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宇宙猫は今日も宇宙(そら)に向かってアンテナを伸ばす  作者: 深川我無@書籍発売中
電波少女と宇宙猫

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10/91

File10 両親と同級生

「続いてのニュースです。アメリカ航空宇宙局‘‘NASA‘‘が極めて大きな太陽フレアが発生する可能性があると発表しました。気象庁は前回発生した太陽フレアの影響を上回る恐れがあるとして、注意を呼び掛けています」

 

 母さんはあんぐりと口を開いて固まってから、後ろで束ねた緩いパーマのかかった茶髪を揺らしてテーブルで朝食を食べる父さんの方に振り向き叫んだ。

 

孝彦(たかひこ)さん今の聞いた⁉ また太陽フレアだって! この間みたいパソコン壊れちゃったらどうする⁉」

「買い替えるしかないね。ちゃんとバックアップとっときなよ? ごちそうさまー。行ってきまーす」

「やば⁉ もうこんな時間⁉ 悠太ごめん! なんかテキトーに食べといて! これ今日のご飯代……!」

 

 鞄を掴んでドタバタと玄関に向かう母さんの背中を横目で見送り、僕は机に置かれた三千円に視線を移す。

 

「毎日毎日、昼と夜とで三千円も食べないよ」

 

 誰もいないリビングでそう呟いても、テレビは一方通行にニュースを垂れ流すばかりで返事をする者はいなかった。

 

 いつの間にか画面はコメンテーター達の討論に移り変わっていて、ここぞとばかりに自論を熱弁する学者をアップで映している。

 

 こうやって突然テレビに湧いて出ては淀みなく喋る学者達を見るたびに、いままでどこで何をしていて、どういう伝手でこの場に来たのか不思議に思う。

 

 星崎の好きそうな話だな……

 

 何となくそんなことを考えながら僕はテレビを消して、時計に目をやった。

 

 学校に行くには少し早く、電車の到着時刻には丁度いい時間。

 

 わずかに逡巡してから、結局いつもより早い電車に乗ることにした。別に他意はない。

 

 自転車でなだらかな坂を下る。

 

 見下ろす街の屋根は昇ったばかりの太陽が反射してギラギラと眩しい光を放っていた。

 

 そういえばこれが嫌で電車を遅らせていたことを思い出す。

 

 目を細めながら坂を下り、駐輪場に自転車を預けてホームに行くと、今度は自分と同じ制服を着た生徒の群れが目についた。

 

 スポーツバッグを肩から掛け、でかい声でしゃべる彼らを見てまたしても思い出す。

 

 そう。これも嫌で時間を遅らせたんだった。

 

 いつもと違う自分の行動を恨みながら、僕は彼らから距離をとる。

 

 イヤホンを嵌めて適当に音楽を聴いていると、突然後ろから肩を叩かれて僕は思わず飛び上がった。

 

「⁉」

 

「おはよう! あんた空野だよね?」

「誰……ですか?」

「うわぁ……三年も同じ学校で名前も知らないか……去年同じクラスだった小林さち! 《《てんこ》》の友達!」

「てんこ……?」

「ああもう! 星崎! 星崎伝子の友達!」

「はあ……」

「あ……小林幸子は禁句だから? そこんとこよろしく! あ、電車来た! 乗ろ乗ろ! 席埋まっちゃう!」

「え、なに⁉ ちょっと……」

 

 小林は僕の鞄を掴み電車の中に引きずり込むと大急ぎで座席に座った。

 

 僕が隣に座るか躊躇っているうちに、太ったおばさんが僕を押しのけ席に座る。

 

「あーあ。空野がモタモタしてるからだよ?」

「別に……」

 

 気のない返事をする僕に、小林はそれからもひたすら無意味な話をしゃべり続けた。

 

 僕は早い電車に乗る決断をしたことを心底後悔した。

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