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宇宙猫は今日も宇宙(そら)に向かってアンテナを伸ばす  作者: 深川我無@書籍発売中
脳味噌chuchu〝INVASION〟

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File92 空飛ぶ人影と謎の誤作動

 フライングヒューマノイドを見上げて固まっていると強い風が屋上を吹き抜けた。

 

 その風で重たい鉄の扉がバタン……と音を立てて閉まり、僕らはその場で飛び上がる。

 

「見て……」

 

 星崎が再び空に浮かぶ人影を指さして言った。

 

 何をするでもなく、同じ姿勢のまま、ただゆっくりと空に浮かぶフライングヒューマノイド。

 

 その体が強風に煽られるようにして霧散していく。

 

 小さな欠片をまき散らしながら、フライングヒューマノイドはゆっくりと消えていった。

 

 気のせいだろうか……?

 

 消えるまでの間、奴がこちらをじっと見つめていたように感じたのは……

 

 言いようのない気持ちの悪さが肌の上を這いまわる感触に耐えかねて、僕は両手で自分の体をごしごしとこすってそれを振り払おうとした。

 

「空野」

 

 僕は星崎の声でハッと我に返った。

 

「今はアレのことを考えるのはよそう。ヒントが少なすぎる。それよりも早く目的を達成した方がいいように思う」

 

「そうだな……さっさとここから離れた方がいい気がする」

 

 そういって僕はスマホを取り出した。

 

 二人で画面を覗き込み例のサイトにアクセスする。

 

 ページが開いた瞬間、異変が起こった。

 

 じぃわ……じぃわ……じわじわじわじわ……

 

 画面から血が溢れる。

 

 ギョッとして息を呑んだけれど、それが新しい演出だと分かり僕は少し安堵する。

 

 本当に趣味が悪い……

 

 だけど、安心するには早かった。

 

 突然画面がスクロールし始め、僕は再び戦慄した。

 

 ひとりでにスクロールする画面を止めようと指で何度もタップする。

 

 けれどそんなことにはお構いなしで画面は進んでいく。

 

「何だよこれ? どうなってるんだ……⁉」

 

「一度ページを離れよう」

 

 僕は画面を戻そうと何度も操作を繰り返す。

 

 けれどそのどれもが無効で、とうとう僕は電源ボタンを連打した。

 

「画面が消えない……」

 

 そう僕が言うのと同時に、ひとつのURLの前で画面が停止した。

 

 次の瞬間には、触ってもいないのにそのURLがタップされる。

 

 僕らはただただ画面を見つめるほかなかった。

 

 真昼の屋上にどこかから沸いた雲が覆いかぶさり日の光が途絶えてしまう。

 

 それはまるで画面を見やすくするために、何者かが照明を落としたかのようだった。

 

 こん……こん……と重たい足音が聞こえる。

 

 画面は足音の主は移さず、足元の階段を映し出していた。

 

 もしかすると、撮影者本人が足音の主なのかもしれない。

 

 ピーーーーーーーーーーー

 

 突然電子音が被せられ、何かの音声が遮られた。

 

「可愛くなれますか?」

 

 そのすぐ後に、少女のものと思しき声が聞こえた。

 

 するとその問いかけに答えるように画面が暗転し、白抜きの文字が浮かび上がった。

 

『もちろん可愛くなれますよ』

 

 なぜかそれを見たとき、僕の全身に鳥肌が広がった。

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