20 王都到着
「それじゃ、ここまでだな。私は用が終わり次第すぐに王都を出てしまうが、君たちも冒険者ならまぁ……またいつか出会うだろうよ」
王都についてすぐ、ギルドに報告をするなりエルドはそう言って去って行った。
まさに一期一会と言った出会い。行商人と冒険者ならきっとそういうものなんだと思う。
「ふぅ……護衛依頼の報告もしたし、ひとまず私たちも行こうか?」
「そうね。陽が高い内に宿を確保しておくべきだと思うわ」
「宿……かぁ」
ミラの言う通り、確かに明るい内に宿を決めておく必要があった。
今後王都で活動していくうえで拠点は大事だからね。
けど、それはつまり彼女と一緒に暮らす部屋と言う訳で……。
一緒にご飯を食べたり?
一緒のベッドで寝たり?
一緒にお風呂に入ったり?
ああ駄目、想像しただけでにやけてしまう。
「どうかしたのかしら?」
「うわっ!? い、いやなんでもない……よ?」
気付けばミラの顔が近かった。そして距離が近い。
ふわりと良い匂いすら香って来る。
「ふふっ、それならいいのだけど」
ジト目のままミラは微笑んだ。
あぁ、彼女のジト目が私を狂わせる。
「よぉよぉ、そこの嬢ちゃんたち」
「……?」
ミラのご尊顔に狂わされかけていたところ、何やら柄の悪そうな冒険者パーティが近づいてきていた。
「君たち随分と可愛らしいけど、新人かなぁ? せっかくなら俺たちのパーティに入っちゃったりしない?」
ああ、勧誘か。
王都は人も多いし、日々パーティメンバーの入れ替えも起こっているらしい。
多分この人たちもその類かな。
「俺たち、こう見えてもAランクパーティなんだぜ。まあ待て、実力差は気にしなくていい。戦力にならなくても賑やかしに居てくれれば報酬は分けようじゃねえの」
「えっと私は……うわぁっ!?」
突如、ミラは私の肩に手を回し、そのままぎゅっと引き寄せた。
当たっている。彼女の柔らかい体が、何の抵抗も無く当たってる……!
ヤ、ヤバい、意識するとより一層ミラの感触が伝わって来て……。
「ふふっ、残念だけれど彼女は私とパーティを組んでいるの。他をあたってくれないかしら」
「問題は無いって。君たち二人とも来ればいいだけじゃないか」
「あら、分からないかしら。こういうことよ」
「ミ゜ッ」
一瞬、思考が弾けた。
何故ならミラの柔らかい唇が私の頬に触れたから。
「彼女は私のものなの。渡しはしないわ」
「ヒュ~……やるねえ。なら、俺たちの出る幕は無さそうだ」
理解のある冒険者たちだったらしい。ミラの一撃を見た彼らは去って行く。
どうやら私たちのことは諦めたと思って良さそう。
いやそんな事よりも……。
「ミラ、さっきのって……」
密着どころか頬にキスなんて、あまりにも距離感の詰め方が凄まじいったらありゃしないよ。
「あら、嫌だったかしら?」
何でもないかのようにそう言うミラ。
うぬぬ……黒龍の考えることはわからない。
「い、嫌じゃない……むしろ好き」
「なら構わないじゃない。それより、もっと激しいのが良かった……?」
「ッ!!」
耳元でそう囁かれ、色々と想像してしまった。
頬へのキスよりもっと激しい事……いやいや駄目だって!
でも、ミラとなら……。
「ふふっ、耳まで真っ赤よ? 本当に貴方、可愛いし面白いのね」
「っ……!」
恥ずかしいやら嬉しいやら。
期待感も混じってもう私の感情はぐちゃぐちゃだ。
……けど、本気でああ言った訳じゃないんだろうなぁ。
私はゲームをプレイしているから彼女を知っているけど、彼女はほぼ初対面みたいなものだし。
今の時点で好感度がそんなに高い訳ないもんね。
「とりあえず、宿屋……行こうか」
あぁ、なんだか凄い疲れた。
今日はもうさっさと宿屋に行って休もうそうしよう。
―――と、そう思っていたはずなのに。
「二人用の部屋でお願いするわ」
「ミ゜ッ」
あろうことかミラは私に抱き着きながら、二人用の部屋にしてくれと宿屋の受付に言ったのだった。
「ミ、ミラ……二部屋……」
「一緒は嫌かしら?」
「うぐっ、嫌じゃない……」
また同じように耳元で囁いてきたのでつい否定してしまった。
駄目だ、弱みを握られてしまった。
私を上手いこと丸め込む方法を知ってしまったんだミラは。
「ふふっ、それじゃあ行きましょうか。私たちの愛の巣に」
にやりと笑いながら、ミラはそう言って私を部屋へと連れて行く。
あぁ、さらば安寧。休息なんてものはもう私には無いのだろう。
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