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宇宙猫は今日も宇宙(そら)に向かってアンテナを伸ばす  作者: 深川我無@書籍発売中
ハイド・アンド・シークin大塔病院

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File44 銀河と宇宙戦艦

 先ほどまで流暢に話していた彼女の足がピタリと止まる。

 

 顔を上げると、放射線治療室の扉の上では『治療中』と書かれた赤いランプが光っていた。

 

「ここにも電気が来てるんだな……」

 

 そう言って僕が伸ばした手を、星崎が静かに掴んだ。

 

「なんだよ?」

 

「入るのは危険……放射線が出ている可能性がある……」

 

「……‼」

 

 彼女の言う通りだ……

 

 危うく生身で放射線の中に飛び込むところだった。

 

「どうする? 引き返すか?」

 

僕が淡い期待を込めて言うと彼女はメガネの奥から僕を見据えて「ふぅ……」とため息混じりにつぶやいた。

 

「空野はすぐに帰りたがる……行くべきところは一つ。発電施設に向かう……」

 

「別に帰りたがってない……」

 

 こうなることは分かっていた。

 

 けれどそこには、電力を復旧した何者かがいるかもしれないわけで……

 

 そう思うと、僕の頭は全力で行かずに済む方法を考え始めてしまう。

 

 そんなものは無いと分かりきっているのに。

 

 いや。

 

 本当は一つだけある。

 

 星崎の手伝いをやめてしまえばいい。

 

 今すぐここから逃げ出せばいい。

 

 けれどそんな選択肢は無いも同然だった。

 

 いつの間にか、僕は星崎といることを心地よく思っていたから。

 

 理由はわからないけど……

 

 僕は大きなため息をついてから言う。

 

「じゃあそれを探そう……そういうのってだいたい地下にあるよな?」

 

「多分そう。階段から二手に延びる廊下の反対側にはまだ行ってない」

 

「また霊安室(あそこ)を通るのか……」

 

「最低でもあと三回は通ることになる……」

 

 思わず気持ちが顔に出ていたらしい。

 

 星崎はこちらを見て、にやりと笑ってから歩き始めた。

 

 こいつに恐怖心はないのか? と思ったけれど、よく見ると左手の先が震えている。

 

 なんだ……やっぱり無理してるのか……

 

 そう思うと、頭の中に別の銀河から使者がやってきて「手を握ってあげれば?」と囁いた。

 

 黙れ黙れ……

 

 僕が思わず頭を振ったせいで、星崎が怪訝な顔で僕の顔を見上げている。

 

 それがどこか上目遣いみたいになって、心臓の奥の方がトクン……と音を立てた。

 

 いつの間にか僕の中の小宇宙にも侵略者が目をつけたらしい。

 

 もし宇宙人が地球を狙っているとしたら、こんな風に侵略戦争を仕掛けるのかもしれない。

 

 武力ではなく甘い囁き。

 

 それは宇宙人じゃなくて悪魔か……

 

 けれどキリストや神が宇宙人なら、悪魔だって宇宙人で合っている気がする。

 

 僕の頭の中で回転する銀河に、ずんずんと入り込んでくる宇宙戦艦の一団が敵か味方かもわからぬまま悶々としているうちに、僕らは再び霊安室の前にやってきた。

 

 

 同時にゴツ……ゴツ……ゴツ……と、不気味な音がした。

 

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