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19 黒龍の少女ミラ

 どういう訳か、ミラは前世の私の名前である「里奈」と言う名を知っている。

 そしてそんな私に会いに来たとすら言った。


 これは……どう考えても異常事態だよ。


「どうかしたのかしら?」


 困惑していた私の顔を覗き込みながらミラはそう言って来る。

 ああ、近い。可愛い。尊い。

 バシバシの長いまつ毛にミステリアスなジト目が最高にキュート。


 ……けど、今はそんなことを考えている場合じゃないね。

 

「私の名前、誰にも言っていないはずなのに……どうして知ってるの?」


 事と次第によっては決戦も辞さない。

 って程では無いにしても、このまま放置できないのは事実。

 せめて何かしらの情報は欲しい。


「簡単な事よ。私は未来を見通す魔眼を持っているの。自由に使うことは出来ないけれど、たまに未来が見えるのよね」


 未来を見通す魔眼?

 それが本当なら確かに私の事を知っていてもおかしくは……って、それってつまり?


「私、未来でミラと一緒にいるってことなの?」


 もしそうなら戦死エンドから逃れるうえで物凄くありがたい情報だよ。


「そうみたいね。詳しくは私もわからないけれど、貴方と一緒に冒険者をしている未来が見えたのよ」


「へ、へ~……」


 まだ半信半疑ではあるものの、彼女が嘘を言っているようにも思えなかった。

 彼女が黒龍であること自体は紛れもない事実だし、私の名前を知っている理由もそれなら辻褄があう。

 

 何より、そうあってくれた方が私としても嬉しい。

 高難易度ダンジョンを超える必要が無くなったのは大きいよ。


「だからね。私は貴方と一緒に暮らすことにしたわ」


「そっかぁ、私と……ふぇっ?」


 突然のことに、再び素っ頓狂な声が漏れ出てしまった。


 いや、誰でもそうなるよ! 

 いきなり一緒に暮らす宣言は流石に驚きもするって!

 

「な、なにゆえ私と!?」


「貴方に興味があるの。ねえ、駄目かしら……」


 ミラはミステリアスな笑みを浮かべたまま、まっすぐな瞳で見つめてくる。

 深淵に吸い込まれそうな程に澄んだ瞳でそうされると何も言い返せない。

 しいて言うのならば、顔が良い。ただその一言のみ。


「うぐっ……駄目、じゃない……」


「決まりね。里奈……いえ、アルカと言った方がいいかしら。うふふ、これからよろしく」


 拒否なんて出来るはずもなく、あれよあれよと言う間に話は進んでしまった。

 もちろん私としてもミラと一緒にいられることに問題はない……どころか、むしろ願っても無い幸運ではある。


 けど、流石に話がとんとん拍子で進み過ぎて驚いているよ。

 ミラに出会うだけでも難しいのに、なんか最初から既に向こうからこっち側に矢印が向いているんだけど?

 

「おーい、大丈夫か二人共」


「エルドさん……!」


 魔獣がいなくなった事を確認したのか、エルドが馬車と共にやってきた。


「エルドさんこそ大丈夫でしたか? すみません急に飛び出しちゃって」


「ああ、こっちは何ともない。それよりも彼女はどうだ。怪我とかは……」


「うふふ、私は大丈夫よ。こう見えても冒険者なの」


 そう言いながらミラは冒険者としての登録証をエルドに見せている。

 あれ? 彼女って一応超高難易度ダンジョンの先に隠居しているはずだったよね……?

 なんか随分と人間の世界に順応してない?


「そうだったのか。まあなんにせよ、無事のようで何よりだ。それにしても一人でこの辺りをうろついているなんて珍しいな。どこかに向かう途中だったのか?」


「そうね、王都に用があるの」


 それどころか王都にすら行くらしい。

 なんかこう、黒龍のイメージが崩れて行くんだけど。


「王都か。私たちも王都に向かう途中なんだ。せっかくなら乗って行くか? 護衛として……ではあるがな」


「それならありがたく同行させてもらおうかしら」


「そうか、なら後ろに乗ってくれ」


 エルドのその言葉を聞いたミラが馬車の荷台に乗り込んでいる。

 気付けばいつの間にかミラも護衛として同行することになっていた。


 いや私としてもそれで構わないんだけど、あまりにもテンポがね……良すぎるからね。


「ほら、貴方も」


「あ、ありがとう……」

 

 ミラに促されるまま馬車に乗り込む。

 その際、差し出された彼女の手を取って荷台へと上がった訳だけど……その時の温かく柔らかい手の平の感触を、私は一生忘れることは無いだろう。


 ああ、美少女の柔らかおててに感謝を。

本作をお読みいただきありがとうございます!

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