21 昇格試験
結局、昨晩はあまり眠れなかった。
まったく、同じ部屋にいるってだけでも大変なことなのにさぁ。
湯上りのポカポカしっとりミラなんて破壊力が凄すぎるし。
寝る時もしれっとベッドにもぐりこんで来るし。
隙あらば耳元でドスケベASMRしてくるし。
もう興奮と緊張で眠れる訳が無いよね。
で、そんな状態ながらもギルドに行ったら速攻で受付嬢に呼び出された。
どうやら冒険者ランクを上げるための昇格試験を受けられるらしい。
断る理由も無いし、受けようかな。
と言う事で、早速討伐対象がいると言う街道へと向かった。
昇格試験だからミラは着いてきてないけど、元々一人で冒険者をしていたからこっちの方が落ち着くね。
いや、ミラに関しては落ち着くどうこうって話じゃないか。もはや貞操の危機。
そんなこんなで王都を出てから数時間。
私の足なら太陽が真上に来る前には目的地に到着できると思ってたけど、実際はもっと早く着いたみたい。
これなら暗くなる前に王都に戻れそう。
「後は討伐対象の魔獣だけど……あっ」
少し見渡すと明らかに普通の魔獣よりもデカい個体がいた。
鋭い牙に太い足。背中には固そうな甲羅もある。
昇格試験の内容とも一致するし、間違いなくアレだ。
「グモッッ!!」
向こうも私に気付いたのか、こっちに向かって突進してくる。
けど遅い。遅すぎる。
「よっ、ほっ……と」
遅いし動きも直線的で単調だからか、するりぬるりと簡単に避けられた。
危険度だけならBランク中盤の魔獣だけど、今の私にとっては雑魚だね。
「お返しだよ。えいっ」
「ミギュッ」
剣を抜き、一撃でバッサリと首を斬り落とした。
苦しまないように一撃で終わらせる。それが私に出来るせめてもの配慮。
魔獣も必死に生きている訳だからね。少しでも苦しみは少ない方が良いよ。
後は魔石を回収してギルドに報告すれば良いだけ。
……なんだけど、残念ながらこのまま帰ることは出来なさそう。
視線を感じるんだよね。それも複数。
「いるんでしょ。出てきた方が良いよ」
「あら、バレちゃったわね」
「えっ……ミラ?」
なんと岩陰から出てきたのはミラだった。
……どういう事?
「どうしてここに?」
「貴方が心配で仕方無くて……なんて、流石に厳しいかしら」
ミラはおどけた様子でそう言う。
彼女なら確実に私の実力を認識出来てるだろうし、本気でそう思っている訳では無い……のかな。
でも心配してくれてること自体は本当みたい。それは素直に嬉しい。
「って、それなら残りの視線は……」
感じた視線は複数だった。
ミラを除いたとしてもまだ残っている。
「ええ、中々に穏やかじゃないことに巻き込まれているわよ、私たち」
「そう言うこったぁ!!」
「ッ!!」
突然、岩陰から複数人の男が出てきた。
格好からしてまともじゃない……多分、いや間違いなく裏社会的な存在だよあれ。
「生憎と、金目の物は持っていないわよ」
「ケヒヒッ、別に構わないぜ。目的はアンタらなんだからよぉ!」
「これほどまでに見た目の良い女二人。どう見積もっても高く売れる未来しか見えねえぜ!」
風貌や雰囲気から一瞬盗賊かと思ったけど、恐らく違う。
これはアレだよ。もっとヤバイのだよ。
「なるほど、人攫いと言う事ね」
「そう言うこったぁ!!」
予想通り。そしてミラが言ったように、彼らは人攫いだった。
自ら名乗ってくれた訳だから分かりやすくて助かる。
さて、どうしよう。
話によれば人攫いに攫われたが最後、奴隷として調教されたのちに悪徳奴隷商によって裏ルートに回されてしまうらしい。
そうなったら死ぬまで性奴隷として弄ばれるのは確実。
私とミラの二人ならこのまま逃げるのは簡単だし、わざわざリスクを冒す必要も無い。
……けど。
「……だそうだけど、貴方はどうするの?」
「決まってるよ。全員ぶちのめして、お縄についてもらう」
このまま放って置いたら被害者が増えるのもまた確実だよ。
だからここで、全員監獄に入ってもらわないとね。
「おいおい、俺たちに勝つつもりかぁ? たった二人でよぉ!」
「馬鹿だぜコイツら! 数の差は覆せないってことをわからせてやらぁっ!!」
「お前らやっちまえェッ!!」
十人はいそうな人攫いたちが一斉に襲い掛かって来る。
だけど一人一人は弱いし、統率も取れてない。
こんなの相手に私たちが後れを取るはずが無かった。
「ぐぇぇっ……な、なんなんだよお前らはぁ……」
あっと言う間に全員を無力化し、縄で縛りあげる。
これにていっちょ上がりってね。
「ふふっ、このまま引きずって帰ろうかしら。五体満足のまま王都までたどり着ければ良いわね」
「ヒッ、ヒィッッ!? お、お助けぇぇっ!!」
待って怖い。ミラ怖い。
あまりにも発想が残忍過ぎる。顔が笑ってない。
もしかして、過去に人攫いと何かあった……?
「お、お前らなんてなぁ! お頭が来れば終わりなんだぞぉ!!」
おっと、今度は何だか重要そうな言葉が出てきた。
これはまだ『お話』しないといけなさそうだね。
「おい馬鹿お前、組織に消されてえのか!」
「けどよぉ、このまま黙ってられるかってんだ! お頭ならこんな奴ら簡単に……」
「ねえ、その『お頭』って言うのについて聞かせてくれる?」
「はっ、誰が話すか……ちょっ、待てお前! 剣を向けるんじゃ……うわぁっっ!! 分かった! 話すから!」
顔のすぐそばで魔剣をちょこちょこしただけなのに、彼らはお頭について快く話してくれた。やったね。
本作をお読みいただきありがとうございます!
・「ブックマークへの追加」
・「ポイント評価」
をしていただけると励みになりますので
是非ともよろしくお願いいたします!




