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宇宙猫は今日も宇宙(そら)に向かってアンテナを伸ばす  作者: 深川我無@書籍発売中
脳味噌chuchu〝INVASION〟

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File61 アリ先と小骨

 アリ先は僕らに気が付くと新聞を机の上に置いて目を丸くした。

 

 客観的に見ても意外な組み合わせだと思う。

 

 僕が先生の立場ならもっと怪訝な顔をしただろう。

 

 それでもアリ先はすぐに柔らかな笑みを浮かべて僕らを手招きした。

 

「何か用があるんだろ? そんなとこに突っ立ってないでこっちに来な?」

 

「ありがとう。実は相談がある」

 

 そう言ってアリ先の方に近づいて行く星崎の態度が気にかかった。

 

 やけに親し気な気がする……

 

「相談……僕は構わないけど、三人でかい?」

 

 アリ先の言葉にも何か含みがあるような気がする。

 

「今日の相談はこっちの小林幸子が主役」

 

 星崎は自分の後ろで小さくなる小林を前に突き出しながら言った。

 

 小さな星崎に大きな小林が隠れられるわけもないのに、精一杯体を小さくしているのが意地らしい。

 

「小林幸子さん」

 

「あ……さちです……小林さちです……幸子は演歌の方っていうか……」

 

 もじもじと前髪を触りながら言う小林に、アリ先はいたずらっぽく笑った。

 

「ごめんごめん。知ってるよ。三組の小林さんでしょ? 先生方から噂は聞いてるよ~?」

 

「え……⁉ 噂⁉ マジでハズイんですけど……悪い噂じゃないですよね?」

 

「うん。元気で優しいムードメーカーって評判。今日はどうしたの?」

 

 耳まで赤くした小林は、きょどりながら「あの……」を繰り返した。

 

 僕は痺れを切らして小林の代わりに口を開く。

 

「なんか、大学進学後に理系の分野にも進みたいらしくて、生物系の学科を受講できる文系学部はないか相談したいらしいですよ。生物の基礎とかも今から勉強したいって」

 

 それを聞いた小林はブンブンと首を上下に振った。

 

「なるほどね。じゃあさっそくだけど今日の放課後に時間はあるかな?」

 

「にゃふぇ……⁉」

 

 いつの間にか内股になった小林が顔の下半分を手で覆って奇声をあげる。

 

「もう十一月も末だからね。早くしないと志望校に間に合わないかもしれないだろ?」

 

「は、その、はにょ……はぁぃいい……!」

 

 星崎がお尻を叩いた勢いで小林はしゃんと背筋を伸ばして言った。

 

 それを見てアリ先はにっこりとほほ笑む。

 

「じゃあとりあえず解散でいいかな? 星崎さんもまた何かあれば言っておいで。空野さんも。悩みがあるなら相談に乗るよ?」

 

 僕はどう返していいか分からず小さく会釈した。

 

 星崎も何も言わずに頷いている。

 

 僕は気まずさを誤魔化すために、何となく机の新聞に目をやった。

 

 紙面には『各地でシステム異常。太陽フレアの影響か?』の文字が躍っている。

 

「ああ。また太陽フレアらしいね。電車が運休したら授業にも影響が出て困るんだよなあ……」

 

 僕の視線に気付いたアリ先が頭を掻きながら苦笑いして言う。

 

「先生も色々大変ですね」

 

 そう言って僕らは職員室を後にした。

 

 廊下に出るなり、小林は僕と星崎の手を掴んで深々と頭を下げる。

 

「ほんっとうにありがと……! この御恩は一生忘れません……!」

 

「大袈裟だな……だいたいあんな調子で二人きりって大丈夫なのかよ?」

 

「一生覚えておくように。月間ラムーの特別号はいつでも受け付けている」

 

 そんな星崎に僕は目を細めた。

 

 星崎もまた僕の視線に気付いたらしく、メガネの奥から細い目で睨み返してくる。

 

「空野。何か言いたげ。言ってみるといい」

 

「別に何もありませんが?」

 

 嘘だった。

 

 ……星崎さんも《《また》》何かあれば……

 

 その言葉が嫌に耳について離れない。

 

 あれは今日のことを指しての言葉だったのだろうか?

 

 何となく違う気がした。

 

 以前から星崎がアリ先に、何かを相談していたような、そんな気配を感じてしまう。

 

 どういうわけか、喉に刺さった小骨のように、その事実が僕には凄く不愉快に思えた。

 

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