかける。

 

「HELLO! Music The World? 今日は空が青くて狂おしいぜ! そんなイカレたベイビー達! 青春謳歌してるかい⁉ お前らの青春Musicは俺たち放送部がジャックした! 今日も最高にエモーショナルな楽曲をお届けするよ!」

 

 そう言って彼女は仲間に合図を送った。

 

 すると音源データの入った機材のスイッチを一人がONにする。

 

 同時にメロウなサウンドと切れのいいドラムが校内に響き渡った。

 

 アインシュタインを連想さえるバンド名、そして時代を超えるメッセージを歌い上げる気怠くも可愛くて癖になる声、圧倒的な演奏の技術。

 

 そのすべてが最高だった。

 

 一曲聞いて、瞬く間に三人ともファンになった。

 

 それから時間を忘れてそのバンドの曲を聴き漁った。

 

 自分たちが見つけた音楽で、流行りじゃない音楽で、学校を占拠する。

 

 その想いで集まった三人。

 

 音楽的な好みの異なる三人が、一瞬で虜になったこの音楽なら、ついにその日が来るかもしれない。

 

 高三の秋、ズルズルと引き延ばした引退直前のことだった。

 

 奈津子は曲を流しながら、教室から微かに伝わりくる気配に耳を澄ませていた。

 

 他の二人も窓から外を眺めて様子を窺っていた。

 

 奈津子は教室から聞こえるざわめきに小さくガッツポーズして二人のいる窓辺に目をやった。

 

 サムズアップで喜びを分かち合うはずだった。

 

 しかし二人は窓から外を見降ろしたまま微動だにしなかった。

 

 どうしたのだろう……?

 

 奈津子はマイクを離れ二人のもとに向かった。

 

 幸い曲はまだ途中で残り二分ほど余地がある。

 

 静かに席を立ち二人に並んで窓の外を見ると、そこには手に刃物を握った見知らぬ男が佇んでまっすぐこちらを見上げていた。

 

 男は口を動かして何か口走ると、満面の笑みを、狂気に満ちた笑みを浮かべて校舎の中へと駆け込んできた。

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