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061:地下9階2

9階下層、階段を下りた先はいつもどおりの部屋になっていて正面と左に通路がある。変わっている点があるとすれば石組みがすべて正方のマス目になっていることか。壁も縦に真っすぐその正方のマス目の延長に切り込みが入っていて横には一本もない。雰囲気は多少変わったがそれ以外に違いは見当たらず演出の延長のようにも見えた。

正面から調べ始めることを決め、そちらへと進む。だがフリアが先行してその通路へと踏み入ったところで、どこかでガタンという大きな音がした。場所としてはどこか遠くといっていいだろう。周囲を見渡しても変化は見当たらない。やはり何かしらの仕掛けがあるのだろうと想像された。

通路の先は丁字路になっていてそこまでフリアが進むとまたどこかでガタンと音がする。今回は比較的近いが周囲に変化はない。

右はすぐ先で左へと折れ、左は少し先でまた丁字路になっている。ここは右へと決めてそちらにフリアが移動するとまたガタンという音。今度は近い、そう思って周囲を見渡してみると変化があった。左は少し先でまた丁字路、そう見ていた丁字路のちょうど交差点になるはずの場所が壁で埋まっていたのだ。

「え、待って待って、もしかしてさっきからしていた音ってここの地形が変わる音だったの?」

「マジか、そうなると固まって動かないと分断される危険があるってことか? 戦闘中とかそこまで気にできないぞ、大丈夫なのか?」

「地図を書き始めたところなんだけど、いきなり意味が分からなくなったね、どうすればいいんだろう」

地形変化の迷宮、そういうことだろうと意味は分かるのだが、問題があった。フリアが先行することの危険性、戦闘中の立ち位置の危険性、そして地図は意味をなさないということだ。いくらなんでも今立っている場所が動くということはないと思いたいが、その保証はない。少なくとも離れて移動することは避けようということでフリアと後続の距離を詰めて先に進む。地図は書いていくが変わっていくことはどうしようもない、戦闘中も極力離れないように注意はするということになった。

左に曲がり、少し先でまた左に曲がる。この間にも3回ガタンという音が遠くで聞こえたのでどこかが動きはしたのだろう。前方もう少し先の方で右に分かれ道が見えていて、その先は左に折れている。本来ならばその先はスタート地点近くの見えていた丁字路になるのだろう。その分かれ道の手前で足を止めたフリアが警戒する。

「たぶん左に魔物。結構大きい予感。数は1」

「ここで初だな。さーて、このエリアの魔物は何なのか見させてもらおう」

戦闘態勢を整えて魔物の出現を待つ。ブシューという鼻息のような音が聞こえる。曲がり角の向こうから大型の人のような影が伸びてくる。手には斧のようなものを持っているのが影で分かる。のし、のし、というゆったりとした動きで姿を現したのはひづめを持った太い足、分厚い毛皮に覆われた頑健な体、両手でにぎる巨大な斧、そして2本の太い角を持った牛の頭部を持つ魔物。ミノタウロスだ。

「マジック・ミサイル!」

「ファイアー・ボルト!」

ダメージの蓄積を目的にした魔法が飛ぶ。エディとクリストは地形変化を警戒して突撃はしない。

魔法攻撃を受けたミノタウロスが足を一度地面に打ちつけると、そこから一気に加速して突っ込んできた。こちらが突撃してこないならば自分がというつもりか、その巨体をエディとクリストの間へとねじ込ませるように突っ込むと、そこから巨大な斧を振り回し、2人を離す。

エディがまた一歩進んで間合いに入ろうとするがミノタウロスは左手一本で斧を振りそれを盾に打ち据えることで間合いを保つ。クリストも踏み込んで攻撃をしかけるが、拳をにぎって振られた右手を切りつけたものの、分厚い毛皮のせいか思ったようなダメージにはならない。

「ウェブ!」

とにかくこれ以上の接近を許すわけにはいかない。カリーナが移動を困難にするための魔法を使い、ミノタウロスがクモの巣に捕らわれる。フェリクスは継続してダメージを稼ぎつつ行動を阻害しようとフロストバイトを使用する。

