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82.配信者、ペコペコ踊る

「すみませんでしたー!」


 俺達が帰ってきたとわかった途端、凡人と先生は土下座して頭を下げていた。


「しゃいませんでちた!」


 止める暇もなくドリもそれをマネするように、正座して頭を下げている。


 一体何が起こっているのか俺には理解ができなかった。


 凡人と先生は誰かから、罰ゲームでもさせられているのだろうか。


「なんのことかわからないけど、とりあえず俺もすみませんでした」


 どこか俺もマネしたほうが良いと思い、一緒に土下座する。


 もはや土下座というよりペコペコと挨拶しているようだ。


 きっと俺達を楽しませようと踊っているのか?


 ひょっとしたら、これが巷でいうヘッドバンキングというやつだろうか。


「ねぇ、これってどういう状況なのかしら?」


 家の中にいた貴婦人は俺達の声を聞いて、家から出てきた。


 玄関を開けたら、みんなでペコペコしていたらびっくりするだろう。


「あなた達は謝りたいっていうから待っていたのよね?」


 どうやら凡人と先生は俺達に謝りたいことがあったらしい。


「あれ? 俺達何かされました?」


「ちらない」


 ただ、何をされたのか俺達も気づいていない。

 

 ドリも首を傾げているためわからないようだ。


 特に土下座されることをされた覚えもないし、二人が関係していることとなったら、ダイレクトメッセージのことだろうか。


 まだ中身も見ていないため、何が書いてあるのかもわからない。


「やっぱりパパ様は慈愛に満ちた優しい神様だわ」


 自分の家にいるかと思ったら、まさか俺の家から桜と百合が出てきてびっくりした。


 春樹がいなくても、桜と百合は田舎の生活に慣れてきているようだ。


 それよりも桜は前よりも何を言っているのかわからなくなってきた。


 前からも少し変わっている人だと思っていたのは変わらないが……。


「俺は畑の日記ちゃんねるが見れないと何のために生きているんだ……」


「それは大袈裟――」


「パパさんに私達視聴者の気持ちはわからないわ! 推しの幸せな顔を見るとどんな嫌なことでも忘れ――」


「その推し達に迷惑をかけたのはあなた達でしょ?」


「はい……」


 何で怒られているのかはわからないが、凡人と先生の中で俺達の動画は生活の一部になっているようだ。


 むしろ、麻薬的な扱いに近い気がしてきた。


「それでみなさんはなんで謝っているんですか?」


「パパさんはあのコメントに怒っているんじゃ……」


「俺とドリは特に何も怒ってないですよ? 帰ってきたら頭をペコペコして遊んでいるんですよね?」


「ドリもあしょぶ!」


 俺とドリは再び頭をペコペコする。


 激しく頭を振るとどこか気持ちよくなってくる。


 ヘッドバンキングをしたことはないが、すごく胸の奥からドキドキする気持ちがした。


 心臓がバクバクして息苦しくなる。


「やはり神様は心が清らかですね。私も参加させて頂きます」


 どちらかと言えば、今の心は清らかではない。


 心の中ではハードロック魂が騒いでいる。


「これはどういうこと……?」


 そこに桜が参加すると百合もマネしていた。


「えっ、何が起きてるんだ?」


 そんな中、材料を持った春樹が帰ってきた。スーパーに行くと時間がかかるため、シチューを食べるのをやめたのだろうか。


 俺とドリはヘッドバンキングをやめて立ち上がった。


 少し汗もかけるため、良い運動になりそうだ。


「ちちゅー?」


「ああ、家にちょうど材料があったから買い物に行かなくて済んだわ」


「やったー!」


 ドリはすぐに立ち上がり春樹に抱きつき、ドリドリドリルをされていた。


 春樹も顔が歪み必死に耐えている。


「ハルキ……」


 そんな二人を羨ましそうに百合は眺めていた。きっと春樹に甘えたいのに、いまだに距離感がわからないのだろう。


「百合ちゃんおいで」


 俺は百合を呼ぶと耳元で静かに話す。百合の後ろで桜が祈っているが、あの人は春樹に任せたほうがよさそうだ。


「春樹に抱きついて頭突きをしておいで」


「えっ!? 嫌だよ」


「俺にはするのに?」


 以前ドリのドリドリドリルをマネして、百合のユリユリユリンガーをしていた。


 初めは何を言っているのかわからなかったが、ただの百合の頭突きだった。


 ドリのドリドリドリルに慣れているため、特に痛くはなかったが、あの反応は春樹には試していなさそうだ。


「がんばる」


 気合いを入れたのか、百合は春樹に駆け出した。だが、気合いを入れたのがよくなかったのだろう。


 どこかに足を引っかけて、そのまま倒れていく。


「百合あぶない!」


 春樹はそのまま倒れていく百合に向かっていく。ただ、それよりも動きが早い人達がいた。


「百合ちゃん大丈夫か?」

「もぉ、ゆっくり歩いてよね」

「女の子が走ったらだめよ」

「だいようぶ?」


 探索者達とドリだった。

 顔をぶつける手前で止められ、百合はその場で涙を流している。

 きっと百合自身も転ぶと思ったのだろう。


 少し変わった人達だがこういう時に、大人が多いほうが良かったと思う。


 それにしても、俺は何に対して謝られていたんだ?

「ブックマーク、★評価よろしくお願いいたします。ほら、ドリも」

「ほちちょーらい!」

 ドリは両手を振って配信を終えた。


ぜひ、可愛いドリちゃんにたくさんの★をプレゼントしてください!

他の作品も下のタグから飛べますので、ぜひ読んで頂けると嬉しいです。

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