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72.配信者、初体験を済ます

 ギルドから家に帰る時にある建物が目に入った。他のプレハブ小屋には名前がないのに、その建物だけ店名が書かれていた。


「釜田クリニック……?」


 クリニックってことは病院で合っているだろう。近くの病院でも車で二時間程度かかってしまうため、近場にできるなら助かる。


 ちょうど祖父も腰を痛めているから、何かあった時には頼ることになりそうだ。


 そんなことを思いながら帰ろうとしたら、突然声をかけられた。


「あらー、なおきゅんあたしに会いにきてくれたのかしら?」


 振り返るとそこにはピンクのタンクトップを着た男が立っていた。この間はタンクトップの上にピンクのスーツだったが、今日はピンクの白衣を着ている。


 しかもなぜか俺の名前を知っていた。


「よかったら寄っていきなよ!」


「いや、遠慮しておきます」


 俺は逃げようと思ったが、カラアゲを奪われそのままズルズルと引きずられるように病院に連れて行かれた。


 あまりにも力が強いため、どれだけ足で踏ん張っても勢いが止まらないのだ。


 中は病院と変わらないが、奥の部屋にチラチラと見える手錠や鞭は何に使うのだろうか。


 ドリを連れて来なくてよかったと本当に思う。


「あれから調子はどう?」


「あれから……ですか?」


 あれとはいつのことだろうか。ひょっとして公民館で倒れた時のことを言っているのだろうか。


 たしかにあの場に貴婦人と一緒にいた気がする。


「あの時はご迷惑をおかけしてすみません」


「いえいえ、いいのよ。そういう日もあるわ」


 どこか優しい言葉にさっきまで警戒していたことをついつい忘れてしまう。チラッと隙間から見える、危ない道具のおかげでなんとかなりそうだ。


「あっ、パパさんも手伝いに来たのでござるか?」


 男と話していると隣の部屋から段ボールを持った侍が出てきた。手伝いがあるって言ってたのはここで作業をしていたのだろう。


「俺は偶然――」


「なおきゅんはあたしに会いに来てくれたのよー!」


 うん、それは絶対ない。名前もわからない人に会いに来るはずがない。


 俺に肩を組んで引き寄せてくる。力が強すぎて身動きが取れないのだ。


 それに服装も奇抜過ぎて俺にはそのセンスがわからない。仲良くなるにはかけ離れた人だ。


 距離は離れているのに、物理的な距離は取れない。パーソナルスペースゼロで俺は戸惑う。


「パパさんが困っているぞ?」


「凡人さん?」


「よっ!」


 その隣にはなぜか上半身裸の凡人もいた。やはりここは如何わしいお店なんだろうか。


 風俗も未経験な俺にはきっと刺激が強すぎるのだろう。手錠や鞭も今まで生きていた中で、間近にみたことはない。


 俺はすぐにでも立ち去ろうとしたら、先生に腕を掴まれていた。


「どう? 少し試していかない?」


 試すとは何を試すのだろうか。俺の初めては好きな人と致すと昔から決めている。


「すんっごい気持ち良いからあたしに任せなさい!」


「パパさんもやってみたらどうだ?」


「拙者も毎日通おうかと思ったぐらいだ」


 ここには危ない奴らしかいないのだろうか。ドリに悪影響を及ぼす人達には、今すぐにでも家から出て行ってもらわないといけない。


「ほらほら、なおきゅんも服を脱ぎましょう」


「いや……」


「拙者も手伝うでござる!」


 おい、手伝うって何をやる気だ。最初からそんなサービスは望んでいない。


「ほらほら行くぞー!」


「やめてくれー!」


 俺は男達に抱えられて隣の部屋に連れて行かれた。





「あー、もうだめだ!」


「ほらほら、体が喜んでいるじゃないの」


「拙者もすぐにハマってしまったからな」


「俺なんていつの間にかピンピンだ」


 俺はベッドで寝かされて夢心地の気分を味わっている。こんな初体験を迎えるとは誰も思っていないだろう。


「やっぱり買って正解だったわね。探索者って体が凝り固まるって聞くけど、生産者も同じってことね」


 俺はマッサージチェアのようなところで寝かされている。如何わしいことをするのかと思ったが、単純に低刺激で筋膜リリースをする機械だったらしい。


 筋膜リリースを経験したことがないからどうなるかわからなかったが、全身の力が抜けて飛んでいきそうなぐらい体が軽く感じる。


「ぜひ、今度おじいちゃまも連れて来ておいでね」


 クリニックとしての使い方は合っているのかわからないが、ちょうど腰を痛めている祖父には良さそうだ。


「あっ、後でよろしくね」


 俺はカラアゲと共に家に帰ろうとしたら呼び止められた。後で何かあるのだろうか。


「あら、聞いてないのかしら?」


「百合ちゃん達が引っ越ししたお祝いにバーベキューをやるって言ってたぞ」


 どうやら俺だけ聞いていなかったようだ。場所は養鶏場で行うらしい。


 養鶏場の前で鶏を焼いて食べるとか、中々ショックな出来事だろう。


「じゃあ、また後で!」


 軽くなった体で俺はカラアゲと共に走って家に帰った。今ならカラアゲよりも飛べるかもしれない。それだけ筋膜リリースは効果があるらしい。

「ブックマーク、★評価よろしくお願いいたします。ほら、ドリも」

「ほちちょーらい!」

 ドリは両手を振って配信を終えた。


ぜひ、可愛いドリちゃんにたくさんの★をプレゼントしてください!

他の作品も下のタグから飛べますので、ぜひ読んで頂けると嬉しいです。

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