「たたみかけろ!」

クリストが強引に距離を詰めて剣を振り回し、エディも斧を腰だめにして突撃する。後衛の方を見る形でウェブにつかまったミノタウロスはそれに対応しきれずダメージが蓄積されていき、次第に動きが悪くなっていった。どうにか左手で振り回す斧の一撃をエディに加えることはできたものの押し切れるほどの威力は出せず、さらにフェリクスとカリーナの魔法、クリストの攻撃と続けて受けたことで地面へと崩れ落ちていった。

「よし、何とかなったな。とはいえやりにくい、どうしても立ち位置が気になってうまく動けないな」

「すぐ後ろに石組みの線が見えてしまって駄目だね、下がるに下がれないから怖いよ」

「もう最初っからウェブ頼みにすれば良かったかもしれないわね。とはいえこの先どれくらい数が出てくるか分からないし、困るわ」

「しかもこのタイミングでフリアに警戒に出てもらうわけにもいかないんだよな。これは考えていたよりもきついぜ」

地形が変わるという一点だけでこれだった。味方を分断するような地形の変化はないかもしれないという楽観的な予想では動けないのだ。その予想で動いて分断されたところへミノタウロスに突っ込まれては終わりだ。ミノタウロスの防御を抜けないという判断で参戦しなかったフリアがこの一息ついている間に先行するということもできないのだ。


後始末を終えたところで移動を再開。分かれ道に入りその先の丁字路は右、そしてすぐに左に折れしばらく進む。途中の右への分かれ道を通り過ぎ、左への分かれ道も通り過ぎたところで止まる。その先で通路は右へ折れているのだが、その先にすでにちらりと影が見えていた。大きさは先ほどのミノタウロスとほぼ同じだ。

「釣り出してウェブではめるか?」

「そうだな。カリーナはしばらくウェブを常に使えるようにしていてもらった方がいいだろう。捕まえてしまえばあとは俺たちでダメージを稼ぐ」

「分かったわ。それじゃあ、そこの場所にウェブをはるわね」

方針を決めるとエディが先頭に立ち、曲がり角の先の壁に斧をたたきつけ、その音でミノタウロスを誘い出した。動き出した影が近づいてくる。その動きに合わせてカリーナが目の前のスペースを埋めるようにしてウェブをはる。そしてその網の中へ突入するようにミノタウロスが姿を現したのだが。

「なっ! こいつスケルトンか!」

現れたミノタウロスに肉はなく、骨だけだった。カタカタと骨組みを揺らしながら斧を構え、ウェブの中へと突入してくる。

「フロストバイト!」

先制はフェリクスの魔法、そしてクモの網に捕らわれて動きが止まったところをエディが正面から盾で殴りつけ、クリストも脇から剣を寝かせて殴りつける。ミノタウロスは強引に前へ出て斧を振り回すがウェブから逃れるというところまではいかず動きは限定されている。斧の攻撃はエディが受け止め、クリストは離れては接近してを繰り返す。今回は先ほどよりも手間取ることもなく撃破することに成功した。

「こいつはミノタウロス・スケルトンってことでいいのか。さっきのやつよりは弱かったな?」

「そうだな。防御も体力も低い印象だ。これならウェブはいらなかったかもしれないな」

「ウェブだって使い放題っていうわけにはいかないし、できれば見てから使いたいわね。地形変化がなければ平気なんでしょうけど」

「動くたびにどこかが変わってんだよなあ。面倒だな」

せめてスケルトンかどうかが事前に分かるような状況であればいいのだが、それを期待できるかどうか。


後始末をすませ移動を再開。右へ曲がり、左へ曲がり、真っすぐに進み、左へ曲がりまた左へ曲がり、右へ曲がり。丁字路に到達し、奥へ向かえるだろう右へ曲がるとすぐ先でまた左へと曲がる。その先はしばらく直進で、突き当たりで左へ曲がっているのが見え、そこにゆっくりと進んでくるミノタウロスだろう影があった。

「これはいい位置だな。来るのを待とう。カリーナ、ウェブの準備を」

戦闘態勢を整えてミノタウロスの出現を待つ。ゆっくりと現れるのはミノタウロスかそれともスケルトンか。それ次第でウェブを使うかどうかも決まる。曲がり角から登場したのははたして肉体を持ったミノタウロスだった。こちらをちらりと見ると斧を両手で構え、直線上へと全身を現すと、身をかがめ左肩を前に出すようにして突撃の体勢をとる。

