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16 旅立ち

 とうとう待ちに待ったその日がやってきた。

 昨日、私は16歳の誕生日を迎えて成人となったのだ。

 つまり、今日こそがお父さんと約束したその日なのである。


「うん、準備は完了だね」


 何度目かの荷物の最終確認を終え、鏡の前へと移動する。


 鏡に映るのはもはや見慣れた姿。

 金色のセミロングの髪に透き通った青い瞳。お母さん譲りの端正な顔立ちも相まって、とてつもない美少女だ。

 鍛錬によって引き締められた体は少々男勝りと言うか、あまり女の子らしくはないけど。

 まあそこは筋肉萌えってことで。


 要するに今の私、アルカ・ルーンは紛れもなく美少女な訳だ。

 それだけは確定的に明らかな事実だった。


「ああ、やっぱり凄い美少女だよこれ。私が私じゃなきゃ即座に抱いてたねこれ」


 ゲームで何度も見た姿だが、こうして目の前で動いているのを見るのは正直全く飽きない。

 むしろ自分の体だからこそやりたい放題だ。好きな格好も好きなポーズもし放題。

 最高of最高……と、言いたいところなんだけど、手放しにそう言っていられないのもまた事実だった。


 来たる魔王ディアスとの戦いによってアルカは戦死してしまう。

 そのルートから逃れるためには黒龍の少女ミラとのエンドを迎えなければならない。


 そのために私は今日この日、冒険者として活動するために王都へと向かうことにしたのだ。

 そしてバシバシ依頼をこなしてどんどん強くなって、高難易度ダンジョンを超える。

 その先にいるはずの彼女に会うために。


「……よし」


 頬を叩いて気合を入れ直し、念には念を入れてもう一度確認した後に荷物をマジックボックスへと入れた。

 ここから王都まではかなりの距離があるし、忘れものなんてしちゃったら洒落にならないからね。


 さて、荷物の収納も済んだし装備の確認も終えた。

 いよいよ出発だ。


「アルカ……」


「ついに、行くのね」


 屋敷の外に出ると、そこではお父さんとお母さんの二人が私を待っていた。

 二人共あの日と同じような……私が王都へと向かうことを話した時と同じ表情のまま私の事を見つめている。


「お父さんもお母さんも、そんなに心配そうな顔しないで。私は大丈夫だからさ。私が凄く強いの、知ってるでしょ?」


「ああ、そうだな……きっと、アルカ程の実力なら心配はいらないんだろう。……わかってはいるんだ」


 私がとっくにお父さんを超える力を持っていることは、多分お父さんも知っている。

 だからよっぽどのことでも無い限り私の身に危険が迫ることなんてないと言う事も、恐らくはわかっているはず。


 でも、そうだよね……。

 仮に凄く強いのだとしても、そこら中に魔獣が蔓延っているこんな世界で娘が旅に出るなんて、どれだけ心配してもし足りないか……。


「……いや、俺たちがこんなんでどうする。記念すべきアルカの旅立ちの日なんだ。盛大に送り出してやらないとな……!」


「そうね、私たちだって昔は冒険者だったんだもの。私とあなたの二人の娘なのよ? アルカならきっと大丈夫に決まっているわ。……でも、帰りたくなったらいつでも帰ってきて良いからね」


「お父さん……お母さん……ありがとう。それじゃあ、行って来るね」


 二人の優しさが染みる。物凄く心配なはずなのに、それでも私に変に心配をかけないように送り出してくれているんだ。

 ……これ以上ここにいたら私の方が躊躇ってしまいそうだから、そうならない内に出発するとしよう。


「ああ、行ってこい……! そんで派手に結果を残して、英雄にでもなってやれ……!! なーに、今のアルカならドラゴンだってゴーレムだってイチコロだろうよ!」


 後ろからお父さんの声が聞こえてくる。

 英雄……か。そうしたいのはやまやまだけど、下手に功績を残すと勇者として魔王と戦わされちゃうからなぁ。


 歴史に名が語られる英雄になると言うのも中々にロマンがあるけど、結局それで死んじゃうんじゃ元も子もないよ。

 何と言うか……こう、目立ちすぎない程度に頑張って行きたいよね。


 まあ何にせよ、まずは強くなってダンジョンを攻略してミラに会わないと始まらないや。 

 ルート分岐においてはむしろそこからが本番なんだから。


 必ず、私は生き残って見せるよ。

 戦死エンドなんて絶対に嫌だからね……!

本作をお読みいただきありがとうございます!

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