44話
「それで、命を狙われてる件について詳しく教えて欲しいかな」
「これよ。」
また変な魔道具を取り出したマリ姫。
「魔道具集めが趣味だったりする?」
「両親の趣味だったのよ。そのおかげで今回は助かってるけど。」
何か光ってる。
そもそも、魔道具ってレアなんじゃないの?
みんなが持ってたら世界崩壊するよね。
だって記憶抜けるんでしょ?
犯罪し放題じゃない?
怖いなぁ。
「この光に触れてみて。」
アウロは言われたとおり、光に触れた。
……。
「今、サーフィさんに斬られる映像が頭の中に入ってきたんですけど。」
「おめでとう。この魔道具は少し未来が見えるのよ。どれくらい猶予があるかは毎回変わるから分からないけど。私の経験上、大体1週間以内ね。」
「おめでとうって言いました?」
「私はサーフィに捕らえられて辱めを受ける映像が流れたわ。それで私を拷問部屋に閉じ込めて私への愛を語り続けるらしいわ。」
「はい?」
いや、え?
サーフィさんってあなたの幼馴染でしかも騎士団長っていう役職がありますよね?
なんか嫌なことでもあったのかな。
あ、でも自分も斬られる予定か。
じゃあ、擁護できません。残念。
「アウロの未来で確信したわ。今までの事件の犯人はサーフィよ。」
「斬られただけなんですけど。そこまで確定します?」
初めてちゃんと名前で呼ばれたことに小さな感動を覚えるアウロ。
「1から説明するわ。」
マリ姫の話によると、
サーフィは昔からの幼馴染で、よく遊んでいたらしい。
サーフィはマリ姫に恋をしていた。
マリ姫はその気持ちに気づいていたが、全くそういう対象にはならなかったらしい。
サーフィは最初は騎士としてマリ姫を守っていこうと志していたが、ついに気持ちが抑えられなくなってしまった。
マリ姫は王女候補であり、もし王女になってしまうと王子と結婚することになる。
自分には王子になる資格が無いため、マリ姫と結婚は不可能になる。
「で、候補者から排除するためにマリ姫の両親を殺したと。」
「そうね。ちなみにサーフィが魔物を呼び込むために使ったと思われる魔道具はうちの城の物だと思うわ。無くなってるし。」
「あの。なんで勝手に魔道具使われてるんですか?」
「昔から両親とサーフィって仲が良かったから魔道具好きに使っても良いよって言われてたのよ。それで殺されるのどんな気持ちかしらね。」
「そんな危ない魔道具を貸すのもどうかと思いますけど。」
そもそも、魔物を呼び込む魔道具の存在自体が悪じゃないかな。
何の目的で作られたのか気になる。
「……結果的に私のせいなのかしらね。王女になるって言い始めてからよ。サーフィが狂ったの。」
何としても王女になるのを阻止したいサーフィはあらゆる妨害をしたらしい。
王国の行事に参加する時もわざと時間を遅らせて遅刻させようとしたり、
マリ姫に来客が会ったときも、いないことにして帰らせたりしたらしい。
しかし、そんな努力も実らない。
ルーシー王女候補が候補から下りると言い出した。
「ルーシーって本当は王女なんかなりたくないってタイプの人間だから。今、やらせてるのは申し訳ないわね。」
ルーシーが王女候補から降りると完全にマリが王女になってしまう。
そこで、マリの身内を全員亡き者にしたサーフィ。
「で、孤独なお姫様が誕生したってわけ。何か質問ある?」
「この城で人に誰にも会わないのはそういうこと?」
「私しか住んでないわよ。両親が死んだっていったけど、厳密には私以外全ての城の人間が殺されたわ。」
「あれ、サーフィはどういう立ち位置なの?城にずっといるわけじゃないんだ?」
「サーフィはルーシー王女を守る騎士団の団長よ。たまに私の様子を城まで見に来るの。偶然アウロがここに来たとき、私に会いに来てたから対応を全部任せてたわ。」
自分目線だとサーフィさんめっちゃいい人なんだけどな。
牢屋で申し訳なさそうに話してくれてたし。
めっちゃ優しかったし。
死刑にしないし。
奴隷扱いしないし。
記憶奪わないし。
「ほんとにサーフィさんが犯人なの?」
「なんであなたに優しかったかわかる?あなたを早く私から遠ざけたかったのよ。」
「でも死刑って言った時に庇ってくれましたけど。」
「そもそも私に死刑にするほどの地位は無いのよ。王女でもないし。」
「ほう。」
「ということは、あなたを死刑にして殺すと私は殺人罪で王国に捕まります。」
「まあ、普通そうなりますよね。」
「そうすると、サーフィは私に手出しできなくなるのよ。それが嫌なんでしょうね。」
なんか、話が無理やりすぎる気もするがそうなんだろう。
マリがこんな嘘をついて得をする理由が思いつかない。
「じゃあ、なんでサーフィさんが犯人だと分かってるのに城に来るのを許してるんですか?」
「そうしないとさっきの未来みたいになるのよ私が。」
事故があってから、この魔道具で見た未来にならないように運命を変えてきたらしい。
その結果が今の状態らしい。
「何回、回避しても別のパターンで私を手に入れようとするのよ。サーフィは。」
それで逃亡したいのか。
確かに、誰も頼れないし逃げられないのは詰んでる。
「アウロの未来では斬られたのよね?私に対しては殺意までは無かったのだけど。やっぱり独占欲の塊ね。」
「もしかして、マリ姫と一緒にいなければ死ぬことは無かったりします?」
「そうね。私の近くの者を排除したいんだと思うから。こんな取り返しのつかない状態にならないように何とか出来ればよかったんだけどね。」
マリ姫は今にも泣きそうな顔になっている。
自分に死刑だの奴隷だの言ってきた相手であっても流石に可哀想すぎる。
だってマリ姫何にも悪く無いじゃん。
「じゃあ、……逃げる前に復讐しましょう。」
「えっ?」
「このまま逃げてもずっと追われますし、逃げ切れても心に傷を抱えたままですよね?」
「でも。どうやって。」
「それを考えるのはマリの仕事です。」
「は?」
うん。だってそんな方法知らないもの。
そういう魔道具とかないのかなぁ。
自分が戦おうにも戦い方わかんないよ。
魔物ってことはそこそこ強いんだよね?
これで弱かったらどうしよう……。
まあ、盾ぐらいにはなれるかな。
「アウロ。そこに正座しなさい。奴隷としての口の利き方をしっかり教えてあげるわ。」
奴隷呼びに戻っちゃった。
少しはマリ姫の様子が落ち着いたかな?
「次適当なこといったら、ほんとに死刑にするから。」
そう言いながら声が少し明るくなっていることにマリ姫本人は気づいていなかった。