「ウェブ!」

エディとクリストの前にクモの巣のような網がかけられる。ちょうどそのタイミングで突撃してきたミノタウロスがその網に捕まり、そのまま突っ込んでこようと一歩二歩と出るがそこで止まってしまった。

「よし!」

こうなってしまえばあとはダメージを積み上げるのみ。エディも斧に力を込めて打ち込み、クリストも剣を振るう。フェリクスも確実にダメージを稼ぐためにマジック・ミサイルをまとめて命中させた。

この攻撃にほえたミノタウロスは前に出てこようという動きを止め、手に持っていた斧を網の隙間から腕を伸ばし前方へと投げつけてきた。動きが制限されているとはいえ十分な威力で飛んできたそれはフェリクスをかすめるようにして後ろへと飛んでいく。命中しなかったことは単に幸運だったというべきだろう。だが武器を失ったミノタウロスはあとは的になるだけだった。

「ふぅ。なんとかはなるんだが、いちいち怖いんだよな」

「こっちもうかつに動けないからね。今のはかなり危なかったよ」

それでもこれでミノタウロスは撃破だ。このまま大きなダメージを受けることなく探索を終えられると良いのだが。


探索を再開し、そこから左へ曲がり右へ曲がり、右への分かれ道を選んで進んでいくと通路は行き止まりにたどり着いた。

「わー、ここでもちゃんと宝箱はあるんだね」

その行き止まりにはいつものように宝箱が鎮座していた。鍵もなく、罠もなく、安心して箱を開けたフリアが中から革袋を一つ取り上げる。

「ん、これはお金な予感。この量だと、もしかしたら私たちお金持ちになれるかも」

「かなりの量じゃないか? 金貨か銀貨か、どうだ?」

「うーん、残念、銀貨だった。あ、しかも模様が違う。えー、これはどこで使えるんだろう」

「マジか、マジだな。違う模様だ。とはいえ銀貨でもこの枚数だと100か200か。銀貨で100枚もあれば地上ならどうだ、2週間くらいの生活費になるのか?」

「そうだね、それくらいじゃないかな。もし下で使えるのなら、同じくらいの貨幣価値なら、やっぱりそれくらいこれでどうにかなるっていうことだね」

「もうこれはあれよね、生活費にしろっていうことなんじゃない?」

「俺たちはダンジョンに生活費を融通してもらってんのか? それはさすがにどうなんだと思わないでもないが、だがこれはありがたいな。ここまでの貨幣は全部ギルドに渡してある。これが下でも使えるとなればかなりありがたい話だ」

いちいち地下世界のものだろう品を出してくるダンジョンのことだ、あり得そうな話ではあった。


探索を再開し進み始めたところで近いところからガタンという音が聞こえた。そのまま通路を引き返していくと先ほどまでは右へ進めるはずだった場所が壁で埋まっている。ここはよしとして左へ曲がると、また近くでガタンという音が聞こえた。通路を進み右へ曲がる。その先は直進して丁字路になるはずだったのだが、そこが壁で埋まり、代わりに左側の埋まっていた壁が消えて通れるようになっていた。奥へ向かうには好都合とそちらへ入ると、今度は遠いところで、また次は近いところで音がする。突き当たりの丁字路を右へ進むと左へ折れて行き止まり。引き返してもう1つの方向へ進むとしばらく先で通路は右へ折れ、そしてその先は広い部屋が待っていた。

「待って、この部屋、たぶんボス部屋だよ。ほら、奥」

離れすぎないように少しだけ前を進んでいたフリアが止まり、部屋の中が見とおせるという位置で止まって指さした。その先、部屋の奥の方には床にあぐらをかいて座るミノタウロスがいた。

「でかいな。今までのやつよりも一回りはでかい。で、床に線が入っていないな。これはここは安心していいってことなのか」

「どうみてもここのボスでしょ。どうする? ここから狙ってみる?」

「よし、ブレスをくれ、分断の危険がないのなら安心、俺たちは突っ込む。2人はこの辺から狙ってくれ。まあどう見てもこれまでのボスよりは明らかに強そうだからな。やばそうなら支援に切り替えてくれ」

