37話
「そういえば、カレンはこの町で勇者になったんでしたっけ?」
「そうですよ。でもあんまり思い入れはないかなぁ。」
「カレンさんの昔話聞きたいです!!」
フィーネがいつになくノリノリである。
「そんなに面白い話じゃないけどなあ。」
とりあえず、生まれから話そうかな。
私、カレンが生まれたのはとある港町だ。
父は漁師、母は料理人だったらしい。
らしいというのも私は両親の記憶がほとんどない。
小さい頃に事故で亡くなったからだ。
なので、私を育ててくれたお婆ちゃんに聞いた話が両親に関する全てだ。
お婆ちゃんが亡くなったのは私が15になるときだった。
病気とかではなく、普通に寿命。
亡くなった後、お婆ちゃんの遺言に書いてあったこの町へ来た。
正直めちゃくちゃ大変だった。
生まれて初めて船に乗った結果、酔って吐いた。
生まれて初めて馬車に乗った結果、やっぱり吐いた。
やっとのことでこの町に来れた。
全部初めてで新鮮ではあった。
しかし、誰もいなくなってしまった自分にとっては憂鬱でしかなかった。
町に着いてからはお婆ちゃんの知り合いを探した。
その人は宿屋のオーナーだった。
昔、お婆ちゃんと一緒に冒険していたとか。
確かに私のお婆ちゃんは結構めちゃくちゃな人だった。
時間があれば毎日のように魔物を狩りに行っていた。
私はそれを安全な場所からただただ見ていた。
宿屋のオーナーに事情を話すと住み込みで働かせて貰えることになった。
それで、この町で過ごした結果。
何故か勇者に選ばれました。
「こんな感じだけど。」
「私のことお母さんって呼びます?」
「何で!?呼ばないです。」
「じゃあ、不服ですけどお父さんでいいです。」
「よくないからね?周りドン引きだよ?」
フィーネが暴走気味で困ってる。
優しさだけは受け取っておこう。
「それで、働いてた宿屋で誰かに挨拶していきます?」
「いや、大丈夫。そのオーナーも最近亡くなったんだよね。」
「勇者カレンから死神カレンに呼び方変えましょうか?」
「そっちのほうが気が楽かも。」
「冗談ですよ。職務放棄しないでください。」
結局、ほとんど何もせず町を出た。
食料も蓄えがある。
装備を強化しようにも始まりの町と言うだけあって買うものは無い。
そのまま2人はゾー草原に入った。
驚くほど何もなかった。
魔物も少ないし、周りに何にも無い。
気がついたらハインドの洞穴の前まで着いた。
「何にもなかったね。」
「まあ、初心者冒険者向けですからね。このエリア。」
私にぴったりじゃないですか。
ずっとこのエリアがいい。
「ただ、この先はメインストーリーには関係ないエリアなんでうっかり死なないようにしてくださいね?」
あー。
ゾー草原大好き。
安全安心が1番だよ。やっぱり。
すごく行きたくない。ほんと嫌。
ここで座り込もうかな。
そんな、嫌がるカレンを無理やり連れて行くフィーネ。
「死んだらお墓作ってあげますね!」
「いや。死なないように助けてほしいな!」
フィーネが言っている意味が分かったのは洞穴に入ってすぐのことだった。




