33 攫われたガラム
ワイバーンの谷での一件から数日。
私はビスカとローリエからの熱烈アプローチを耐える日々を送っていた。
そんな時、慌てた様子のソニアがギルドに飛び込んで来た。
ただ彼女は今日、ガラムと共に軽い依頼に出ていたはず。
なのにこうして一人で帰ってきているし、何よりそもそもその様子がおかしい。
息は荒いし、目には涙を浮かべている。
明らかに何がおかしかった。
「ソニア……何かあったの?」
「ガラムが……! ガラムが攫われたの……!!」
「ッ!?」
彼女の口から出てきたその言葉は私の思考を滅茶苦茶にするのに充分な火力を持っていた。
と、とりあえず落ち着こう。
素数でも数えて落ち着こう。
……よし、それじゃあまず状況の整理をしないと。
「おい、攫われたって誰にだよ……!? アイツがそう簡単に誘拐される訳がねえだろ!」
私がソニアに詳しく聞こうとすると、その前にビスカが叫んだ。
それを聞いたソニアは怯えた様子でゆっくりと口を開く。
「わ、分からない……いきなり現れて、皆黒いローブを着ていたから……」
「クソッ!! 手がかりもねえってか!?」
「落ち着いてビスカ。こういう時はとにかく冷静でいないと」
そう言い、ビスカをなだめる。
いくら仲間とは言え、ビスカの気迫は凄まじい。
動揺している今のソニアには刺激が強すぎた。
「落ち着いていられるかよ! こうしている間にもガラムの身に危険が……」
「攫われたってことは、少なくともしばらくは大丈夫のはずだよ。殺すつもりならわざわざ攫う必要も無くその場で殺せばいいんだから」
「た、確かにアルカさんの言う通りです。となると、何かしらの目的があってガラムさんを攫ったと言うことでしょうか……」
わざわざ誘拐してまで何をするつもりなのか。
それは今の私たちには分からなかった。
ああは言ったものの、時間がかかればそれだけ彼女の身に危険が及ぶのは間違いないし。
早く見つけないと、取り返しのつかないことになりそうだね……。
「なあソニア、そいつらが何処に行ったのかは分からねえのか?」
「それが途中までは着いて行けたんだけど、転移魔法で逃げられて……あ、でも一直線に王都を目指していた気がする」
「ってこたぁよ、そいつらが王都にいる可能性はあるな」
「そ、そうだね!? 探しに行かなきゃ!」
「待ってくださいソニアさん! ガラムさんですら捕まっちゃうのに貴方一人じゃ……!」
ローリエの制止を聞くことなく、ソニアはギルドから飛び出していってしまった。
とは言え、この広い王都内でガラムを探すとなると別行動をした方が効率が良い……と言うかそうでもないと見つけるのは不可能だった。
だから、私たちもそれぞれ別々に探しに行くことにしたのだった。
◆◆◆
日は完全に暮れ、王都中が闇夜に包まれる。
それでも、ガラムは見つからなかった。
「クソッ……! これだけ探して、何の手がかりもねえなんてありえんのかよ……!」
「ガラムさん、一体どこに連れていかれてしまったんでしょう……」
「これだけ探して見つからないとなると、やっぱり他の街に連れていかれちゃったのかな……」
雰囲気はもはやお通夜だった。
そうだよね……大切な仲間が、誘拐されたんだもん。
私も街中を駆け回って探したけど、全くと言って良い程に情報が得られなかった。
こうなってくると、意図的に痕跡を消されていると考えた方が良いのかもしれない。
そしてそれが出来るようなある程度の規模の組織が、ガラムを攫った。
そう考えるべき……だよね。
「ごめん、皆……私、もう一回探してくる」
「待ってくださいソニアさん……今日は一旦寝ましょう? 明日、また朝から探した方が良いですよ」
「そうだな……俺もその方が良いと思うぜ。ガラムを早く見つけたいのは分かるが、この暗さじゃまともに捜索も出来ねえし、最悪お前も誘拐されかねねえ」
「……そう、だね」
ソニアは完全に冷静さを失っているみたいだった。
彼女が一番最後にガラムと一緒にいた訳だし、責任を感じてしまっているのかも。
けどそれは彼女だけが背負うべきものじゃない。
私たちは仲間なんだもん。
負担は、苦難は、分け合うべきだよ。
……ただ、私たちがそう思っていても、それがソニアに伝わるかはまた別の問題なのだった。
本作をお読みいただき、誠にありがとうございます。
・「ブックマーク」
・「ポイント評価」
をいただけると励みになるので是非お願いいたします。