「魔法がどの程度通るかだよね。これでこの先もだいたい予想できるようになってくる。頑張ってみようか」

今までのボスとみたてた魔物はそのフロアで一番格上ではあったが、そこまで突き抜けて強いというわけではなかった。だがこのミノタウロスは違うだろうと簡単に予想できる。そしてこのミノタウロスと戦ってみれば、隣のハーピーのエリアのボスの程度も分かるということだ。ここは全力でやってみるべきだろう。

カリーナがブレスを前衛3人にかける。そして後衛2人は念のためのメイジ・アーマ-とシールドも準備。さあ戦闘の開始だ。

エディとクリストが武器を構えて室内へと踏み込む。それをちらりと見たミノタウロスがゆっくりと斧の柄を立ててそれを支えに立ち上がる。フェリクスとカリーナはその途中に割り込むようにして魔法を放っていく。

「ライトニング・ボルト!」

「スロー!」

大ダメージ狙いの攻撃魔法と行動を阻害する魔法だ。

「! やだ、耐えたわよ!」

ミノタウロスは立ち上がりながら腕を振ってライトニング・ボルトを払いのけるように受ける。ダメージはどこまで入ったのか。そしてカリーナの反応からしてスローは効果がなかったのか。やはりこのミノタウロスは違う。

迫り来る2人に対しては踏み込んで斧の柄を振ってクリストの接近に割り込み、剣の攻撃をそのままそらす。目の前から相手がずれてしまったエディはそこから盾を振るがそれを振り上げた斧の石突きを器用に使って打ち合う形に持っていき防ぐと、そのまま持ち手をずらすようにして斧をクリスト目掛けて突き出して攻撃する。

「マジック・ミサイル!」

フェリクスは確実に命中し、そして確実にダメージを重ねるためにマジック・ミサイルを4本に増やして攻撃する。

「マインド・スリヴァー!」

カリーナは抵抗されにくいであろう精神攻撃を選択、これは次の手の仕込みでもある。

クリストの剣は分厚い皮膚を切り裂けず、エディの攻撃もまた跳ね返される。魔法による攻撃は通ったものの、そこからの展開が描けない。ミノタウロスは自分の番とばかりに斧を振るってクリストを遠ざけ、そのままエディにもたたきつけた。

「ホールド・パースン! 入った! 効果が短いから急いで!」

先に精神魔法で抵抗力を落としておいてからの麻痺効果を与える魔法だ。これが通ったことでミノタウロスの動きが止まる。それを聞いたフェリクスがもう一度ライトニング・ボルトを発動、今度こそ命中する。そこからはクリスト、エディに加えフリアも参加して攻撃を全力で加えることになるのだが、それでもミノタウロスは倒れなかった。

「やった、毒が入った!」

フリアの攻撃が幸運にも決まり毒の追加効果を加えることに成功。これでもかなりのダメージが稼げるだろう。だが麻痺の効果が切れたミノタウロスが怒りの表情を浮かべ、斧を振り上げると叫び声とともにエディにたたきつけ、抑えきれなかったエディが膝を着く。さらにそこから斧を投げ捨てるようにクリストにぶつけると、身をかがめて角のある頭から突っ込めるように体勢を作ると離れていたフェリクスとカリーナ目掛けて突進した。

その攻撃は次の魔法を準備していたフェリクスをかすめて転倒させ、そしてカリーナに半身程度の幅で衝突しそのまま跳ね飛ばした。壁際に転がったカリーナが起き上がろうともだえているところへ追撃をかけようとミノタウロスがもう一度構えるが、さすがにそれをさせるわけにはいかない。フリアがダーツを手当たり次第に投げつけ、クリストも駆けつけて背後から切りつける。最後に、起き上がったフェリクスがマジック・ミサイルをまとめて命中させたことでようやくミノタウロスは地面に崩れ落ちた。


「よし、何とかなったな。大丈夫か?」

「‥‥はー、アーマーとシールド両方かけておいて本当に良かったわ。なかったら駄目だったかもね」

「力が強くて押し切れない、皮膚が硬くて攻撃が通らない、おまけにへたをすればこっちよりも速い。どうなってんだ」

「最後の突進、速すぎじゃない? 見てからじゃとても対応できないよ」

明らかにこれまで戦ったボスといえる魔物とは格が違った。これまではそのエリアの魔物よりも一回り上を想定していればそう間違ってはいなかったのだが、このエリアはその通常の魔物がミノタウロスな上に、それよりも一回り以上強力だっただろう。

