8話
おはようございます。アウロです。
目が覚めると、とても吐き気がしました。
吐きました。
なんか、血をいっぱい吐きました。
なのにまだ、お腹たぷたぷです。
もしかして全部血だったりしないかな。
……。
結婚って結局なんだったんだろう。
まあ、いいです。
もう、いいんです。
なんでかって?
エレナが腕にしがみついてないなぁと思って見たら、化け物みたいなバキバキな腕。
なんか頭痛いなぁと触ったらツノが生えてる。
顔はまだ見れてないけどきっともうあの頃のアウロはいません。
他にも、なんか……。
あー。
アウロは生まれ変わったんですね。
もう深く考えないことにしました。
生きてればいいことあります。
楽しく生きていきます。
うぇ。気持ち悪い。吐きそう。
気がつくと、知らないうちにエレナが横にいた。
「目覚めはどう?」
「めっちゃ気持ち悪い。」
「あ、やっぱり私の血を飲ませすぎたかな。ごめんね。」
血を飲料だと思ってない?
うん。
でもちゃんと謝れてえらいから許そう。
「えっと、教えて欲しいんだけど、魔族との結婚ってどういう状態になるの?」
「アウロは私の旦那になりました。」
「はい。」
「それだけですよ?あー。あと、……いろいろ契約しました!それだけです。」
そのいろいろが知りたいのになと思いながら、アウロは続けて聞く。
「えっと、なんか体が人間じゃなくなってるのは?」
「人間の体だと弱すぎてすぐ死ぬので、魔族の血と魔力を無理やりねじ込みました。アウロが死ぬと悲しいです。」
「いや、この姿って、もうアウロという人間は死んでないかな?」
「あ、別にアウロを好きなのは見た目ではなく、中身なので問題ないですね。あと人間の血は美味しいので、中身はちゃんと人間の血を通わせてます。大変だったんですよ?魔族なのに血は人間とか。臓器とかは多分見たことない感じになってますけどね。そうだ!魔力使って人間の体に戻れますよ。基本的には他の人にばれる心配はありません。」
魔力の使い方を聞いてやってみた。
意外と簡単に人間の姿に戻れた。
じゃあ、いいか。
……よくないけど。
いや、やっぱりよくないわ。
人間卒業しちゃった。
「それで、目的は何なの?魔王の娘ってことは人間と結婚するのって禁忌とかだったりしないの?」
「別に魔物って人間が嫌いなわけじゃないよ?興味がないが1番近いかなぁ。人間を見たら殺したくなるってわけじゃなくって。例えば、虫が寄ってきたら払うけど関係ないとこで飛んでるだけだったら別に殺しにいかないよね?そんな感じ。あ、襲ってくる魔物っていうのは、ちょっとだけ知能があって悪いことしようとしてるやつらか、お腹が空いてるだけのやつらだよ!」
まあ、もしも人間を嫌いとかだったら最初から殺されてるよね。
アウロは一番聞きたかったことを聞いてみる。
「そもそも、何で僕なの?記憶を全部見たのならもう用無しじゃない?殺されててもおかしくないと思うんだけど。」
「女の子って守ってもらえるんですよね?記憶の中にありましたよ。王子様はお姫様を守って……みたいな。」
「えっと、あ、力がある男の子は守ったりするんじゃないかな。うん。」
「あとは、普通にタイプです。アウロが。 な の で !」
「はい。」
「私のことを可愛いと思っている王子様のアウロには生涯守り抜いてもらいます。対戦よろしくお願いします。」
「可愛いのは訂正しません。が、逆に守ってくれませんか?あと前世の記憶から持ってきた言葉を変に使うのやめて!」
あれだ。
見られた前世の記憶が刺激的すぎておかしくなってるわエレナ。
この世界と別物だしね。
前世の記憶って。
「それで、アウロ。可愛い可愛いお姫様からお願いがあります。飲みたいです。」
自分で、自分のことを可愛いって言う女はやばいって認識なんですが……。
まあ、可愛いんだけど。
「何を?」
飲みたいという言葉で嫌な予感しかしないアウロ。
それは本当に飲み物でしょうか?
アウロの嫌な予感は見事に的中する。
「頂きます!かぷりー。」
勢いよく首に噛みつかれたアウロ。
今回は意識が飛ぶことなくただただ痛い。
半分魔物になったからかな。
強くなってるかも!
いや、でも痛いわ。
おぇ。落ち着いてたのにまた気持ち悪くなってきた。
血を死ぬほど飲ませておいて、そこからまた血を吸うのって何?
もしかして、永久機関かな?
世界的発見だよ。エレナ。
あれ、でも吸われるたびにゾクゾクする。
最初に噛まれた時はこんな事無かったのに。
体動かせないし声も出ません。
これって、もしかして調教されてます?
あぁ……。
あの頃の純粋だったアウロの体を返して……。