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95.配信者、カメラの凄さに驚く

 すぐにカメラが設置できると聞いていたが、夕方になった頃には既についていた。


「カメラはここから見ることができるので、スマホやタブレットに登録しておいてください」


 渡されたQRコードを読み込むことで、畑の様子が遠隔で360°全て見えるようになった。


 最近のハイテクな機器に驚きを隠せない。


「ドリ、ちょっとそこで手を振ってみて!」


「はーい!」


 ドリは畑の真ん中に行くと、大きく手を振っていた。


 畑の四つ角にいくつも置かれたカメラは、画面をフリックすると切り替えられる。


 そしてどこのカメラを見てもドリが映っている。


「あのー、これって映り過ぎじゃないですか?」


 俺はスマホをとにかくフリックしても、ずっと似たような画面が続いていた。


 思っていたよりもカメラが多く付いていたのだ。


 しかも、畑になっていないところまで確認できるようになっている。


「ここまで取り付けしたら、高くなりますよね?」


「いえいえ、気になさらず。すでに肥料の皆様からお金は頂いているので」


 どうやらお金は全て払い済みだと業者の方は言っていた。


 だからお金のことに関しては気にしなくて良いと言っていたのだろう。


「パパ……」


「なーに?」


 ドリは戻ってくるとどこか落ち込んでいた。


 さっきまで楽しそうにカメラに映って遊んでいたのに、何か問題でも起きたのだろうか。


 俺はしゃがみ込んで、ドリと目線を合わせる。


「かくれんぼないない」


 ドリは目にたくさんの涙を溜めていた。


「かくれんぼないない? あっ、かくれんぼができなくなるのか!」


「うん……」


 小さく頷いていた。


 確かにパノラマカメラを見ていたら、隠れても見つかってしまう。


 色々と遊びの選択肢を狭めてしまうのだろう。


「でも見なければみつからないからね!」


「ほんと?」


「それにこれを見れるのは俺だけだからね」


 ドリと遊んでくれるのは探索者の人達だ。


 その人達に見られなければ問題はない。


 だが、さっきから春樹以外の人達が目を合わせようとしないのはなぜだろう。


「そろそろ暗くなるから帰ろうか」


「うん!」


 無事にカメラがついたのを確認した俺はドリと手を繋ぎ家に帰ることにした。





 家に帰るとポテトにある物を渡す。


「これでいつでも確認できるな」


 事前にカメラを取り付ける話が出た時に、二台タブレットを用意していた。


 祖父やドリ達が確認できる家族用と家にいる聖奈を含む探索者用だ。


 だが、聖奈に確認したら助けが必要な時は声をかけてくださいと言われた。


 その時も目を合わせてくれなかったが、何かあるのだろうか。


 それに探索者の仕事はそれではないからな。


 きっと監視するのも大変なんだろう。


『ワン!』


 せっかく買ったタブレットが余ったため、どうするか迷っているとポテトが興味を示していた。


 試しに余った一台をポテトに渡すことにした。


 俺はスマホでいつでも確認できるから特に問題はない。


 きっと自分のじゃがいも畑を荒らされるポテトにこそ必要だろう。


 頭が良い犬のポテトならタブレットぐらい使いこなせる気もする。


 それにもう一台は居間のテレビの横に置いてあるため、そっちでいつでも確認できる。


 ポテトは嬉しいのか手を大きく伸ばして、持ち上げながら喜んでいた。


 今もドリと一緒に俺の周りをくるくると回ったり、ジャンプしている。


「落としたら壊れるから気をつけろよ」


『ハァ!?』


 言われたポテトは急に足を止めると、ドリに突進されていた。


『わあああああああ!』


 宙を舞うタブレット。


 俺は急いで手を伸ばすが、あと少しで届かない。


 もう少しで地面に落下するだろう。


 まだ、画面フィルムも貼ってはいないし、ケースもつけていないタブレット。


 そんな状態で落下するときっと画面が割れるか、ズルズルと擦れて傷が出来るだろう。


 そう思った瞬間、ある者にタブレットが刺さった。


「からあげー!」

『ワォーン!』

「きゃらあげ!」


 カラアゲの体に見事にタブレットが跳ね返り、キャッチしていた。


 どこか体に刺さっているようにも見えるが、カラアゲも笑顔だ。


「はぁー、助かったよ。ポテトもちゃんとお礼を言うんだよ」


『ワン!』


 ポテトはそのまま高く飛び上がると、カラアゲの前に座り込んだ。


 ペコペコと頭を何度も下げている。


 犬版のジャンピング土下座なんだろう。


 カラアゲはポテトにタブレットを返すと、俺のところまで寄ってきた。


「どうしたんだ?」


『クゥェ!』


 何かを必死に伝えようとしていた。


 だが、俺には何を言っているのかわからなかった。


「きゃらあげ!」


「カラアゲ?」


 ドリも一緒になって伝えようとするが、カラアゲを指差してみるが首を横に振っていた。


 どうやらカラアゲではないようだ。


 ドリは言葉を話すし、ポテトはジェスチャーや表情が豊かだからわかりやすい。


 一方でカラアゲは表情も同じだし、あまり羽をバタバタすることもない。


 ただただ、体がコロコロとしている。


 俺は何度もドリの言った言葉を復唱する。


「カラアゲ……からあげ……唐揚げ……ん? 唐揚げが食べたいのか?」


『クゥエ!』


 どうやらカラアゲはお礼に唐揚げを要求していた。


 近くにコンビニはないため、祖母に作れるか確認すると材料はあるようだ。


 祖母に説明するとすぐに準備をすると言っていた。


「すぐに作ってくれるって!」


『クゥエエエエエ!』


 カラアゲは大好物の唐揚げを食べられると喜んでいた。


 カラアゲにも意思を伝えるツールは必要なのかもしれないと思った。

「ブクマ、★評価よろしくお願いいたします」

「シャンシャンも!」

「ぐわあ!?」


 ドリは必死にシャンシャンの頭を持って下げようとしていた。


 今日もドリは元気なようです。

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畑で迷子の幼女を保護したらドリアードだった。2〜野菜づくりと動画配信でスローライフを目指します〜

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