43話
「あなたの記憶を奪ったのはあたしよ。」
はい?
「えっと、え?」
「あなたが窓から突っ込んできたときに、護身用に持ってたこの魔道具を使ったのよ。」
その魔道具は砂時計の形をしていた。
「それで、どういう魔道具なんですか?」
「知らないのよ。でもあなたの前で輝きだして中の砂に色がついたわ。」
知らない魔道具を護身用で使うのはどうなんだろうか。
砂時計の中の砂は虹色に輝いていた。
「でも、記憶が消えた原因とは限らないんじゃ。」
「いや、それが。あなたの記憶が断片的にだけど見えるのよ。この砂時計持ってると。」
「……それが原因です。記憶返してください。」
この女が全ての元凶だった。
早く記憶返してくれないかな。
「駄目よ。あなたは私の奴隷よ?」
「はい?」
なんで?
どういうことなの?
「えっと、なんで返してもらえないんでしょうか?」
「あなたが記憶を取り戻すと、ここからいなくなるから。」
「えっ。何が駄目なんですか?マリ姫さんもそのほうが嬉しいですよね?」
「……。」
複雑な表情のマリ姫。
「駄目なものは駄目!!」
駄目らしいです。はい。
うーん。困ったなぁ。
「ちなみに、自分何者なんですか?」
「元人間の魔物……。」
「あー。魔物なんですね……。……元人間の!?」
何がどうしたらそうなるの?
「ちなみに、人間って魔物になるんですか?一般的に。」
「聞いたこと無いわよ。こんなの。」
「……えっと。なおさらここにいるのはよろしくないですよね?」
「別にいいわ。両親の話はサーフィに聞いたんでしょう?あれって、人間が仕組んだ罠だったのよ。知ったのは最近だけどね。別に魔物でも気にしないわ。」
マリ姫は続けて話す。
「私ってこの国の王女候補だったの。私は両親が亡くなってから候補から消されたわ。現王女はルーシーっていう女よ。」
「……ということはそのルーシー王女が仕組んだってことですか?」
「違うわ。ルーシーはそんなことしなくても王女第一候補だったもの。私も昔から仲は良いわ。」
「友達いたんですね。」
「いるわよ!?殺されたいの?」
両親が亡くなってからずっとこの城に引きこもっているのも命を狙われている可能性があるとのこと。
つまり、身を守るために知らない人間は寄せ付けていないと。
「男性嫌いも芝居だったりします?」
「それは本当に嫌い。」
死刑にしたいのは本当なんだ。
いや、何とかなりませんかね?
残念ながら自分、男の子なんですよね。
「でも、あなたは信頼しているわ。」
「なんで?」
「記憶無いもの。私のせいだけど。」
「あー。えっと。つまり、裏切らない信頼できる協力者が欲しいと?」
いや、死刑にされそうになったし普通はマリ姫を裏切るよ?
信頼できる理由は何なの?
もしかして、そういうので喜ぶ男性だと思われてる?
違うからね。たぶん。
記憶ないから完全否定はしないけど。
「そうね。……私の目的が達成できれば記憶返してあげるわよ。」
「目的って言うのは?」
「このオスカル王国からの逃亡。あとは……そうね。また話すわ。」
「記憶返して欲しいのもあるので協力してもいいんですけど。……とりあえず死刑って口癖を直すところから始めませんか?」
「うるさいわね。奴隷らしくしなさい!口答えしない!」
こうして記憶を人質に奴隷となったアウロは、マリ姫の協力者となった。




