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94.配信者、ファンサービスをする

「これはどういうことだ?」


 俺は春樹に詰め寄ると困った顔をしていた。


 なぜ、撮影者のお前が困っているのだと言いたいが、遠くから感じる貴婦人と桜の視線が痛い。


 それに凡人と侍もひっそりと隠れている。


「あー、百合どうしたら良いと思う?」


「んー、みんなパパ不足なんだって!」


「へっ?」


 まさかの言葉に怒る気力もどこかにいってしまった。


「あー、最近畑の配信が少し減っただろう?」


 たしかに夏の時と比べて、今はそこまで収穫する野菜もなく、配信する機会も減っている。


 たまにドリと遊んでいる配信もしているが、基本的に俺の体力がついていけない。


「それで肥料達が直樹不足なんだってさ」


 肥料が補うものなのに、肥料が俺不足って訳がわからない。


 簡単に言えばもっと配信回数を増やして欲しいってことなんだろう。


 ただ、気になることが一つあった。


「聖奈さんが熊の本格的コスプレをする必要があったのか?」


「あー、これは私の趣味なので気にしなくて大丈夫ですよ」


 気にしなくても良いって言われても〝趣味〟と言われたら誰だって気にする。


 リアル過ぎる熊コスプレで、何をするつもりだったのか。


「猪が畑に降りてきて、熊がいつ出てくるかもわからないからな。その練習もあったんだが――」


「まさか靴ベラを持って熊に挑むとはな」


『ハァー』


 いまだに祖父は笑っているし、ポテトは呆れた顔で俺を見ていた。


 心配したのにそんな反応されたら、俺だって落ち込んでしまう。


「かっきょよきゃたよ!」


「俺の味方はドリだけだよー」


 そんな俺をドリが慰めてくれる。


 俺はドリを抱きしめると、嬉しいのか笑っていた。


「ああ、リアル畑の日記ちゃんねるだ」


「ありがたやー」


 周りでは作業員達が拝んでいるが、そこには触れないでおこう。


 それに彼らは巻き込まれた人達でもある。


「せっかくなら本格的に訓練する?」


 猪が襲ってくる可能性もあるし、シャンシャンじゃない熊が襲ってくる可能性もある。


 良い案だと思ったが、ここにいる俺以外は首を横に振っていた。


「直樹、ここには最強の奴らがゴロゴロいるぞ」


 春樹の視線には聖奈がいた。


 それに貴婦人や物がけに隠れている凡人や侍もいる。


「あー、たしかに強い探索者達がいるな」


「それに私達がダンジョンに行ってても、ドリちゃんとポテトがいますよ」


 ドリが強いことはわかっているが、ポテトはただの犬のはず。


 聖奈に言われて、筋肉を見せびらかすように腕を叩いているが正直頼りない。


「ポテトって強い……のか?」


『ガウ!』


 ポテトは怒ったのだろう。


 俺の尻を突然噛んできた。


 しかも、普段の甘噛みよりも強めだ。


 あまりの痛さにその場で我慢もできなかった。


「いたたたたたた!」


 振り払おうと走るが、しっかり爪を立ててズボンを掴んでいるため中々離れない。


「おー、あれが必殺〝逆食物連鎖〟か」


 どうやらポテトが俺の尻を噛む行為にも名前がついているようだ。


 のたうち回る俺を作業員達は再び拝み出した。


 探索者だから少し変わり者が多いと思ったが、そもそも視聴者自体に変わり者が多いようだ。


『フンッ!』


 ポテトも気が済んだのか、俺からさらに祖父の元へ戻っていった。


「ははは、相変わらずポテトはサービス旺盛だのー」


「いやいや、あれは――」


 ポテトは俺の方を見てニヤリと笑っていた。


 何か言ったらまた噛まれそうだ。


 ひとまずここは黙ることにした。


 絶対あれは作業員達に向けたサービスではないからな。


「すぐにカメラは設置できるので待っててくださいねー!」


 そう言って作業に戻って行った。


 その言葉通り、作業は一時間もしないうちにカメラの取り付けが終わった。


 あの手際の速さと、どこからかわからない空間からポールを出した姿はただの作業員ではないことを知った。

「ブクマ、★評価よろしくお願いいたします」

「シャンシャンも!」

「ぐわあ!?」


 ドリは必死にシャンシャンの頭を持って下げようとしていた。


 今日もドリは元気なようです。


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畑で迷子の幼女を保護したらドリアードだった。2〜野菜づくりと動画配信でスローライフを目指します〜

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