80.配信者、春樹に翻弄される
コメントを切った時の反感が思ったよりも多かったため、再びコメントは俺達の顔を隠した。
お尻で埋め尽くされた目のモザイクは何とも言えない気持ちになったが、春樹がちゃんねるから追放していた。
どうやら追放機能ってのが存在するらしい。すぐに謝罪のダイレクトメッセージが来て、オシリスキーは大人しく視聴している。
「本当に直樹ってポン……機械オンチだよな」
一瞬ポンコツって言うのかと思ったが、機械オンチなのは俺も知っている。SNSもやったことないし、知っているのは連絡するアプリと電話だけだ。
この配信動画をするアプリだって、アプリを押してカメラマークを押せば勝手に撮影してくれる。
今まで編集したこともないし、設定をしたこともない。
以前、ファンクラブが切り抜き動画を使って、そっちから視聴者が増えていると桜が言っていた。
「パパ!」
「ああ、すまない」
しばらくスマホを触っていたため、ドリは待ちくたびれていたようだ。
俺はハンマーを持ってじゃがいも畑に向かった。
今回はワイヤーメッシュを使って、フェンスを作っていく予定だ。
「まずは杭を何ヶ所かに打っていくんだな」
俺は動画と祖父から渡された手紙を見ながら準備していく。祖父は今日は家で体を休めている。
手伝おうとしたところ、ポテトに腰を突かれて撃沈した。無理をするなと言いたかったのだろう。
祖父は口で言えばいいだろうと、怒っていたがポテトが話せるはずない。
話していたら今頃話題になっている。
「コンコンコン!」
「こんこんこん!」
「キツネは?」
「コンコンコン!」
「こんこんこん?」
「くくく」
畑の角と入り口になるところの目印として杭を打ち付けていく。ちゃっかり春樹も邪魔をしては笑っている。
たしかにキツネもコンコンコンだ。
「コンコンコン!」
「こんこんこん!」
「たま――」
「コンコンコン?」
「こんこんこん?」
「たまはニャーニャーじゃないか?」
急に猫の鳴き声を聞かれても答えられない。頭を使って作業どころではなくなってしまう。
「いや、タマと言ったら玉こんにゃくだろ」
「難易度高いだろ! ドリもタマはニャーニャーだよな?」
「たま、こんこんこん!」
ああ、春樹が猫の鳴き声をコンコンコンと教えてしまった。あまりこの辺に猫は見かけないため、本当に信じてしまいそうだ。
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貴腐人様 最近
私はこれを求めていたのよ!
もっとイチャイチャしなさい!
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パパを見守る人 最近
ハルキずるい!
百合もコンコンしたい!
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鉄壁の聖女 最近
わわわ、百合ちゃんがコメントしてる。
桜さん、打ち込みありがとうございます。
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幼女を見守る人 最近
個人情報がガバガバだけど大丈夫?
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パパを見守る人 最近
あっ……。
▶︎返信する
鉄壁の聖女 最近
あっ……。
▶︎返信する
オホモダチ 最近
あたしのあそこもガバガバよ。
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ハタケノカカシ 最近
すぐに追放だああああああ!
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犬も歩けば電信柱に当たる 最近
コメントを流せええええ!
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未婚の母 最近
子どもになんてこと教えてんのよ!
私の子も見て……あっ、子どもいなかった。
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好色薔薇雄 最近
誰も突っ込む人がいないよ。
ならここは俺のを突っ込んで……。
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野火之陽 最近
やばいやつが仲間入りしたー!
戦え! 戦うんだ!
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コメントが大変なことになっていることを知らない俺達は作業を続ける。
杭と杭を結ぶように紐を繋げていく。
「ここの紐の上から等間隔に支柱を入れていくからな」
「ちちゅー」
ドリは走って支柱を取りに行く。
相変わらず子どもとは思えない怪力に、ついつい親として拍手を送りたくなる。
「シチューが食べたいのかな?」
「ちちゅー?」
「今度作ってあげようか」
「ううん」
ドリは首を振っている。これは支柱とシチューを間違えている気がする。
魔石をボリボリと食べるが、さすがに支柱は食べない気がする。
むしろ、食べようとしたら全力で止める。
「支柱とクリームシチューは別物だよ。クリームシチューは、トロトロホカホカスープだよ」
「ちょろちょろほきゃほきゃ!」
ドリは何かわかったのか目が輝き出した。手を後ろに組んで、体を横に動かしてリズム取っている。
「じゃあ、今日はシチューを作ろうか!」
「やったー!」
春樹とドリは楽しそうに支柱を運んでいた。
だが、ここまでの作業をするのにすでに一時間近く経っている。
フェンスが完成するまでまだまだ道のりは長そうだ。
「ブックマーク、★評価よろしくお願いいたします。ほら、ドリも」
「ほちちょーらい!」
ドリは両手を振って配信を終えた。
ぜひ、可愛いドリちゃんにたくさんの★をプレゼントしてください!
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