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File11 幼馴染と宇宙人

 あれから小林はずっと喋り続けていた。

 

 こちらがどれだけ嫌な顔をしてもお構いなしにだ。

 

 なんだよこいつ……? 口から先に産まれるってこういうやつのことだよな……

 

 そう思うと小林の顔全体が唇のように思えてくる。

 

 なるほど、星崎の言う通り案外宇宙人というのは身近にいるのかもしれない。

 

「ちょっとお? 聞いてる⁉ 質問してるんですけど? しーつーもーんー!」

 

 校門が目と鼻の先にまで迫った時、ひと際大きな声で言った小林の言葉に生徒たちが振り返る。

 

「聞いてなかった……つか、声でかすぎだろ?」

「空野が聞いてないからじゃん⁉」

 

 その前からそうだろ……

 

 とは言わずに、僕はため息交じりに答えた。

 

「それはすいませんでした。それで質問って?」

「決まってんでしょ! てんことはどういう関係なわけ?」

「はあ⁉」

 

 予期せぬ問いかけに思わず声が大きくなった。

 

 そのせいでまたしても視線が集まってきて僕は声を潜めて小林をにらみつける。

 

「なんでお前にそんなこと聞かれなきゃいけないんだよ⁉」」

「幼馴染だから当然の権利なんですけど?」

「嘘つくなよ。僕と同じ駅から乗ってるのに幼馴染なんて変だろ?」

 

 小林は少しだけしまったという顔してから、やや小さくなった声で答える。

 

「てんこ、五年生の時に引っ越したの! それまでは一緒の美空小! だいたいあんたと私は志度中で一緒だったのマジで覚えてないわけ?」

「知りませんね。人違いじゃないですか?」

「なにそれ⁉ むかつくー!」

 

 小林が大げさな動きで悶えていると、後ろから声がして僕らは同時に振り向いた。

 

「なんで二人が一緒にいる?」

 

 そこには目を細めていぶかしげに僕と小林を見比べる星崎が立っていた。

 

 小林は星崎に寄りかかり泣きまねをしながら僕を指さして言う。

 

「てんこー! 聞いてー! こいつ中学も一緒だったのに私のこと覚えてないのー!」

「安心していい。大抵の人間は一度《《幸子》》に会ったら、忘れたくても忘れられない。空野はレアケース」

「名前含めて幾重にも引っかかるんですけどー?」

「空野すまない。どうやら幸子が迷惑をかけたらしい。幸子、空野になんの用?」

 

 小林はごまかす様に視線を逸らしたが、星崎は小林の両頬に手を添えてむんずと顔をつぶしながら目をのぞき込む。

 

 小林の顔を掴むために背伸びをした星崎の両足はフルフルと震えていたが、表情は微塵も崩れない。

 

 どうやら怒っているらしい。

 

 小林もそれを察したらしく、観念したように口を開いた。

 

「昨日の放課後、二人が一緒に歩いてるのを見かけて……どういう関係かしら~って思いまして……ズビバゼン……手を放じて‼」

 

 ぎりぎりと小林の顔を締め上げながら星崎はちらりとこちらを見て言った。

 

「すまない空野。これは少しお灸が必要。先に行ってほしい」

「おう……」

 

 こうして僕は二人を残して下駄箱の方へと歩いていった。

 

 校舎から振り返ってみると、背の小さい星崎の前で長身の小林が縮み上がっているのが目につき、僕は思わず「ふっ……」と声を出して笑い、そんな自分に驚いた。

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