「‥‥ねえ、周り見て」

「あん? ああ、どうなってんだろうな、壁がない」

「気がついたら、だな。倒したあとは変わりなかった。落ちていた斧を拾って視線を上げたら消えていた」

「私も同じく。今気がついたら、だよ。他のミノタウロスもいない。それで宝箱が見えてる」

「帰り道はサービスってところか。まあありがたいが。ふぅ、とりあえず一休みしよう。それからだ」

「それじゃ私、宝箱見てくるよ」

クリストがボスだったミノタウロスから魔石と角を1本回収している間にフリアがうろうろと見えている宝箱を調べて回り、他の3人はダメージの回復に努める。見えている範囲に魔物はいないので戻るまで大丈夫だろうとは思われるが、それでも何があるか分からない。一度回復しておきたかった。

「一つは宝石、10個入っていたよ。もう一つはワンドかな? これ」

「こんなところで出るならいいものなんでしょうねえ、楽しみね」

ミノタウロスが使っていた斧を含め、これで回収は完了。休憩を終え広い何もなくなったエリアを通り抜け階段を上ると9階の休憩が可能な場所まで戻ってくる。ここで改めてしっかりとした休憩を取るのだ。

「鑑定しておいてくれ。俺は扉の先が変わっていないか見てくる」

ミノタウロスのエリアに他の仕掛けはなかった。ボスを倒したことで中央のアニメイテッド・オブジェクトのエリアに変化がないかどうかは確認しておく必要があった。変化がなければもしかしたら強引に通る方法を考えなければならないし、変化があるのならばもう一つ、ハーピーのいるエリアの攻略を考える必要がある。果たしてクリストが扉を開けると鎧の数こそ変わらなかったが柱に掲げられていた盾と剣のセットが全て消滅していた。つまりミノタウロスのクリアによって難易度の引き下げが行われたということだ。こうなるとハーピーのエリアをクリアすれば次は鎧が消えるか数が減るかの変化があるのではないかと考えられた。

「柱の盾と剣が消えていた。確定だろう。今の段階でも強引に進むことはできそうだが、どうだった?」

「いい話だね。それで、やるならハーピーもクリアしてからが良さそうだよ。見てよこの結果」

銀貨はイネスで流通していたものとなっていて、これまでのキルケーという地名とは違っているが恐らくこれも地下世界で分かるだろう。宝石はアンバー、アメジスト、ガーネット、コーラルが1個、ジェット、スピネル、トルマリンが2個だった。

そしてワンドがウォー・メイジ・ワンド。呪文攻撃に+2のボーナスが得られ、遮蔽の2分の1を無視できるという強力なものだった。

「これはフェリクスが持ちなさいよ。どう考えてもいいものよ。使うべきよ」

「そうだね。そうしたらこのファイアー・スタッフはカリーナが使うといい」

「そうね、これで私も高レベルの攻撃魔法が使えるわね」

ということだった。攻撃魔法を基本にするフェリクスが使えば申し分のない威力を発揮してくれるだろう。

そしてボスのミノタウロスが使っていた斧。これはパワー・アックスといい、攻撃に+2のボーナスを得られるグレーター・アックスとして使用でき、持っているだけで防御にも+2のボーナスを得られ、それに加えて1日に10チャージ分まで強撃という力場による追加ダメージを発生させられるというものだった。チャージも夜明けごとに回復するというのだから文句などない。これはエディが使用するということで決まった。

「すげーな、なんだこのアックス。それはあいつが強いわけだよな」

「これね、たぶん私たちも魔法の武器を装備して強くなりなさいっていうことだと思うのよ。ワンドにしろアックスにしろ、普通の武器では通用しなくなるぞっていうことでしょう」

「ありそうな話だな。それでハーピーのところも、か」

「そう、やってみるべきだよ。ハーピーがどういう装備なのか見ないと僕らの強化につながるかは分からないけどさ、少なくとも同じレベルのものは宝箱からも出るかもしれないしね」

ダンジョンが必要だと考えて魔法の装備品を出してきているのだ。もしかしたらミノタウロスレベルが標準になるのなら地下世界の難易度はとてつもないことになる。それに対応するためにも自分たちを強化しろと用意してきているのかもしれない。これまでの展開を考えるとありそうな話で、そうなるとやはり、ハーピーのエリアも探索してみるべきということになるのだった。

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