8.配信者、探索者ギルドに行く
次はドリアードのチョーカーを買うために、探索者ギルドに向かった。初めて行くギルドは思ったよりも、役所のような建物をしていた。
ただ、中に入ると異世界に来たような感覚になる。通る人達全てが鎧を着て、何かしらの武器を持ち歩いている。
探索者という職業ができてから、武装する人達が増えたと聞いたことがある。
初めは犯罪者との区別がわからないと反発が起きたものの、探索者が武器を街の中で振り回せば、すぐに捕まる法律が出来てからは当たり前になった。
むしろ例外も存在しており、ダンジョンから魔物が溢れた時はその法律は適用されない。
魔物をすぐに倒さないと国が無くなるなんて珍しくない。
そもそもダンジョンがいつから現れたのかは知られていない。
今まで普通にあった洞窟や海底から突如魔物が出てくるようになった。
世界自然遺産に登録されている白神山地、屋久島、知床、小笠原諸島、奄美大島の5ヶ所にもダンジョンは存在している。
もちろん日本で一番高い山である富士山にも、高難易度ダンジョンがある。
単に元々いた存在に気づかず、魔物が溢れ出たことでダンジョンの存在に気づいたのか。それすらもいまだに謎だ。
すでに被害報告は多く、小さな国でダンジョン内の魔物が暴走してスタンピードにより無くなったところもあるぐらい。
魔物であるドリに何か起きないようにドリの手を繋いでそのまま受付に向かった。
「あのー、魔物につけるチョーカーが欲しいんですが」
「チョーカーですか?」
受付をしている女性はいくつかチョーカーを取り出した。
「魔物の大きさによっていくつか種類がありますがどうしますか?」
出されたのは犬や猫に付けるような首輪だった。明らかにドリのような人間に近い見た目をしている魔物に付けるものではない。
「他にはありませんか?」
「当ギルドで管理しているチョーカーはこれだけですね」
ダンジョン外にいる魔物には、安全だとわかるようにチョーカーの着用義務が決められている。
単純にチョーカーで良いなら、ネックレスを付ければ良いと思うが、魔物に付けるやつは特殊な構造をしているらしい。
この間連絡を取った人に確認した時には、そう言っていた。
ただ、流石に首輪を付けることに俺でも抵抗感がある。
チョーカーと聞いていたから、可愛い物かと想像していた。
「今日はやめておきます」
俺は帰ろうと向きを変えると、誰かにぶつかってしまった。あまりにも鎧の硬さと相手の体格の良さについ後ろに倒れそうになる。
「兄ちゃん大丈夫か?」
「ああ、すみません」
そこには綺麗に髪の毛を整えた黒髪短髪の男性が立っていた。営業職をしていそうな見た目をしている。
「ひょっとして畑の動画配信の人じゃないか?」
「えっ!?」
「ああ、すまない。隣にドリアードもいたから、プライベートの時に声をかけてすまなかったな」
どうやら俺の動画配信を見ていたらしい。意外なところに視聴者がいることに驚いてしまう。そして、ドリは見た目が少し違っても探索者からはドリアードに見えるのだろう。
さっきから少しチラチラ視線を感じていたのは、ドリが一緒に入ってきたからだろう。
「チョーカーを買いに来たのか。流石にドリアードにチョーカーは似合わないからな」
目の前にいる男も同じことを思ったのだろう。
「そういえば、手作りでチョーカーを売っているところがあると聞いたことがあるけどな……」
どうやらお金はかかるが手作りで可愛いチョーカーを作ってもらえる工房があるらしい。男は中々考えても出てこないため、後日配信動画を通して教えてくれることになった。
彼にお礼を伝えて家に帰ることにした。
チョーカーが手に入るまで、ドリには目を離さずに生活しようと改めて感じた。
「ふふふ、やっぱりあのパパさん可愛いわね」
後から探索者ギルドから聞こえた声は、俺には聞こえなかった。
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