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17 護衛依頼

 さて、意気揚々と出発したのはいいものの……残念ながらこのまま王都へと向かう訳にはいかなかった。

 

 ここから王都までは馬車でも数週間はかかる程の距離があるからね。

 仮にぶっ続けで走ったとしても数日はかかるだろうし、そもそも休息も無しに夜間も走り続けるのは流石に危険が危ない。

 町や村だって常に道中にある訳じゃないし、野宿をするにも一人旅だと見張りも出来ないからなぁ。


 なのでまずは近くの町に行って、良い感じに王都へと向かう馬車を探すことにしよう。

 幸いにも私は冒険者学校を卒業してから今日までの数年間、ここで冒険者として活動してきた。


 ここらで受けられる依頼のほとんどは危険度の低い採集や討伐だったけど、流石に王都に向かう行商人の護衛依頼を受けられるくらいには実力を認められている……はず。多分。


 そうと決まれば早速ギルドで依頼の確認だ。

 最悪の場合は王都まで行けなくても近くまで行ければいい。

 そこからは走ればなんとかなる。


「……と言う事なので、良い感じの護衛依頼ってあります?」


「そうですねぇ。ここ最近は魔獣が活発化していて行商人自体が少なくなってますから……」


「そんなぁ……」


 受付嬢曰く、魔獣の活発化によって行商人自体の街の行き来が減っていて護衛依頼が減っているらしい。

 早速、出鼻をくじかれてしまった。

 そう言えば卒業試験の日も本来は現れないはずの強大な魔獣が出たんだっけ。


 さて、どうしたものか……。


「その話、聞かせてもらっても?」


 落胆しているさなか、唐突に背後から声をかけられた。


「……? 貴方は……?」


 振り向くと、そこには明らかに冒険者とは違う恰好をした男性が。

 武器も装備も無く、至って普通な服を着ている。

 かと言ってただの村人って感じの雰囲気でも無い。


 そんな彼だけど、その正体は数年の冒険者活動のおかげで何となく予想が出来た。

 服装や雰囲気から何となくその人が何者なのかがわかるようになったんだよね。


「私はエルドと言ってな。見ての通り行商人だ」

 

 予想通り、彼は行商人だった。

 装備の類は携帯していないのに、どこか人間離れした警戒心や雰囲気を持っている……そう言う人は大体が行商人だと思う。


 本人に武器を振るえる程の身体能力が無くとも、町と町を移動する以上はどうしても魔獣や盗賊に出くわすもんね。

 きっと自然とああいう雰囲気になるんだろうなぁ。


「盗み聞きをしてしまったようで申し訳ないが、話が聞こえてきてな。王都に行きたいが護衛依頼が無い……と言うことで良いのかね?」


「はい、魔獣が活発化しているとかで」


「ふむ、そうか。……なら私が依頼を出すとしよう」


「え……?」


 いきなりの事過ぎて驚いていると、エルドと言った彼はテキパキと依頼の処理を行い始めた。


「はい、これで依頼の申請は完了ですが……本当によろしいのですか? もう少し魔獣が落ち着いてからでも……」


「そ、そうですよ。私のためにそんな危険な……」


 魔獣が活発化している中で依頼を出させるのは流石に申し訳ない。


「構わんさ。どうせ近い内に王都へ行く必要はあったんだ。その程度じゃ魔獣の数も減らんだろうし、早いか遅いかの違いでしかない」


 けど、彼の意思は固かった。

 紛れもなく良い人だ。自身のリスクを背負ってまで依頼を出してくれるなんて。

 精神力や覚悟だってとんでもないよこれ。敵ではないけど天晴。つまり普通に天晴だよ。

 

 こうなったら絶対に彼と積み荷を無事に王都まで送り届けないとね。


「そう言う事なのでな。よろしく頼む、アルカ殿」


「こちらこそ。必ず無事に王都まで送り届けますから、大船に乗ったつもりでいてくださいね」


「そうか……頼もしい限りだ」


 エルドは最初から変わらず無表情のままだけど、その声からは私を信頼していることが伝わって来る。


 その後、正式に依頼を受注してから、一足先に準備をしていた彼の元へと向かった。

 どうやら荷物を載せている最中みたいだ。


「手伝いましょうか」


「すまない、助かるよ。……凄い力だな。かなり重いと思うんだが」


 次々に荷物を運び込む私の姿を見た彼は驚いていた。

 その表情が変わっていることからも相当な衝撃を受けているのは確実なはず。

 え、そんなに……?


「ありがとう。君のおかげで思ったよりも速く出発できる。準備が出来次第、町を出るとしよう」


「それなら今すぐに行きましょう。陽が暮れる前に少しでも進みたいですし」


「よし、それならば後ろに乗ってくれ」


 エルドに言われるがままに馬車の荷台に乗り込む。

 その少し後、彼は馬車を進ませた。


 これで本当の本当に、今度こそ王都へと向かう旅が始まった訳だ。

 ガタンガタンと揺られていると、改めてその実感がわいてくる。

 ……待っててねミラちゃん。絶対に会いに行くから。

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