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76.配信者、疲れて幻聴を聞く ※一部聖奈視点

 その後もバーベキューはみんなで盛り上がり、楽しい時間を過ごすことができた。あの空間を一番楽しんでいたのはきっと大人達だろう。


 子どもの時の当たり前が、大人の非日常になることを改めて感じた。


「またバーベキューがしたいです」


 寝ているドリを抱えている聖奈もよほど楽しかったのだろう。俺の顔を見るたびに、今度はいつバーベキューをするのかと聞いてくる。


 そんな聖奈は春樹に肉の焼き方を教えてもらうと、すぐに実践していた。


 指で輪っかを作って、親指の付け根の筋肉の硬さと比べることで肉の焼き加減がわかるらしい。実際に俺も親指と人差し指で輪を作り、硬さを確認したらレアに焼けていた。


 ただ、探索者である聖奈が同じようにやったら、ウェルダンだった。探索者は指の筋肉までマッチョということがわかった。


 それよりも柔らかくなるように焼いたらレアを超えてずっと生焼けだった。


 負けず嫌いの聖奈はその後も焼き続けたが、結局思った通りの焼き加減の調整は習得できなかった。


 それを俺と春樹が再び焼くという二度手間になっていたが、みんなが楽しめたのならよかった。


「みんな着いたよ」


 車を止めて振り返ると、みんなは車の中で寝ていた。近くの距離でも寝てしまうほど疲れたのだろう。


 一人ずつ起こすとみんなで家に帰っていく。


「にきゅにきゅ」


 ドリは俺に抱えられながら夢を見ているようだ。口元から垂れているよだれは、夢の中でもまだ肉を食べているのかもしれない。


『バウ!』


 そんな中、畑の横を通ると突然ポテトが吠え出した。


「どうしたんだ?」


『バウバウ!』


 いつもより破裂させたような吠え方に違和感を覚えた。ポテトは畑がある方に二足歩行で走っていく。


 そこはポテトがいつも大事に手入れをしているじゃがいも畑だった。


『食べられたか』


 確かに畑は掘り起こされたままになっていた。いつもならポテトが掘り起こした後は、ちゃんと土を整えている。


 それよりも一つ気になることがあった。


「今、ポテトしゃべったか?」


『バウ!?』


 今ポテトの方から声が聞こえた気がした。ポテトは驚いた後に呆れた顔で俺を見てくる。これはこれでムカつく。


 俺が話すはずないだろうと言っているような表情だ。


「さつまいもは食べられないように対策しないとダメだな」


 隣で祖父も何か考えごとをしていた。同じ芋類ならさつまいもも狙われるかもしれない。


 ドリのおまじないで早く成長することを想定すると、すでに対策をする必要があるだろう。


『バウバウ!』


 ポテトは祖父を指差していた。きっと祖父の声をポテトが話したと勘違いしていたのだろう。


 犬が話すってそんなファンタジーのような世界がただの畑の真ん中で起きるわけない。


「とりあえず、今日は帰って明日どうするか考えようか」


 今日は朝からバタバタと動いて疲れたのだろう。俺はドリと家に向かった。





「こらこら、勝手に話したら直樹がびっくりするだろ」


『クゥーン』


「わしは認知症だから犬と会話しても気にはならないが、直樹はそうもいかないだろ?」


 目の前にいるミツメウルフのポテトとお祖父さんは何か話していた。どこか本当に心が通じ合っている家族のように側から見える。


 ポテトも顎に手を置いて考えている。よく一緒にお祖父さんといる影響か、考えている姿もそっくりだ。


 そういえばお祖父さんの認知症は良くなっているのだろうか。私の中では認知症って本人が理解しているイメージはない。 


 大体が認知症ではないと怒りそうな気がする。


 今お祖父さんの口から認知症と聞こえたが、気のせいか。バーベキューの楽しさに、脳内まで肉汁で溢れているのだろうか。


「それにしてもこの犯人は誰だと思う?」


『きっと動物だと思う』


「ああ、そうか」


 いや、やっぱり私もポテトが話しているような気がする。


「聖奈ちゃんもお疲れね」


 さっきまで寝ていたからまだ寝ぼけているのだろう。そんな私にお祖母さんが声をかけてくれた。この家族に出会ってから、毎日がポカポカな気持ちになる。


 家に帰ってきたら温かい家族がいる。それだけで私にとっては天国のような場所だ。


 今日も生まれて初めてバーベキューをやってみて、生きている実感がした。ああ、これが楽しいっていう気持ちなんだろうと。


 以前の私はダンジョンで魔物を一匹も残らずに倒すことしか、楽しいという感覚が得られなかった。


 そんな私もダンジョンより、この家族と一緒にいたいと思う日の方が多い。


「あの人達は似たもの同士だから置いて、私達も帰りましょうか」


「そうですね」


 ポテトとお祖父さんは何か話し込んでいた。時折変なポーズとジェスチャーで話しているが、あれで意思疎通できているのか不思議だ。


 疲れすぎて幻聴が聞こえていた私もお祖母さんと一緒に帰ることにした。

「ブックマーク、★評価よろしくお願いいたします。ほら、ドリも」

「ほちちょーらい!」

 ドリは両手を振って配信を終えた。


ぜひ、可愛いドリちゃんにたくさんの★をプレゼントしてください!

他の作品も下のタグから飛べますので、ぜひ読んで頂けると嬉しいです。

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